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    なりひさ

    @Narihisa99

    二次創作の小説倉庫

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    なりひさ

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    ガンマト。デートする二人

    #ガンマト
    cyprinid

    たまにはデートでもしようや「デート、とは」
    「なんだよ、デート知らねえのか」
     昼下がりの洞窟でガンガディアとマトリフはのんびりとした時間を過ごしていた。そしてマトリフは急に「デートでもするか」と提案したのだ。
     ガンガディアは眼鏡に指をやる。光の加減でそのレンズがキラリと光って見えた。
    「意味は知っている。人間が行う奇妙な行動だろう。一緒に出かけて同じ行動を取ることでお互いの興味を深めるという。その点でおいて私は既に君への興味は極限値まできているのでこれ以上に上がることはないが、君が私に興味を持ってくれるならデートの意味もある。私が聞きたかったのはデートの具体的な内容だが、やはり流行りはパプニカか。温暖な気候と風光明媚な観光名所を有し、我々の共通の興味がある魔導書を扱う店も多い。しかしその点においてはカールも力を入れ始めたところではあるし、君の希望が一番だから……」
    「わかったわかった。ちょっと待て」
     息継ぎなしに早口で喋り続けるガンガディアに、マトリフは指を叩いて止めさせた。
    「場所は別にどこでもいいんだけどよ。知り合いに見つかりたくねえから、そうだな、ロモスのそばにある街とかなら」
    「よし、君の気持ちが変わらないうちに行こう」
     ガンガディアはマトリフを抱き上げてそのまま洞窟の外に出た。そしてキラキラした目線でマトリフを見る。さあ早くルーラをしてくれ、という期待に応えて、マトリフはルーラを唱えた。

     ***

    「思ったより賑やかだ」
     ガンガディアはあたりを見渡しながら歩く。モシャスで人間に化けているが姿は面影を残している。そして横を歩くのは小柄な青年だった。
    「遊べなきゃデートの意味がねえだろ」
     マトリフは若い頃の自分にモシャスしていた。それはどうせなら思いっきり遊びたいと言ったマトリフの思いつきだった。この頃が一番体力があったんだよな、とマトリフはモシャスした自分の体を見て言った。
     ガンガディアは若い姿をしたマトリフをじっと見つめる。それに気付いたマトリフはニヤニヤと笑ってガンガディアを見返した。
    「どうだ? 若いオレは」
    「人間は加齢による変化が少ないなと」
    「はあ? 全然違うだろうが」
    「すまない。若い君も変わらずに可愛いと思う」
    「そ……そう言うこと外で言うなよな……」
     プイとそっぽ向いたマトリフは、照れ臭さを隠すようにガンガディアの手をひいた。
    「まず酒だな! あっちの店に入ろうぜ」
    「ちょっと待ってくれ」
     ガンガディアが立ち止まったものだから、手をひいて走り出したマトリフは体が反りかえる。振り返ればガンガディアは真剣な表情をしていた。
    「その姿の君は未成年ではないのかね?」
     マトリフは一瞬キョトンとしてから、怒った顔でガンガディアの肩あたりを殴った。しかしモシャスしても立派な体躯のガンガディアはびくともしない。
    「こ、この頃はとっくに成人してらあ!!」
    「そうか。人間の加齢による変化はわかりにくくてね」
     では行こうか、とガンガディアはマトリフの手を引いて歩き出す。なんだか釈然としない気持ちのマトリフは抵抗してみせるが、やはり力では敵わないために引きずられていった。

