軍内部が慌ただしくなってきた。
最近は副長の姿を見かけることすらなく、俺はしらみ潰しに捜し歩く。
(いた)
裏側にある踊り場の階段脇で上官に何やら耳打ちされている副長を見つける。
バレないよう身を屈め様子を伺う。
話し声は聞こえない。だが、
(今日だ)
直感した。心臓が煩く鳴る。
音を立てずその場を離れようと俺が踵を返すと、ちょうどガリアードさんがこちらに向かって歩いてきた。
「お疲れさまです。」
そう挨拶する俺に
「辞めておけ」
立ち止まることなくそうすれ違いざまに言い残し去っていった。
「お前、今日早く帰らなくていいの?」
「??もう少ししたら帰るけど……なんで?」
急に同僚に言われ内心焦るが、平静を装い理由を問う。
「ずっと心ここにあらずって感じでソワソワしてたじゃん、てっきり今日は嫁さんとの記念日かと思ったんだけど」
「いや、あっああ、……そう、まだ先だがサプライズを考えてたから!また明日な」
言葉を濁し、早々に同僚に別れを告げる。
職場に俺だけが残った後、周りに人がいないか確認する。静まり返った職場を歩きまわり電気がついてる上官の部屋を確認した後、その階の廊下で待つことにした。偶然を装い鉢合わせする。
ひたすら耳を澄ませ待つ。
すると遠くから微かに人が歩くような音が聞こえた。
どこか引きずるような足音に副長だと確信した俺は廊下に出て彼の方へ歩き出した。
が、俺よりずっと前に人影が佇んでいた。
俺は立ち止まり、よく目を凝らす。
無言で向き合う2人。影しかわからない。だが待っていた人物がゆっくり先導するように歩きだした。俺は慌てて非常口扉の裏に身を隠し、息を潜め、2人が通りすぎるのを待っていた。
(どうして2人が………)
影はガリアードさんだった。
これまでの記憶を思い返してみても2人が仲良くしている様子をみたことはなかった。
いや、むしろ仲が悪いと思っていた。顎の巨人であったはずの彼の兄が副長を庇い力を奪われたと報告にあった。だから、2人には溝があると認識していた。
じゃあ偶然か?
胸騒ぎがした俺は通りすぎさった2人の跡を静かに追う。
副長の腰を支えるように手を回している姿を捉えた俺は、「辞めておけ」そう言われた意味をやっと理解した。
俺じゃなかった。秘密を共有するのは、頼られるのは、ガリアードさんだったのだ。
俺はただ踵を返すしかなかった。
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(どうやら帰ったみたいだな)
あの若い兵士の気配がなくなったことに内心ホッとする。
訓練後に使用する集合バスルームに入る。上半身だけ脱いだ俺はシャワーを勢いよく出し温かいお湯が出るのを待つ。
服を全て脱いだライナーが無言で入ってくる。
体には紐で縛られたような跡があった。
(とんだ趣味だな)
内心反吐が出るが声には出さない。
シャワーを頭上から浴びるライナーにゆっくり近づく、両手を壁についた奴の手のすぐ横に片手をつく。それが合図だ。
股を開き腰を付き出したライナーの蕾に泡を纏わせた指をあてる。
縁がぷっくりと熱をもち腫れ上がっている。
ゆっくり撫でながら中に人差し指を差し込み、中に出されたものを丁寧に掻き出す。
小さな吐息も声もシャワーの音にかき消される。
だから聞こえない。
小さく呼ぶ俺の名前も。
これから俺で上書きする。
後始末をゆっくり丁寧に、ライナーが求めてくるまで。
すべて出してしまう時には、ひっくり返り背を壁に預け、2人一緒にシャワーに打たれながら、キスを交わす。
ズボンが濡れて重たいし気持ち悪いが俺からは脱がない。
ライナーがゆっくりズボンの留め具に手をかける。
お互いに裸になった身体を密着させキスをする。
ライナーの股に俺の足を入れ支えながら、暖め合うように、或いは互いの熱を交換するように角度を変えて、何度もキスを繰り返す。
ライナーが膝を付き、反り立つ俺に手を添え舌を突きだし先っぽをチロチロと舐め始める。舌を根元に這わせゆっくり舐めあげた後口に含みわざと音を立てストロークさせる。
口の中で果てた俺のものを嚥下する。
いつもはやらないやり方からして、恐らく反復行為なのだろう。ライナーも自分で上書きしているのだ。
オッパイで果てた俺を挟み上下に動かす。
また立ち上がった俺に手を沿え自身の片足を持ち上げ熟れた蕾に導く。俺は導かれるままライナーの中に入り込ませれば、入れただけで軽くイッたようだ。呼吸が整うまで待ちゆっくりと動かす。高め合うというより熱を分け合うようにゆっくり中を堪能する。
言葉は交わさない、だが目で手で熱で伝わるように互いを抱き合う。この関係にまだ名前はつかない。