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    なりひさ

    @Narihisa99

    二次創作の小説倉庫

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    なりひさ

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    ガンマト「時の砂」その後の蛇足。弟子に会いたくて未来へ来ちゃったバルゴート

    #ガンマト
    cyprinid

    なにこれ修羅場じゃん ポップは焼きたてのパイを持ってルーラで降り立った。アバンの料理教室で作った自信作である。折角なのでマトリフと一緒に食べようと温かいうちに持ってきた。
    「師匠ぉ〜ガンガディアのおっさん〜お邪魔するぜ」
     呼びかけながら入り口をくぐる。しかしいつもなら返ってくる返事がなかった。人の気配はするのに返事が無いとは、来るタイミングが悪かったのだろうか。ポップはそろりと奥を覗く。
    「えっと、これどういう状況?」
     ポップは目の前の光景に頭にハテナをいくつも浮かべながら訊ねた。
     まずガンガディアがマトリフの肩を抱いている。優しく、というより、まるで取られまいとするようにきつく掴んでいた。ガンガディアは額に血管を浮かべてガチギレ五秒前といった雰囲気だ。そのガンガディアに肩を抱かれたマトリフは諦念の表情で遠くを見ている。そしてその二人と向かい合うように老人が座っていた。ポップが驚いたのはその姿だ。その老人はマトリフと同じ法衣を着ている。かなりやんちゃな髭を生やしており、片目は布で覆われていた。その老人がポップへと視線をやると立ち上がった。
    「ポップ君。私のことはお爺ちゃんと呼んでくれて構わない。お小遣いをあげよう」
     老人はポップの手を掴むと、どこからか出した紙幣を握らせようとしてくる。
    「は、えっ、おじいちゃん?」
     ポップはぎょっとして老人の手を止める。いきなり知らない人から高額紙幣を貰ってはいけませんよ、とアバンも言っていた。ポップは首を振りながら後退るが、老人はぐいぐいとポップに迫ってくる。
    「懐柔すんな」
     マトリフが撃ったヒャドが老人に飛ぶが、老人は難なくそれを避けてしまう。老人はポップのズボンに紙幣をねじ込むと、ポップの手を掴んで椅子へと座らせた。
    「えっと、どちらさんですか?」
     かなり強引な老人にポップは顔が引き攣る。すると老人はポップに向き直り、厳かに言った。
    「私はバルゴート。マトリフの師だ」
    「へえマトリフ師匠の師匠……って、え?」
     ポップはマトリフの年齢を思い出し首を傾げる。マトリフはもう百歳を超えた。かなり長生きだが、その師匠はもっと長生きということだろうか。そんなポップの疑問に答えるようにマトリフは言った。
    「ほんとはとっくにくたばってんだよ。この人はは過去から来たんだ」
    「過去ぉ?」
     ルーラは自在に場所を移動できるが、時間までは遡れないはずだ。ポップは説明を求めるようにマトリフを見る。マトリフは渋々口を開いた。
    「これにはわけがあってだな……」
     事の始まりはガンガディアが時の砂を使って過去に戻ったことだという。そこでバルゴートと出会い、一悶着あったが、マトリフがガンガディアを連れ戻したことでおさまったらしい。
    「そんで?」
    「そしたらジジイが時の砂を手に入れてこっちに来たってわけだ」
    「マトリフを連れ戻すためだ」
     その言葉にマトリフは深々と溜息をついた。マトリフを困らせるとは強烈な爺さんだ。
    「で、ガンガディアのおっさんはどしたんだ?」
     ガンガディアはかなりバルゴートを警戒している。マトリフを掴んで離そうとせず、仇を見るような目でバルゴートを見ている。バルゴートも威圧的な雰囲気でガンガディアを見ていた。
     これは修羅場だ。ポップはピンときた。ポップは他人の恋愛事には人一倍敏感であった。
    「あ、パイは置いておくぜ。じゃあおれはこれで……」
     ポップは逃げ出した。しかしバルゴートに回り込まれてしまった。これでは逃げられない。バルゴートが立ち塞がっている。バルゴートは手を伸ばすとポップの肩を掴んだ。
    「ではポップ君を連れ帰る」
    「駄目に決まってんだろ」
    「ではマトリフとポップ君を連れ帰る」
    「増やすな」
     バルゴートとマトリフの言葉の応酬は続く。おそらくバルゴートが来てからずっとこの調子なのだろう。
    「もう潰してよいかな」
     ガンガディアが言った。口元は笑みが浮かんでいるが、目が怒りで燃えていた。バルゴートはそれを鼻で笑う。
    「黙れ。ニフラムで消すぞ」
    「その前に粉砕する。頭の先から爪先まで満遍なく粉々にしてから燃やして灰にする」
     ガンガディアの血管が限界にきていた。バルゴートはすっと立ち上がると洞窟の外を指差した。
    「外へ出ろ。こんな大鼠の棲家のような洞窟では窮屈だろう」
    「いいだろう」
    「ひとの洞窟を貶してんじゃねえよ」
     バルゴートが外へ向い、それにガンガディアも続いた。マトリフはパイに手を伸ばしている。
    「いいのかよ、止めなくて」
     ポップはマトリフの肩を揺さぶる。二人が戦えば血みどろの争いになるのは明らかだった。
     マトリフは口の端にパイのくずをつけたままで腰をあげる。洞窟の出入口に向かえばちょうどバルゴートが外に出たところだった。早く来いと言わんばかりにガンガディアを見ていた。
     マトリフはガンガディアの腕を掴んで止めると、岩戸を呪文で閉めてしまった。バルゴート一人が外に締め出されたかっこうになる。
    「マトリフ」
     外からバルゴートの声がする。何やら物理的な攻撃で岩戸を砕く音もする。
    「帰れ」
    「開けなさいマトリフ!」
    「ばーかジジイばーか。パルプンテで形状記憶されたヒゲ」
    「それはお前の仕業だろう!」
     さーて今のうちにパイを食おうぜ、とマトリフは言う。ポップは三人分の紅茶を入れてパイを食べた。

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