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    shiiiii587

    頭悪いえろばっか。

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    shiiiii587

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    ご都合血鬼術で人間になってしまったにょたんむの炭魘♀②。終始炭視点。

    「旦那様!」

    彼女はそう言って、ぱたぱた可愛らしい足音を立てながら俺に駆け寄って来た。後少しで触れ合う、と言う距離になった時にはっとした表情になって立ち止まる。慌てた顔で、彼女はすぐその場に正座をし、三つ指をついて俺に頭を下げた。

    「おかえりなさいませ、旦那様」

    それは、どこか他人行儀で寂しいもの。だから俺は彼女の頬に触れて、顔を上げて欲しいと言った。早く言ってあげないと、彼女はずっとこのままだ。

    「魘夢、君の顔をよく見せて」
    「わ、私の…お顔など…その、地味な醜女でございます」
    「本当に?俺には華やかな顔が見えるよ。ただいま」

    前髪を上げて、彼女の額に口付けを落とすと、彼女は耳まで真っ赤になってしまった。普段の彼女からは考えられない。



    ―魘夢にかけられた血鬼術を解くのは思ったよりも難航した。彼女は性行為自体が好きではない。最初に痛い思いをさせてしまったからだろう。それは、俺のせいだ。その後は頑張って良くしたつもりだったけど、箱入りお嬢様には辛い事には変わりない。出来て一回。その一回では彼女の胎内に精を注ぐには至らない。体力がないみたいで、彼女は気を遣ったらすぐに気絶してしまうから。
    それでも、身体を許してくれるだけ進歩した。『今』の彼女の純潔を散らしてしまったあの日、彼女は俺に殺して欲しいと乞うた。彼女にとって、夫でも何でもない男に純潔を奪われたのは、自分の存在意義を失ったも同然。
    彼女を生かす為に彼女に求婚した。こんな形で結婚を申し込むつもりはなかったけど、いつかは彼女と夫婦になりたいと思っていたから。
    俺には地位も名誉もない。彼女の夫となる条件を満たしていない。案の定、彼女は迷っていた。彼女にとっては、地位のある男と結婚して、父親の役に立つ事が全てだから。

    「貴女が貴族の娘だからではないです。俺は本気で貴女が好きなんです。貴女は俺の妻になろうとしなくても良い。俺が貴女の夫になりたい」

    地位も名誉もない。だけど、彼女への愛はある。俺の言葉に、彼女は顔を真っ赤にしてふるふると震え出した。彼女は今まで異性に真っ直ぐな好意を向けられた事がなかった。いつも家柄を見られ、彼女の性格を知ると去ってしまう。

    「貴女の父親の判断ではなく、貴女の意思で返事を聞きたい」

    駄目押しで言ったら、彼女は顔を真っ赤に染めたまま、小さく「不束者ですが…」と言った。
    これで俺達は口約束だけとは言え夫婦になった。それは彼女が『人間』のままでいる間だけかもしれない。血鬼術が解かれ、彼女が戻った時に夫婦関係が解消されたなら、また求婚するだけだ。
    彼女は俺を好きになってくれたみたいで、俺が任務に行く時は必ず見送りを、帰って来たら出迎えてくれる。
    綺麗に、頭を下げて。

    「あの…旦那様…その……お顔が近うございます…」
    「ごめん、嫌だった?」
    「いえ…少し、は…恥ずかしいです…」

    恥ずかしさからか、涙目になってしまった彼女を抱き締めたい気持ちをぐっと堪えて、彼女に立つ様に言った。彼女は抱き締めたらきっと気絶してしまう。

    「部屋に戻ろうか」
    「は、はい」

    まだ頬を染めている彼女の隣を歩こうとするが、彼女はすぐに俺の少し後ろに下がってしまった。
    理由はわかる。だから何も言わない。彼女が頑なに俺を「旦那様」と呼ぶのも同じ理由だ。俺は何度も彼女の名前を呼ぶ。いつか、彼女も俺の名前を呼んでくれる筈だから。

