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    青天霹靂だったトールと藪蛇な呂布の雷飛。

    #雷飛
    leiFei

     ある日、呂布は気がついた。もしかして、トールは自分のことが好きなのではないか、と。戦いの最中はそうでもないのだが、頻繁に自邸に誘ってくるし、その誘いに乗ってやれば表情が和らぐし、飲んでいる最中に意味もなくくっついてくるし、なにもないのに見つめてはよく微笑んでくる。これは……そういうサインなのではあるまいか。そう思った呂布は飲みの席、直球でトールに尋ねた。
    「お前、もしや我のことが好きなのか?」
     トールはそれを聞いてぽかんとして、手に持っていた杯から酒をこぼしそうになったので、呂布はそれを空になった自らの杯で受けた。あまりにもトールが驚いているのを見て、呂布は違ったか? と首を傾げた。
     数秒後、硬直を解いたトールは言った。
    「……私は、貴様のことが好きなのか?」
    「それを我が聞いているのだが……」
     呂布はトールのこぼした酒に口をつける。頭を抱え、悩む様子のトールに、呂布はもしや余計なことをしてしまったのだろうかと思ったが、言ってしまったものは取り消せない。
    「まあ、我の気のせいだったら、それでいい。変なことを言い出して悪かった。忘れてくれ」
     トールは呂布のその言葉に曖昧に頷いたが、納得はしていないようだった。その日の飲みの席はトールが始終ぼーっとしていたので早めのお開きとなった。

     後日、呂布はトールに呼び出しを受けた。ワルキューレの予定があかない日だったので死合いはしないのだろうと思いながらも、手持ちの武器を見繕い、トールの元に足を運んだ。
     トールがいる部屋に案内された呂布は、沈痛な面持ちのトールを確認した。どうしたのだ、と呂布が尋ねる前に、トールは口を開いた。
    「呂布よ、貴様に知らせねばならないことがある」
     そんな前置きをされてしまっては否応にも呂布は緊張せざるを得ない。いったいトールに何が起こったのか、神々の間で問題が起き、遠征にでも行かねばならなくなったとかだろうか。そんなことが頭を過ぎりつつ、トールの次の言葉を待った。
     トールは長めの沈黙をとったあと、口を開いた。
    「……どうやら、私は……貴様のことが好きらしいのだ」
     数秒の沈黙。
    「はぁ?」
     のちに呂布は素っ頓狂な声をあげた。
    「私が貴様のことを好きなのではないか、と言われてから、ずっと考えていた。考えれば考えるほど、なるほど、私は貴様のことを愛おしいと思っていることに……気付いてしまった」
     その言葉で、そういえばそんなことを言ったなぁと呂布は思い出した。自分がそんな疑問をぶつけたことを、すっかり忘れていたのだった。
    「私の貴様への思い……どうか受け取ってはくれないだろうか」
     トールは真剣な顔で、呂布に言った。次は呂布が考える番だった。
    「…………時間をくれ」
    「わかった」
     すぐには答えられないため、呂布は問題を持ち帰ることにした。幸いにも自分には軍師がいた。考え事はそちらに任せればいいだろう。

    「反対です!!!!!」
     陳宮のクソデカボイスが響き渡った。
    「理由は? それ相応の理由がなければ奴は引くまい」
    「決まっています! 我が殿を、彼奴の手に渡す愚行を、見逃せないから! です!」
    「理由になってないだろうが」
     呂布は溜め息をついた。これでは陳宮からもまともな意見は出てこないかもしれないな、と思っていた。その後もとうとうと殿が楽しそうにしていたから見逃してきただの、最初から自分はトールのことが気に入らなかっただのと話す陳宮に飽きてきた呂布は、「それで?」と結論を促した。
    「……彼奴めの存在は癪ではありますが――殿のお気持ち次第かと。こちらから言えることは、それだけです」
    「そうか」
     軍師からそう言われ、呂布は自分だけで考えをまとめることにした。トールから好意を告げられ、混乱していたが、冷静にはなれた。
     呂布は考えた。トールへの返答をどうするか、考えた。以前の状態の維持、というのが一番求めることであったがおそらくそれはもうできないだろう。トールは好意を自覚しており、呂布はそれを告げられた。問題は、トールからの好意を自分がどう思っているか、である。
     呂布は、考えた。考えたが――早々に、やめた。面倒になったのだった。それに、もう、答えなど決まっている。

     翌日、ワルキューレを伴って、呂布はトールのもとに出向いた。
    「答えを聞こうか」
     そう言うトールに、呂布は武器化したワルキューレを握り締める。そして、それを、トールに向けた。
    「……なるほど」
     トールは笑い、そしてミョルニルを掴む。
     その間に、言葉は不要であった。戦えば、それが言葉の代わりになる。……はずだ。
     二人は慈しむように、死合った。

