先代の神父様は穏やかで物腰も柔らかく、俺のような不出来な奴にも熱心に神の教えを説き、俺が立派な神父になれるよう支えてくれた。それは神父様のの大きな器ゆえだったのだが、神父様に選ばれたのだと盛大な勘違いをした俺は、依頼を承けて結界を張り悪霊を追い払う、その役目が誇りだった。俺が張った結界も、追い払う為の聖水も神父様が力添えしてくれていたお蔭でしかなく、俺の力などたかが知れていたのだ。
迂闊だった。俺一人でも追い払えるはずだと退治に赴いた俺はなす統べなく窮地に追いやられた。そこに先代の神父様が現れ己の全てを使いきり、そして………俺だけが遺された。
物思いにふけ子どもたちを見つめる。俺はかつての先代を想う。彼が俺を護ってくれた。なら俺は?どんな事をしてでも俺がこの子たちを護らなければ。
「そういえば、悪霊はどうなったの?」
ガビの質問に答えたのは俺ではなくバスターの彼だった。
???「もう消えちまった。俺の武器の一部になる為にな」
俺たち全員が声の主を振り返る。
「誰?」
ゾフィアが呟いた声が届いたのか
「バスター教会のガリアードだ。」
短く名乗る。ガリアードというのか。
「バスター!?初めて見た!!」
「格好いい!この町にはまだ居るんですか?」
初めて見るバスターに興奮ぎみの子どもたちは興味津々なようで質問を次々とぶつけている。
「ああ、まだ用があるからな」
そういってガリアードは俺を見据える。
俺は視線を外す、彼の眼を見れない。子どもたちの前では最もらしい振る舞いをし、神父の真似事をする己は彼の瞳にどう映っているのだろう。
「私に教えて!次の神父になるのは私。悪霊から皆を解放するの!」
真剣な表情で告げるガビにガリアードはなにやら思案しているようだった。
「暢気なものだな。神父が見かけ倒しだと知らないで。」
ガリアードの言葉に耳を傾けながらコーヒーを差し出す。
「それで話とは」
「自分でも気づいているんだろ?神父、あんたに力はない。だが悪霊はあんたが引寄せちまってる。」
「…………(また来るのか、あれが)」
「だから提案だ。あんたが悪霊を引寄せ俺が退治する。あんたは護られるし、俺は武器改良の材料が手に入る。悪い話じゃないはずだ。」
「だが………」
「猶予はない。あれだけの力がある悪霊がこんな小さな町を見つけちまった、ここはもう安全じゃねぇ」
「だとしたら俺はこの町にいられない。」
「そうだ。あんたの準備が整い次第バスター教会本部を目指す。」
「わかった。宜しく頼む、ガリアード。」
「交渉成立だ」
ライナーだと名乗ったが彼からは「早めに準備を整えろ」とだけ返ってきた。
「ファルコ?そんなに急いでどうしたんだ?」
「ちょっと用事で」
そういって駆けていったファルコを不思議に思ったが、しばしの別れを告げる為、俺は実家へ急いで足を向けた。
「なんだ?」
急に空気が重くなる。町に何かが侵入したらしい。
「チィッくそが!!」
改良途中の武器を掴み、急いで町の中を走り抜けながら悪霊の気配を探る。
迂闊だった。昨日今日で悪霊は現れないと踏んでいた。連日で現れるなど何だか気味が悪い。
悪霊の気配が濃くなる方へ急ぐ、と同時に神父の気配も感じた。
(まともな結界張れてないじゃねぇか!!)悪霊を寄せ付けるから手間が省けると思っていたが、タイミング悪く寄せ付ける神父に苛立ちが募る。
ここか!?