     ***

     マトリフの誤算は、若い頃の自分の酒の限界を忘れていたことだ。七十年も前のことだからすっかり忘れていても無理もないのだが、結果としてマトリフは泥酔した。
    「おめえも飲めよなあ!」
     マトリフは顔を真っ赤にさせて、表情は陽気に緩んでいた。酒の飲み過ぎであることは間違いない。しかし飲んだ量はいつもと変わらないから、ここまで酔ったのはモシャスによる体の変化のせいだった。
    「私まで酔っては誰が君を連れて帰るのかね」
     ガンガディアはマトリフの呂律が怪しくなった頃から飲み物を水に変えた。ガンガディアも人間に化けているからいつもより酒の回りがはやい。これ以上に飲んでは呪文も使えなくなるだろう。マトリフがこの状態であるからルーラも使えないだろうし、ガンガディアまで酔うわけにはいかなかった。
    「はあ? じゃあ上の宿にしけ込めばいいだろぉ」
     ガンガディアはつられるように天井を見上げる。一階は酒場で二階は宿屋になっているらしく、一階の客がそのまま二階に上がることもよくあるらしかった。というよりも、一階で相手を見つけて二階に連れ込むことを目的にしているような俗っぽい宿のようだった。
    「今日はデートではなかったのかね」
    「してんだろお……一緒に飲んでるんだし」
    「これではいつもと変わらない」
     いつも洞窟で酒を飲んでいるマトリフは、ほどよい酔い加減でガンガディアを誘ったりする。ガンガディアはそれが嫌ではないのだが、今日は外に出るのだからいつもと違うことができると思っていたのだ。流行りの甘味を食べてもいいし、芝居を観てもいい。そういった普段と違うことを楽しみにしていたのに、目の前の恋人はガバガバと酒を飲んでさっさと酔っ払ってしまった。
    「君も水を飲むといい。それが済んだら帰ろう」
    「なんでだよお、まだいいだろお」
     その言葉さえはっきりと発音できていない。マトリフは手元のグラスを守るように手の中に隠してしまった。
    「しかしこの状態では……」
    「えーなに? もっと飲みたいの?」
     ガンガディアの言葉を遮るように青年が声をかけてきた。背が高く筋肉質な体つきで、爽やかそうな風体の男だ。その青年は座るマトリフを横から覗き込むようにしている。
    「なんだよてめえ」
    「じゃあ一緒にあっちで飲もうよ。奢るからさ」
     青年が机の上にあったマトリフの手を握る。もう片方の手は馴れ馴れしくマトリフの肩に回された。青年は慣れたように人好きのする笑顔を浮かべてマトリフの返事を待っている。マトリフは急に酔いが冷めたように表情を変えた。
    「なんでオレがおめえと飲むんだよ」
    「だってお友達は飲みたくないみたいだしさ」
     青年はそう言ってチラリとガンガディアを見た。ガンガディアは既に怒りで血管を膨張させている。するとマトリフが肩に乗った青年の手を払った。
    「こいつはダチじゃねえ。恋人だ」
     だから悪ぃな、とマトリフは艶っぽく笑うと酒で濡れた唇を舌先で舐めた。
    「……それは残念」
     青年は潔くマトリフから離れると片目を瞑って見せた。マトリフはそれに小さく手を振って返す。そのやりとりが双方慣れているようで、ガンガディアは眉根を寄せた。
    「……いつもこのようなやり取りを?」
    「ここはそういう場所だぜ?」
    「……君は度々一人で飲みに出かけるが、いつもここで飲んでいるのかね」
    「まあな」
     ガンガディアは酒代を机に置いた。そのまま立ち上がる。
    「あん? なに怒ってるんだ、んぅッ」
     ガンガディアはマトリフの顎に手をやると上を向かせてそのまま口付けた。ガンガディアの舌がマトリフの口内に入ってくる。
    「ちょッ……お、い……」
     ガンガディアは角度を変えて深く唇を合わせる。舌先がマトリフの歯列をなぞった。いつもより熱い舌をガンガディアが翻弄する。ガンガディアがマトリフの腰を抱き寄せると、マトリフも意味ありげにガンガディアの太腿に腰を押し付けた。
     やがてマトリフが苦しげに胸を押してくる。そこでようやくガンガディアは顔を離した。
    「はぁ……ぁ……」
     ようやく解放されてマトリフはすっかり腰砕けになっていた。目の縁には涙が滲む。マトリフは酔いとはまた違うとろけた表情でガンガディアを見上げていた。
     ガンガディアはそのままマトリフを抱き上げた。そして店員を見て上の部屋は空いているかとたずねる。店員は全てを見ていたので静かに頷いた。
     ガンガディアは軋む階段を登っていった。そんな光景はこの酒場ではよくあることで、上階から聞こえる嬌声をかき消すほどの賑わいをすぐに取り戻していった。


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