    「なあ、トールよ」
    「なんだ我が友」
    「これでもお前は我が好きか」
    「ああ、好きだ」
    「そうか」
    「貴様は……どうだ?」
    「……まだ、わからん」
    「ならば、いい。貴様が死ぬまでは、待とう」
    「気が長いな」
    「神だからな」
     二人は笑い合った。そして医者に向かい、二人して怒られたのであった。
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    amei_ns

    MOURNING今書いてるやつで気に入らなくなって没にした展開の雷飛「貴様が了承したのであろう」
    「なにをだ」
    「……まさか覚えてないのか」
     呂布が頷くと、トールは目を見開いた。
    「ばかな……」
     そう呟くトールの様子を見て、自分が忘れたことはそんなに重要なことだったのだろうか、と思い冷や汗が背中を流れた。
    「教えろ、トール。我はなにを了承した」
     自分が昨日なにをしたか知るのはトールしかいない。今にも熊などを捻り殺しそうな剣幕で、呂布はトールに尋ねた。
    「貴様はな、呂布よ」
     トールは重々しく口を開いた。

    「私と婚約することを、了承したのだ」

     沈黙。

    「は?」

     こんやく。こんやく、とはあの婚約か? 宇宙に放り出されなにもできない猫のような顔をする呂布に、トールは続けて言った。
    「今朝、父、オーディンからも貴様と婚約していいという許しを得た。貴様と私は晴れて婚約者というわけだな」
     唇の端を少し上げ、微笑むトールに、呂布はまだ宇宙に放り出されたままのような顔をしていた。今朝ということはそう何時間も経っていないはずである。それなのにあのオーディンから許しを得たということはトールの仕事は早かったということで、混乱したままの呂布はせっかく整えら 631

    amei_ns

    DOODLE気づいてしまったトールと断る呂布の雷飛「私は、貴様が好き……なのかもしれん」
     トールから捻り出された言葉は、呂布を唖然とさせるには充分だった。ぽろ、と肉がこぼれ落ちたのを下につくまでに拾い上げることになんとか成功した呂布は、それを口に放り込みもぐもぐと噛み締めてからごくりと飲み込んだ。
    「なんだ、それは。どういうことだ」
    「そのままの意味だ。私は、お前が好きなのかもしれん」
     トールはもう一度言った。一度言ったからか、次には絞り出すようにではなく随分とスムーズに言葉に出していた。
    「それはどういった意味の好きだ?」
    「……愛おしいと思ったり、慈しみたいという気がしたりする、それだ」
     呂布はうっかり杯を取り落とすかと思った。トールから愛おしいだの慈しみたいだのという言葉がでてきたことに驚いたが、それ以上にそう言われているのが自分であることに、驚愕したのであった。
    「待て。相手は誰だ? 本当に我か?」
    「ああ。貴様だ」
     肯定されて、呂布は頭痛がしてきた。まさか自分が? という気持ちでいっぱいであった。しかもそれが友と認めた、友だと思っている、友として扱っているし、向こうも友として扱ってきているはずの、トールから言われてい 1659

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    DOODLE子猫にじゃれつかれるトールを見てる呂布の雷飛「助けてくれ」
     トールが助けを求めるなど、どんな天変地異があってもないことだと思っていた。けれど、それは有り得たらしい。トールからの連絡があり駆けつけた呂布は、その光景を目の当たりにし、驚愕で目を見開いた。
    「お前、なにをしているんだ……?」
     トールは子猫に群がられていた。数は、五匹くらいだろうか。ぴゃう、ぴゃう、などと鳴きながら、小さすぎて恐れというものをまだ知らないのだろう。トールの足元をよじ登っていたり、その足元でころころと転がっていたりと、それぞれに違う反応はしていたもののどれもがトールの傍にいるという点では一致していた。
    「見て分かるだろう」
    「いや、見て分からん。どうした?」
     使用人が邸の傍に捨てられていた箱を持ってきたら入っていた、というのである。
    「私を恐れない生き物など初めてだ……」
     はぁ、と溜め息をつくトールの揺れる髪の毛にちょいちょいと手を出している子猫もいた。
    「お前のことだから捻り潰していても不思議ではなかったが」
    「こんなもの、殺したとてどうなる」
     呂布が近付き、一匹をひょいと拾い上げる。シャーとも言わない、警戒心というものすらまだないのではあるま 1199

