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    shiiiii587

    頭悪いえろばっか。

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    shiiiii587

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    彦魘♀。盲目にょたんむと炭彦が過ごすクリスマス。

    ##魘

    良い子のお願い「カナちゃんとすみちゃんはサンタさんに何をお願いしたの?」

    えんむおねえちゃんがいれてくれた生クリームたくさんのココアを飲んでたら、おねえちゃんはぼく達に聞いてきた。おねえちゃんはすーって匂いがするお茶を飲みながらにこにこしてる。
    サンタさん。もうすぐクリスマスだから。だからおねえちゃんはぼく達に聞いてきたんだ。

    「ぼくね、ゲーム欲しいんだ!よしてるくんと遊ぶ約束もした!」
    「じゃあ、良い子にしないとね」

    ぎくり、とした。冬休み前にやった算数のテストはさんざんで、つーしんぼもあまり良くなかった。じゃあ、もしかしたらサンタさんはきてくれないかもって思っちゃったから。

    「サンタなんていないよ。あれはお父さんとお母さんだもん」

    ココアを飲みほしたおにいちゃんは、ぶっきらぼうに言った。ぼくは正座してた足をくずした。

    「カナちゃんは信じてないんだ」
    「おねえちゃんは信じてるの?」
    「どうだろ。俺が二人くらいの時はそんな存在自体知らなかったから」

    おにいちゃんが聞くと、おねえちゃんはこまったみたいに笑った。
    おかしいの。おねえちゃんはお母さんよりわかいのに。おねえちゃんがぼく達くらいの時だったらサンタさん知っててもいいのに。

    「じゃあ、おねえちゃんはサンタさんになにお願いしたい?」

    こんどはぼくが聞いてみた。おねえちゃんはちょっとだけくらい目を天井に向けて考えた。おねえちゃんが考えおわるころには、ぼくもココアを飲みほしていた。

    「視力が欲しいな。お前達の顔が見られるくらいの視力」

    おねえちゃんのことばに、ぼくとおにいちゃんは黙ってしまった。

    「おいで、二人とも」

    おねえちゃんはテーブルから少し離れて手を伸ばした。ちょっと向きがズレてたけど、ぼく達においでって。
    ぼくとおにいちゃんは顔をみあわせてから、おねえちゃんの大きなむねに飛びこんだ。ふかふかでやわらかい。お母さんみたいな匂い。おねえちゃんはぼく達の頭をなでなでしてくれた。

    「可愛い。お前達は本当に可愛いね」

    うわごとみたいにふわふわした言葉だった。だけどぼく達はばかにしない。おねえちゃんはつらいんだ。ぼくとおにいちゃんの顔をいつも触って、確認してる。そのたびに絶対言うんだ。

    『可愛いお前達の顔が見たい』





    「―おにいちゃん、神さまとサンタさんってどっちがえらいかな?」

    晩ごはんの時、ぼくはおにいちゃんに聞いてみた。おにいちゃんはしばらく考えてくれたけど、はきすてるみたいに「神さまでしょ」って言った。
    お母さんは「どうしたの?」って聞いてきた。

    「ぼく、サンタさんにおねえちゃんの目を見えるようにしてくださいってお願いするんだ。でもおねえちゃんが『目が見えないのは神様を怒らせたから』って言ってたから」
    「炭彦はゲームをお願いするんじゃなかったの?」
    「ゲーム、もほしいけど…」
    「やめなよ炭彦。サンタさんも困るだけだよ」

    おにいちゃん、サンタさん信じてないって言ってたのに。

    「炭彦、ゲームにしろお姉ちゃんの事にしろ、お前が良い子にしてないとサンタさんは来ないぞ」

    お父さんはそう言った。早く食べなさい、って言われてぼくはご飯を食べるのを再開した。
    真っ暗なお外を見る。おねえちゃんはこの真っ暗のなかにいるのかな。


    ◆◆◆◆◆


    今朝、懐かしい夢を見た。小学生の頃、サンタさんにお姉ちゃんの目を見えるようにして下さいってお願いしたんだ。だけど、起きたら枕元に綺麗にラッピングされた箱があって、中身はゲームだった。そのゲームを持ってお姉ちゃんの家に走ったけど、お姉ちゃんの目は見えていなかった。
    サンタさんはお姉ちゃんの所に行かなかったんだって暫く不貞腐れたし、ゲームもやる気が起きなかった。善照君に言われてプレイしたら、やっぱり楽しくて結局クリアしたけど。
    サンタさんを信じない歳になってから、あのゲームはお姉ちゃんが用意した物だと知った。
    今日はクリスマス。お姉ちゃんは今年も真っ暗な中、過ごすのだろうか。曾々おじいちゃんが生きていたら二人でイルミネーションとか見に行っていたのだろうか。


    曾々おじいちゃんが生きていたら、お姉ちゃんの目は見えていたのだろうか。


    わからないけど、きっとお姉ちゃんの目が見えなくなったのは曾々おじいちゃんが死んじゃったからだと僕は思う。
    ううん、違うかな。その責任を曾々おじいちゃんに擦り付けたいだけかもしれない。
    お姉ちゃんに頼まれたクリスマスケーキを崩さないように歩きながら、僕は空を仰ぐ。今日は雨は降らない。雪はもっと。身体が震えた。雨が降らなくても寒いものは寒い。
    少し早足で歩くとあっという間にお姉ちゃんの家に着いた。冷えたドアノブに身震いしながら家の中に入る。玄関からもう暖かくて、指先がじんじんした。

    「お姉ちゃーん!予約したケーキ受け取って来たよー!」

    靴を揃えながら言ったら、家の奥からお姉ちゃんの声が聞こえた。「こっちまで来て」って。きっと台所だ。
    僕はお姉ちゃんを探しに台所に向かった。まぁ探すも何もお姉ちゃんは居たけど。

