【hrak】切+爆が出産祝いを買う 男二人で赴いたデパートのベビー用品売り場は、今まで二十数年の切島鋭児郎の人生では関わることのなかった、フワフワしたパステルカラーに溢れていた。切島は思わず目を点にして、周囲をあれこれ見回した。心なしか、ミルクのような石鹸のような匂いまで漂ってくる気がする。
隣に立つ爆豪勝己は相変わらずの仏頂面だが、眉間のシワが普段よりも二ミリほど深い。売り場を見て呆気に取られている切島をしばらく横目で睨んだあと、「おい」と一言だけ声をかけた。
その言葉で我に返った切島は、「お、おう!」とどもりながらも返事をする。
「行くぜ!」
気合を入れる時の癖で、両手の拳を自らの胸の前で突き合わせた。ただし、仕事中ではないので“個性”の発動は無しだ。その行動がベビー用品売り場で奇妙な目立ち方をしていることを指摘する者は、その場にいなかった。
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