    「旦那様、羽織を。お手伝い致します」

    部屋に入るや否や、彼女は俺に言って手を差し出した。俺は、彼女のしたいようにさせる。俺が彼女に背を向ければ、彼女は俺の羽織を丁寧に脱がせた。その羽織は、綺麗に掛けられる。

    「そうだ。君にお土産があるんだ」

    危うく忘れるところだった。懐からそれを取り出す。良かった、潰れていない。

    「はい」

    差し出したのは白い花。何の変哲もない、その辺に咲いていた野花だけど、彼女に似合うと思って。
    彼女は花を手に取ると、目を輝かせて俺を見た。

    「私、こんな素敵な贈り物初めてです!ありがとうございます!」

    初めて。
    彼女は貴族令嬢だ。高価な贈り物を貰う事だってあった筈なのに。




    「炭治郎」
    「カナヲ」

    カナヲが、いっぱいの花を生けた花瓶を持って声をかけてきた。彩り豊かな花々。カナヲはそれを俺に差し出した。

    「魘夢、花が好きみたい。だから、これもどうかな」
    「ありがとう。きっと喜ぶよ」

    カナヲから花瓶を受け取る。ふわり、と花の香りに混じって香る匂いに気が付いた。匂いの方を見ると白いドレス。彼女がこちらを見ていた。

    「魘夢!」

    彼女に向かって手を振るが、彼女は俺達に背を向けて走り去ってしまった。
    カナヲと顔を見合わせて首を傾げる。不安そうな匂いが、一瞬だけした。彼女を追いかけて部屋に戻った。
    部屋の隅で縮こまっている彼女を見つけた。名前を呼んでもこちらを見ない。花瓶を置いて、様子を窺った。何やらぶつぶつ言っているから、きっとまた空想に逃げてしまったのだろう。そういう時は話を合わせるか、何も言わずに彼女を抱き締めるのが良い。空想に浸っている時の彼女は、恥ずかしがらない。

    「…旦那、さま」
    「うん。ごめん、魘夢。何か辛い思いをさせたかな?」
    「…わたし…、私は旦那様の妻です」
    「そうだ。君は俺の」
    「私は、何も出来ません。何も。旦那様のお役に立てない…。栗花落様みたいな方が、旦那様には良いのでしょう…」

    何故そこでカナヲが?と思ったけど、さっき俺がカナヲと話していたからだろう。俺が受け取った花瓶も、見ようによっては俺からカナヲに渡している様でもあった。
    違う、と弁明しようとしたが聞こえてきた寝息に遅かった…と悔やんだ。

    「…寝てる」

    唐突に眠り出すのは精神的なものだと思う。眠れば何も聞かなくて済むから。それに、少なくとも空想は精神的なものだった。最近は落ち着いて、会話もきちんと成立してたから。
    ドレスのまま眠る彼女を寝台に寝かせる。今まで使っていた和室は、今の彼女には不便らしく病室を借りた。眠る彼女の唇に、口付けをする。
    これで起きてくれたら良いのに。


    ◆◆◆◆◆


    「炭治郎さん!魘夢さんがいなくなっちゃいましたぁ!!」

    ごめんなさい!となほちゃん達が泣いている。いなくなった、とは?
    確か、彼女が眠っている間に俺はお風呂を借りていたんだ。それで、彼女の部屋に行ったら、彼女はいなくて…。唖然としていたらそう言われた。

    「魘夢さん、私達にしのぶ様が居るかどうかって聞いてきたんです」

    すみちゃんが言った。

    『あの、胡蝶様は今夜はご在宅ですか?』
    『しのぶ様ですか?任務で今夜は帰らないと思いますよ』

    そう教えてしまったばかりに、彼女はいなくなったと、この幼い少女達は泣いて自分を責めていた。

    「なほちゃん、すみちゃん、きよちゃん。君達のせいじゃないよ。大丈夫、俺が彼女を探してくる」

    少女達を落ちつかせてから、一度部屋に戻った。隊服に着替えて、日輪刀を携えて蝶屋敷を飛び出す。
    鼻を動かして彼女の匂いを探る。そう遠くには行っていない。当たり前だ。彼女はただの人間。しかも、体力なんて無いに等しい。
    走りながらそう言えば、と思う。彼女の履物が置きっぱなしだった事に。