その時教会で会った少年が飛び出してくるところだった。
「あっあっガリアードさん!!神父様がいきなり黒い霧に引っ張られて。」
どうやら地下に神父が捕らえられてしまったらしい。
少年にここから避難するよう指示を出し、武器を構え突入する。もし万が一だが喰われているかもしれない神父の死骸を少年に見せるわけにはいかなかった。
「なんなんだよ!」
光景は俺の予想を越えていた。
黒く歪んだ影のような物から幾つもの手が生えており、そいつに神父は捕らえられた。が、何故か裸にひんむかれ、手足を上に曲げ一纏めに縛られたような宙吊りの体勢になり揺すられていた。豊満な胸が動きに合わせブルンブルンと揺れ、考えたくも見たくもないが恐らくアソコに物がぶちこまれているらしい聞くに耐えないグチョグチョと粘ついた音と熱気、そしてイカ臭いにおいに目眩がする。
何がどうなったらこんなことになるんだ!?
苛立つまま俺は未調整の武器をぶっ放す!
が、やはり未調整のまま持ってきた為奴に届く前に爆発し、その爆風の反動で吹き飛ばされる。
「グッ」
頼みの武器は使い物にならず壁に激突し、打ち所悪く体勢が整えられない俺に恐らくオタノシミ中だった黒い物体が怒りのような唸り声を発し近づいてくる。
(やべぇ)
その時、霞む視界の端で神父が聖水の瓶だろうか?それを取り出し何やら震えたかと思えば、液体を黒い物体に振り撒いた。その瞬間、黒い物体は逃げるようにあっという間に影を細めどこかに消えていった。意識が途切れる直前どこからか甘い匂いが漂っていた。
何やら騒々しい音に飛んでいた意識が戻る。
神父が裸のまま倒れているのを視界に捕らえる。あれからそんなに時間は経っていないらしい。俺はジャケットを神父に被せ、外に出て恐らくあの少年から話を聞いて集まってきていた大人たちに醜気が散乱している為、家に戻るよう指示をだす。
全裸の神父を見せるわけにはいかない。俺の名誉の為だ。
人気が去ったのを確認し、意識を失ったままの神父を抱き抱えて教会へ戻る。
黒い物体の体液だろうか神父の身体には粘着性の高いベタベタ糸を引く透明な液体が纏わりついていた。もしアレの体液であればマーキングのようなものである可能性が高い、面倒だが意識がない以上俺が神父を風呂にいれるしかない。
お湯を張った浴槽に神父を入れる。
意識はまだ戻らないが、蒼白かった顔色が多少良くなったようだ。暖まったからか色づいた肌からまた甘い匂いが漂う。乳首から白い液体が流れていた。黒い物体のやつのものか確認する為、指で掬おうと乳首に指を充てるとダラダラと白い液体が溢れ出てくる。
「なっ」
(まさか神父の!?)
恐る恐る指で摘まめば勢いよく噴き出す乳。
「うんんっ」
意識がないが感じるのか紅く染まりピンッと主張する乳首に色の着いた声音。
慌てた俺は、神父を湯から出しそのへんにあったタオルを腰に巻き付け、寝室に寝かせ、今使用している部屋へ逃げるように戻る。
(くそ、痛ぇ………)
膨らむ自分の息子を誤魔化すようにさっさとシャワーを浴び、寝てしまおうと行動に移す。
(眠れない。)
疲労が溜まっているが、忙しかったせいで最近抜いてなかったことを思い出す。なんてタイミングだ。いや、そうだ生理現象であってアレに反応した訳じゃない。
ゆっくり自身に手を伸ばし適当に擦る。おかずになるのは、今まで出会い関係を結んだ美女。。のはずが、いつの間にか神父が胸を反らし腰を揺らし俺の下で喘いでいる。彼女達との密夜がすり変わる。
「あっあっんん、乳首吸って」
彼女たちの懇願の声が低いテノールに変わる。
(クッソ!)
久しぶりだからか、それ以上を想像する前に果てる。
ティッシュを丸めゴミ箱に投げ捨てた俺は深いため息と共に枕に埋もれた。
※余談ですが、先代の神父はベルさんです。