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    セル兄+ポラ(恋人未満)

    記憶あり(セル兄、ラ)
    記憶なし(ポ)

    恋愛未満の三角関係未満が書きたかったのですが、長くなりすぎたので一旦区切ります。

    「なぁ、今日はどこで飯食う?」
    「ブリュッセルに新しく出来た店が旨いって聞いたんだ、そこの角を曲がった先にあるらしい。斜め向かいにキッチンカーがあるのが目印らしいが……目印が移動してないといいな」

    本格的に寒くなるブリュッセルの飲食街をポケットに手を突っ込み早足で兄貴が言う店に向かう。
    この春から大学生になる俺に商社マンとして働く兄貴がお祝いをかねてご馳走してくれるらしい。育ち盛りを名目に遠慮なく食べる腹づもりだ。

    「あそこだな。」
    「おいおい、もう並んでるじゃねぇか……急ごうぜ」

    お店は人気があるのかすでに人が並んでいた。順番的に待ち時間もそれほどかかりそうにないようなので俺たちは並んで待つことにした。

    「あ~ホットワインが飲みたい」
    「はぁ?酒より飯だろ」
    俺が言うと
    「向かいのキッチンカーに書いてあんだよ。待ち時間に飲むには持ってこいだろ。」
    そう言って兄貴が顎で向かいを示す。

    手前に小さなテーブルや椅子が置かれたキッチンカーには小さな子を抱き抱えた女性が注文待ちしているようで椅子に腰かけていた。
    するとキッチンカーから店員が飲み物を手に出てくるところだった。
    どうやら子どもを抱えた女性に渡す為のようだった。
    何気なしに見ていた俺の横にいたはずの兄貴が急に走り出し道路を横切る。

    「!??は?」

    ププーーーー!!!
    急に道路に飛びだした兄貴にクラクションが鳴り運転手が怒鳴りつける。
    兄貴は意に介していないのかそのままキッチンカーに走っていってしまった。
    俺は慌てて兄貴の後を追う。

    「俺だ。マルセルだ。」
    兄貴は店員に向かって名前を告げている。
    知り合いなのだろうか?

    ブロンドの髪にヒゲを蓄えた男の店員は目を見開いて兄貴を見ていたが、更に追ってきた俺に一瞬固まったような気がした。
    だがすぐに関心なさそうな淡々とした声が返ってくる。

    「各地を移動してるので人違いじゃないですか?似ていたならすまない。」

    「……いえ、こちらこそすみません。えっと、ミスター?」
    「…………」

    俺が無愛想な店員に何か言おうと口を開こうとした時、さっきまでとは裏腹に兄貴は何も言わずアッサリと踵を返す。

    「おい、急にどうしちまったんだよ」
    「他人の空似だったらしい」

    笑いながらそう言ってたが、目はどこか強い光を漂わせていた。




    ポンッ
    『来週サークルの練習試合が兄貴の家から近いんだよ。来週そっちに泊まっても良いか?』
    『いいぞ』

    兄貴にメッセージを送るとスタンプと一緒にすぐに返事が返ってきた。

    「さすが商社マン、随分快適な暮らしじゃねーか」
    「まぁな」
    兄貴のマンションは職場に近くオートロック付きの20階建の14階に居住していた。

    (商社勤めも良さそうだな)
    自分の将来ビジョンに商社マンを加える考案をしながらソファーに腰かける。テーブルの上に置かれたコーヒーカップが目に付いた。

    「?このロゴ………なぁ、これこの間のキッチンカーのやつ?」
    「ん?……ああどうだったかな?それより明日早いんだろ?さっさと風呂済ませて寝ないと起きられないんじゃないか?」
    「……ああ、そうする。」
    (なんだ?今一瞬……)

    妙な違和感を感じたが、なぜそう感じたのかわからない俺は気のせいだと結論づけ、明日に備えてさっさと寝ることにした。


    (あーーしんど)
    練習試合のあと、自主練に明け暮れ疲れはてた俺は実家より近い兄貴のマンションに行くことにした。

    ピンポーン
    『はい?』
    『兄貴わりぃ、今日も泊めてくれ』
    『待ってろ』

    ウィーン(扉が開く)

    ガチャ
    「おう、お疲れ!先に風呂入れよ。」
    そう言いながら俺にバスタオルを寄越す。


    「あ~スッキリした~」
    「これ食うか?さっき買ってきたんだ」
    「食う!!」

    渡された紙袋を開くと、カリカリに焼けたベーコンに卵、トマト、チーズを挟んだサンドイッチ、ローストビーフにサラダとミネストローネが入っていた。


    俺はサンドイッチを頬張りながら
    「これ、うめぇ~な。どこの店?」
    「たまたま開いてた店だったから」
    兄貴はそう答えながらテレビをつける。

    (あれこのロゴマーク、この前も見たよな?)


