「どうしたの?」
ピークに声をかけられ我に帰る。
「いや、なんでもない」
「ライナーが働き出して2ヶ月、慣れてきた頃かしらね」
言葉は暗号。
カウンター席に座る俺たちの後ろで声が聞こえた。
「ライナー、テーブルに付け」
「はい」
なるほど、順調らしい。
クラシックな音楽が流れる店内に、煌びやかな室内。着飾った人々。
ルーレットを廻る音にジャラジャラと積み上げられるオモチャのようなコイン。
どうやら相当裕福な国のようだ、金がある国は最新鋭の武器を保有してる可能性が高い。相手の内情を知り、計画を立てねばならない。文明の力がそれほどまでの脅威になるとは誰が思っていただろう、巨人の力は圧倒的ではなくなっていた。
カジノと呼ばれるばかデカイ建物にピークと訪れた俺は、先に潜入していたライナーを見つける。どうやら従業員として働いているのか白いシャツに黒のベスト、黒のパンツ、体に合わせてあるのかピッチリとした服装をしている。台にいるあいつのすぐ近くにいる太ったオヤジがずっと奴のケツを見ているのに気がついた俺はうんざりした。
(チッまたかよ。)
あいつは何故かはわからないが、変態を寄せ付けるらしい。
マーレでもそうだったが、別の国でもそうなるあたり、原因は変態を寄せ付けるあいつにある気がしてならない。
苛立ち足を貧乏ゆすりしてしまう俺にピークが声をかける
「私情は挟まない」
「挟んでねぇよ」
すかさず言い返した俺にピークは肩を竦めるだけだった。
「私、行くわね。ボディーガードよろしく」
「ああ。」
どうやら狙いを定めたらしいピークを見送る。
恐らく軍の関係者と踏んだのだろう。
ピークのことだ上手く奴から情報を聞き出すはずだ。
ピークの跡を追うように俺は席から離れる。出ていく前に奴の姿をチラッと確認すると奴と目が合った気がした。
ピークの情報によるとやはり対巨人砲の開発は予想より早く進んでいるようだ。時間を与えればマーレの命取りとなる。
「よくあいつが軍関係者だとわかったな」
「ライナーから教えてもらってたからね」
ピークが折りたたまれた紙を寄越す。そこにはターゲットと奴が仲良く写真に写っていた。
「ライナーが上手く潜入してくれたおかげね」
「どうだか、案外楽しんでるのかもな」
悪態つく俺にピークは何か言いたげだったが、俺はすぐその場を離れた。
カサッ
奴から俺に渡された紙を開く。
そこには時間と場所が記載されているだけだった。
明け方に近い時間、指定された場所に行くと奴がいた。
ジョギングを装いながらすれ違い様に靴紐を結び直しながら声をかける。
「継続だ。」
「了解した」
そういって歩きだした奴の後を尾行する。
奴が気付かれていれば尾行者がいるはずだ。
幸いにもまだ潜入に気付かれていないらしい。
稼いでいるのか奴の住まいは割かし綺麗な一軒家だった。
「継続可能だ」
「そうか」
俺は帰る前に一言言ってやりたかった。
「お前、………気を付けろよ」
らしくない言葉に奴はほんの少し驚いた後遠慮がちに笑みを描き頷いた。
あの笑顔は何の笑顔だ?
(あ~らしくねぇこと言っちまった)
悶々とする俺を尻目にピークはもう次の作戦を立てていたらしく、早々に出ていってしまった。
手持ち無沙汰になった俺は情報収集すべく奴が働くカジノに入る。
客の特徴をしらみつぶしに記憶していく。後で奴と情報交換すれば何か役に立つかもしれない。
グラスが渡されると同時に小さく折りたたまれた紙が置かれる。
時間と奴の家が書かれていた。
奴の家に着くと灯りがついていた鍵が空いていたので遠慮なく扉を開き中に入る。
部屋には誰もいないが、シャワー室から音が聞こえる。
ソファーに座り待っていると、音が止み、扉が開く。
Tシャツにズボン、ラフな格好だがすぐに動けるようにだろう。
「すまない、待たせたか」
「いいや、それよりここの紙に書いた人物を知りたい」
カジノに出入りする客の情報を貰い、関係者を割り出す。あとは俺が尾行する手筈になった。
アルコールの匂いがしたので、聞けば帰り間際に太い客から飲まされたようだ。酒に弱い奴は気分が悪くなったから早々に吐きシャワーを浴びたらしい。
まだ微妙に残っているのだろう、頬が少し紅い、目も潤みがちだし、シャワーの熱か肌もしっとりしていた。
「ガ、ガリアード!」
動揺した奴の声に我に帰れば、俺は奴の顔に手を充て、無意識に腰を抱き寄せていた。
たちまち真っ赤になる奴の顔は、困ったような泣きそうな顔で俺を見るから、堪らずソファーに押し倒す。
俺より大きいが筋肉質な俺に簡単に押し倒される奴にもっと喰えと言いたくなったが、今は目の前のご馳走に俺が喉の渇きと腹を空かせていた。
徐々に顔を近付けゆっくり口付ける。角度を変え何度も啄み口を開かせる。舌を絡め吸う。間に漏れる甘い吐息が興奮を煽る。
すぅーーーー。
首筋に顔を埋め匂いを吸い込む。石鹸と微かに香る汗の匂いに堪らず首筋に噛みつく。
「あっ」
思わず出てしまった声に手を覆う姿が艶かしい。
Tシャツの裾から手を差し込み胸を揉み抱きながら捲り上げると主張する尖りに噛みついた。
舌で転がし舐めしゃぶりながら、ズボンに手をかけ脱がせる。パンツは染みを作り奴も興奮して期待してることを知り、一気にパンツまで脱がせる。
「見ないでくれっ」
小さく懇願する声に耳をかす余裕はなく、ソファーに手を着かせ後ろを向かせ柔らかい白い尻を掌いっぱいに揉みこむ。
指を咥えさせ唾液を纏わせた指で皺を延ばすようにフチを撫でる。
穴がヒクヒクし始めたら1本指を入れ好いとこを探す。
「んっ」
声がしたシコリを指で撫でながら徐々に増やしていくと、腰が揺れ始めた。
国が違えばこうだったかもしれない。リビングで誰にも憚れず、セックスする。人目を憚り隠れてするセックスも良いが、我慢せず求め合うままセックスする幸福を今感じている。
はち切れそうな己のペニスをライナーのアナルに充て、ゆっくり挿入する。
「あぁ!!」
背筋を震わせるライナーの方足を背もたれに上げさせ、結合部をより深く密着させる。
「はぁはぁ。おい全部挿入ったぞ。お前の中、柔らけぇ」
「あっん、中が……熱い」
お互い熱に浮かされたように素直な言葉が出てくるのは、まるでこの国に住んでいる錯覚に酔っているからなのだろうか。
パンッ!パンッ!パン !!
叩きつける音が激しくなるにつれて気分が高揚する。
「「ぁ、ピチャックチュ、チュ、クチュ」」
激しく打ち付けながら、振り向かせ口付けを交わす。
「あぁ!っもうイッ!!」
「ぐぅ」
ライナーが果てると同時に中が絞まり俺もライナーの中で果てる。
心地良い倦怠感に包まれながら、まだ終われない。俺も奴も、瞳にまだ熱が残っているのだ。
俺はライナーをお姫様抱っこして、浴室に向かった。