    「この近くだと思うんだけど…」

    匂いは近い。辺りが暗いから姿はよく見えないけど、確かに彼女は近くにいる。
    探していると、何やら言い争う声が聞こえた。あまり人がいなそうな、そんな場所。暗さに目が慣れていたし、彼女の匂いが一番濃かったから俺は迷いなくその場所を覗った。

    「ぃや…っ」

    白いドレスは夜の闇の中でもよく目立つ。間違いなく彼女だ。三人くらいの男性に囲まれていた。鬼でも何でもない一般人だ。刀を抜く訳にはいかない。
    どう彼女を助けるべきか。

    「いや、やだ…たんじろ…たすけ…」

    炭治郎。
    『彼女』が、俺の名前を呼んだ。気が付いたら彼女の手を引き、抱き寄せていた。どう助けるか、じゃない。今すぐに助けなくちゃ、と思った。いきなり現れた俺に男性達は色々言ってきた。だけど、何を言っているのかはよくわからなかった。
    内一人が俺の腕を掴んだ。だから俺は、思いっきり頭突きをした。
    泡を吹いて倒れた仲間を見て、他の人達は蜘蛛の子を散らすように逃げてしまった。きちんと気絶した仲間を連れて行ったのだから、根は悪い人達ではないのだろう。酒の匂いがしたから、酔っ払って彼女に絡んだだけかもしれない。

    「たんじろう…」
    「魘夢、心配したんだぞ」
    「ごめん、なさ…」

    ぼろぼろと、彼女の瞳から涙が零れた。涙で濡れた頬が腫れている。ぶたれたのだろうか。

    「早く帰ろう。冷やさなくちゃ」
    「ごめんなさい…っ」

    ぎゅっと手を握り謝る彼女に、何かあると思った。だけど、彼女は言い出せないみたいで。

    「魘夢、謝らなくて良い。どうして蝶屋敷から出たんだ?」
    「あ、の……ぁ…」
    「手の中?見ても良いか?」

    頷いた彼女を確認してから、彼女の手に触れた。ゆっくり開かれた手のひらには、くしゃりと潰れた白い花があった。

    「これは?」
    「……旦那様に頂いたお花が、萎れてしまって…代わりのお花を…」
    「うん」
    「ごめんなさい…ごめんなさい…っ」

    俺が贈った花が萎れたから、こっそり代わりの花を探しに出たそうだった。慣れない場所で探していて、絡まれたのだろう。珍しい洋装に、この美貌だ。
    また、『旦那様』に呼び名が戻ってしまったが彼女の話を全て聞くのが先。

    「大丈夫だよ、魘夢。また新しく花を贈る。それに、カナヲも沢山の花を君に贈ってくれた。大丈夫だから」

    大丈夫、と何度も言って彼女を落ち着かせる。花が萎れるのは仕方がない。だけど、彼女はそれを咎められると思っているし、実際に咎められてきたのだろう。
    泣き止まない彼女を抱き上げる。裸足で砂利道を歩いたから、彼女の足は痛々しい事になっていた。驚いている彼女の唇を塞ぐ。

    「んっ…ぅ…」

    彼女が目を閉じて、俺に身を委ねてくれた。それが嬉しい。彼女はやはり魘夢なんだ、と実感する。

    「帰ろう、魘夢」
    「は、い……」

    頬を染めて、ぽーっとしている彼女が本当にいじらしくて、可愛い。そうしたら、彼女は俺にぎゅっと抱きついてきた。初めてのことだ。

    「あの、今夜は…今夜は…旦那様に、炭治郎様に……抱かれたいです…」

    あぁ、俺の理性大丈夫かな。

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