    次の日、家に帰る前ブリュッセルの飲食街に立ち寄る。なんとなくだがあのロゴマークは無愛想な店員のキッチンカーな気がしたのだ。

    角を曲がる。

    (………ない。)
    すでに移動したのか、今は小さな花屋に変わっていた。



    兄貴のマンション近くの駅についた俺はビジネスマンで溢れかえる街中を歩いていた。
    家に兄貴宛ての荷物が届いたのだが、郵送するより届けた方が早いので俺が届けることになった。

    (連絡するか)

    駅に着いたことを知らせようと携帯をとり出そうとした時、視界の隅にホットワインと書かれた小さな看板が見えた。

    (ここに移動していたのか)
    よく見るとやはりあの時のキッチンカーだった。仕事帰りであろう客で賑わっていた。その中に兄貴を見つける。

    声をかけるため店に向かう。
    兄貴はカップに口付けながら店員に何か話しかけているようだった。

    「兄貴!」
    「ポルコ?もう着いたのか」
    「ああ、これ」
    「ありがとな」

    兄貴はすぐに荷物を持ちチラッと店員を確認した後、店を後にする。


    「なぁ、この前のサンドイッチってあの店のか?」
    「最近移動してきたらしく、仕事帰りにたまにな」
    俺はマンションに向かう最中兄貴に尋ねる。何気ない会話のはずなのにやけに緊張してるのは何故だ?
    最近ずっとおかしい兄貴にあの店員が結び付く。

    (昔からモテていたが………まさか兄貴が男を)
    今は知らないが学生時代に彼女がいたことは知っている。
    たとえ兄貴が男を好きになろうが、尊敬する兄貴にはかわりない。俺は兄貴の為一肌脱ぐことを決心した。


    「この前、兄貴がここのサンドイッチ買ってきてくれたんだが、旨かった」
    「そうか」
    「兄貴はここのホットワインがお気に入りらしい」
    「そうか」
    「あんた歳は?」
    「……」
    「この近くに住んでるのか?」
    「……」

    プライベートな質問には答えないらしい。手強い……というより面倒くせぇ。
    男の無愛想な態度といい明るく誰からも好かれる兄貴とは真逆のような鬱陶しい男に何故兄貴が……と思わずにはいられない。早々に面倒くさくなっていた。


    「……仲、良いんだな」

    俺がそんなことを思っていると、店員が声を掛けてきた。
    「?兄弟だから当たり前だろ」
    「そうか」
    ふと店員が小さく笑った。どこか纏う雰囲気も柔らかくなった気がした。

    (なんだ、笑えるのか)
    少し意外だったからか、妙にムズムズする。俺は、兄貴の話題をひたすら話した。

    サークルがない日は店に立ち寄ることが増えた。会話らしい会話はしていない。
    わかったことといえば、名前はライナーで、依頼された処に一定期間店を構え資金が貯まれば移動することと、最近野良猫が住み着いたこと、大学は行ってないこと、それから家族の話はタブーのようだった。

    カサッ

    「なんだ?」
    「今日はもう店閉めるから余りを持って帰ってくれると助かる。マルセルと食べるといい。」
    そういって、さっさと店を閉め始める。

    (兄貴の名前を覚えていたのか)
    兄貴の話はした。顔が似ているからわかると思い、名前は俺からは伝えていなかった。初めて会った時のことを覚えていたのだろう。

    「なぁ「なんだもう店を閉めちゃうのか」」
    俺の声に重なるように声が掛けられる。

    兄貴がネクタイを弛めながらこちらに向かって歩いてきた。
    鞄をテーブルに置くと、Yシャツの腕を捲り、キッチンカーの中に入っていく。慌てて俺も後に続く。
    (俺が協力しなくても仲良くなってないか?)

    だが、そうでもないらしい。
    「もう片付いたから大丈夫だ」
    常に整頓してあるのか、手伝う暇もなかった。

    「指、切れてる」
    兄貴は言うが早いかライナーの手を掴むと指を水で洗い絆創膏を貼る。手首を掴まれたライナーは急なことに狼狽したようで眉を下げ上目遣いで兄貴を見ている。

    ライナーのことはまだわからない事だらけだが、兄貴が構う理由はなんとなくだがわかる気がした。

    鬱陶しいと感じた陰(かげ)は庇護欲になり、手強さはミステリアスに変わる。無愛想で人嫌いかと思えば頼まれたら断れないから予防線を張っているだけなのだと知る。幸薄そうなとこも相まって構いたくなるのだ。

    (兄貴、楽しんでるな。)
    そう思うのは俺がそう思い始めているからだろう。


    「絆創膏常備してるのかよ」
    2人で帰る中、兄貴に尋ねる。
    「女性はヒールで靴擦れおこしやすいからな」
    兄貴がモテる理由が分かった。


    「なんだ?」
    「ハンドクリーム。」
    「ありがたいが」
    「仕事終わりに塗れば問題ないだろ」

    さっそく俺はサークル終わりに店に立ち寄る。店が閉まる時間に行かなければ意味がないからだ。
    そういって俺はライナーの手を取る。
    ハンドクリームを自分の手に馴染ませた後、ライナーの指を1本1本丁寧に塗り込む。
    最後にゆっくり恋人繋ぎしながら、ライナーを見れば、首まで紅く染まっていた。

    明るい表情は乏しいが、困惑や戸惑いは分かりやすい。

    手を繋いだままもう一歩踏み込む

    「なぁ、来週の練習試合来てくれよ。」
    俺は賭けに出ることにした。
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