    「ありがとう、炭彦。冷蔵庫入れといて」
    「うん」

    お姉ちゃんは今夜のご馳走を作っていた。そう、今夜は僕とお姉ちゃんだけのクリスマスパーティー。お姉ちゃんは「お友達とやりなさい」って言ってたけど。
    だけど24日にお兄ちゃんや燈子ちゃん、善照君や桃寿郎君達とやった。サンタさんを信じなくなってからは家族とじゃなくて友達とやる事が多い。と、言うかお父さんとお母さんは夫婦水入らずのクリスマスを過ごしたいらしく、今年は体よく追い払われた。お兄ちゃんは今度はクラスの友達と。
    だから、今年の25日はお姉ちゃんと過ごすって決めてたんだ。

    「お手伝いする?」
    「もう出来るから。料理持って行って」

    お姉ちゃんはロールキャベツの鍋を火から下ろして、キッチンテーブルに置いた。予備のミトンを借りて、僕はすぐ隣の部屋に持って行く。
    目が見えなくても、お姉ちゃんは不自由なく料理をしていた。テーブルに並ぶご馳走。
    ロールキャベツのクリーム煮。ローストビーフ。カプレーゼ。温野菜。白パン。シャンメリーもあった。全部、まだ子供の僕に合わせてくれたご馳走。
    僕は全部並べた。僕の用意が終わったタイミングでお姉ちゃんも来て、座った。珍しく足を崩してる。

    「あまり上手く出来なくて…メインができあいのでごめんね」

    綺麗な赤色のローストビーフの事。別に気にしなくて良いのに。逆に言えばお姉ちゃんはローストビーフ以外は作ったんだから。パンを捏ね始めた時は驚いたもの。

    「全然。全部美味しそう」

    いただきます、と挨拶して食べようとしたけど、僕は慌ててシャンメリーを二人分注いだ。丁寧にグラスをお姉ちゃんに持たせると、互いのグラスを合わせた。
    グラスは硝子特有の高い音を奏でてくれた。

    「お姉ちゃん、メリークリスマス」

    僕が言うと、お姉ちゃんは照れくさそうに笑いながら「メリークリスマス」と小さく返した。


    ◆◆◆◆◆


    お姉ちゃんが予約したのはブッシュ・ド・ノエル。いつも行くケーキ屋さんでおすすめだって言われたんだって。

    「本当に切り株の形なの?」
    「うん。切り株は見た事ある?」
    「あるよ。後は何があるの?」
    「砂糖で出来たサンタさん。チョコレートの家とメリークリスマスって書いてあるチョコプレート」

    説明しながら切り分けてお姉ちゃんの前に置いた。フォークを握らせてあげて、ケーキまで導く。
    お姉ちゃんがケーキにフォークを刺した。チョコレートクリームとスポンジが簡単に断ち切れた。

    「美味しいね」
    「うん」

    お姉ちゃんは、曾々おじいちゃんとこうしてクリスマスを過ごした事はない。曾おじいちゃんと過ごした事すらないかもしれない。思ってはいけないけど、思ってしまう。お姉ちゃんの家族で、お姉ちゃんの血縁で、こうやってクリスマスを一緒に過ごしたのは僕だけだと。

    「お姉ちゃん、ケーキ食べたらさ…僕に付き合って欲しいんだ」
    「良いよ、お出かけ?」
    「うん。お姉ちゃんと一緒が良くて」
    「じゃあ、準備しなくちゃね」

    言葉通り、お姉ちゃんはケーキを食べ終えたら片付けも程々に、出かける用意を始めてくれた。
    愛用のポシェット、白いふわふわのポンチョ、いつもの杖に、一応ヘルプマーク。
    お姉ちゃんのお出かけスタイルが完成。僕はダッフルコートを着て、お姉ちゃんが掴まれる様に腕を出した。クリスマス当日、夜である事も手伝って外は寒い。ふるり、と震えたお姉ちゃんに身体を寄せながら慎重に歩く。
    目的地は駅前の広場。多分人も多いだろうから、僕の腕を掴むお姉ちゃんの手に自分の手を重ねた。段々人が多くなってきた。お姉ちゃんが歩く度にかしゃんかしゃん、と杖が音を立てる。それに気が付いた人が何となく、道をあける。片目に眼帯をしている上に白状をついているお姉ちゃんはきっと、あの人達から見たら「弱者」なのだろう。だけど、そんな線引は意味がない。
    お姉ちゃんは堂々と歩いていた。目当てはもうすぐ。

    「…明るい」
    「うん。おっきなツリーがあるんだ。色んな色の電飾がぴかぴかしてる」

    ふらふらと、お姉ちゃんは僕から離れた。まるで引き寄せられるみたいにツリーに近付く。僕は慌ててお姉ちゃんを追い掛ける。

    「綺麗…わかるよ。光ってる。沢山の光が…あぁ、きっとちゃんと見たら眩しくてたまらないんだろうな」

    光は感じると、お姉ちゃんは言っていた。だから、一緒に見れたら良いなって思った。それだけだったけど、こんなに感動してくれるなんて。
    ぴかぴか、ぴかぴか。クリスマスカラーに輝らされたお姉ちゃんはとても綺麗だった。

    「ありがとう、炭彦。一人じゃ絶対来なかった」
    「僕が一緒に見たかったから」

    冷たくなったお姉ちゃんの手を取る。嬉しそうに笑うお姉ちゃん。無垢な女の子みたいに喜ぶお姉ちゃんに寄り添いながら、来年のクリスマスもこうやって過ごしたいなって、思った。
    サンタさん、良い子にするから、お願いします。






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