後方保護者面真君「公子殿、そう言えば友人ができたというのは本当だろうか?」
「は?何、馬鹿にしてるの?」
こんっと盃を卓に置いてにらみつけると、目の前の元神は微笑ましいものでも見るような顔をした。
「いや、そうではなくだな。めでたい事だから祝の席でも設けてやろうかと」
「あんたは俺の何なわけ?まったくもう、またへんな遊びでも思いついたのかしらないけど、保護者面しないでよ。俺だって友達くらい居るし、それでアンタに祝われる筋合いは全く無いよ」
「動揺すると口数が多くなると言われた事は」
「先生嫌い」
「はははは!!」
だがタルタリヤは口調の割に聞いて欲しいと言わんばかりの雰囲気を出していて、これで微笑ましいと思わないでどうする。鍾離はこの武人が人生を謳歌することを嬉しく思う程度には特に目にかけているつもりだ。
さて、お相手はと聞けば、どうやら稲妻の名家に仕える武人だという。さてどんな傑物かと思えば以外や以外。
「トーマは別に戦う相手じゃないよ。こう言ったら悪いかもしれないけど、俺よりも弱い上に敵対する理由もない」
ただ酒を交わして近い距離で共に歩み、お互いの無知を補い、くだらないことで笑い合う。そういった友だと。想像の数倍は健全な友情に鍾離は感嘆の声をこぼしかけた。タルタリヤをこうもまともな友人の枠にはめてしまえるとは。
酒盛りを解散後、鍾離は早速件の家令殿を調べることにした。少々仙術も使用して集めた情報によれば中々の人格者。かつ策謀に長けた人物らしい。
ふむ。公子殿は頭の回転は早いが気性ゆえに参謀術数には不慣れなところがある。人材としては中々良い友好関係ではないだろうか。なに、騙されでもしても自分で報復程度するだろう。手に負えないのなら俺や旅人を頼るはず。
ともあれ、見守る者とし一筆したためるか。
こうして、トーマへ璃月からやたらいい匂いのする手紙が送られたのだった。