    amei_ns

    DOODLEキスが好きなトールとキスをされる呂布の雷飛 トールはくちづけをするのが好きらしい、と呂布は気がついた。むやみやたらと呂布の体に唇を落としたがるし、その唇が触れるときには自然と口角が上がっている。そのくせ、痕という痕はつけてこない。まあ、呂布の普段の格好が格好だからかもしれないが。それが気遣いであるとするなら、素直に受け取っておくのである。下手につついて、蛇を出すこともあるまい。
     唇が合わさる。普通なら目を瞑るのかもしれないが、トールも呂布も普通ではなかったので、目を開いたままだ。視線がカチ合ったまま、キスをする。トールの舌が催促するように呂布の唇を舐めると、呂布は口を開き、トールの舌を受け入れた。口内を蹂躙しようとしてくる舌に対し、呂布は応戦する。二人にとって、キスもまた戦いであった。どちらの勝ちというものもないが、相手を負かすことを考えているのであれば、それは戦いとなる。
    「っ、ふ……ぁ」
     呂布の口から吐息が漏れ、それはトールの耳に届いた。官能を刺激する、いい音だった。ぬる、と舌同士が絡み合い、くちゅりと音を立てる。始めの頃はそう、軟体生物のようなそれを受け入れるのは苦手な部類だったが、いまはそうでもない。むしろ心地がい 1381

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    DOODLEキスをする二人の雷飛 トールの不思議な色をした目が間近にあるというのは、どうにも慣れない。普通キスをするときには目を瞑るものだろうが、普通ではないトールと普通ではない呂布がそれを行うときには、互いに目を閉じたりしない。気恥ずかしくなった方が負けなのである。相手をガン見しながらのキスは、それは落ち着かないものがあるがしかたがない、と呂布は思っている。
     なぜか、どういう訳か、なにがあったというのか、そういう仲になった二人である。トールは案外甘えたなところがあったが、甘えるのが下手な上に相手は呂布なので、変な方向に転がることが多々あった。キスの時のこの所作もその一端である。二人にかかるとなんでも戦いになってしまうのは――そういう性分である。生きづらいのはお互い様であった。
     ちゅむ、ちゅ、ちゅむ、と角度を変えては軽く押し付けられていた唇が、次第に大胆に呂布の呼吸を奪うような、荒々しいものに変化していく。吐息すらも逃がさないとばかりに、はく、と口を大きく開き呂布の唇を閉じ込める。
     トールの口から伸びてきた舌が唇を擽れば、呂布は口を開かざるを得なくなる。侵入してきた舌は呂布の特徴的な尖った歯を一本一本丁寧に愛撫 1706

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    DOODLE自分の感情に悩むトールとめんどくさがる呂布の雷飛愛、という言葉は、二人の間にはあまりにも似合わないものだ。だから、決してこれは愛ではない、とトールは定義していた。わかっていた。わかっている。わかって、しまっている。これは愛などではないと。愛と呼べるほど甘やかではなく、激しく、燃えるように、苛烈で、暴力的な、それは愛などでは決してないのだと、そう、理解しているはずだった。
     けれど呂布を見るたびに、感じるたびに、思い返すたびに、弾ける胸の内を表せる言葉を、トールは知らなかった。友に向けるには凄絶過ぎるそれを、どう定義していいのか。その問題は詩情を理解したことがないトールには難しすぎた。
     この胸の内を、どう表していいのか。困って、困って、困って。
    「それで我に尋ねてどうするんだ」
     トールよりも詩情というものを理解しないであろう友、呂布本人に尋ねるまでに至った。
     呂布は此奴混迷し過ぎだろう、という感想を持った。それでもこの頃には聞くだけは聞いて放置というわけには行かず、一緒に考えてやる程度にはトールのことを突き放せなくなっていた。
    「激情ではダメなのか」
    「ダメだ。もっと好意的な解釈がしたい」
    「慈しみ」
    「そうではない。これはそこ 1222

    amei_ns

    DOODLE行為のとき首に噛み付こうとしてくる呂布を肩に誘導するトールの雷飛。いろいろあった。そう、いろいろあった、のである。
     その結果、トールと呂布は、いわゆるそういうことをする仲になっていた。この話は二人が寝所を共にしているところから始まる。

     首とは急所である。それは人も神も同じだ。否、神にとって弱点であるから、神を模して作られた人間もそうなっているのだ、と言わなければならないだろうか。首は頭部と胴体を繋ぐ関節であり、また太い血管の流れる箇所である。そこに食いつかれようとするならば、危機を感じ、避けようとするのが普通の心情であろう。
     それは、北欧最強神であるトールもそうであった。首に食らいついてこようとする友の額を押さえそれを阻止する。
    「噛むなら肩にしろ」
     押さえた頭をそっと肩の方に誘導すると、呂布はおとなしく肩に齧り付いた。呂布の鋭い歯で噛まれたことにより、痛みが走るがその程度で表情を歪めるトールではない。がじがじと肩に歯型を付ける呂布に、ほどほどにしておけなどという言葉をかけようかと思ったが、やめた。どうせもう聞こえてはいないだろうことがわかったからだ。
     意識が朦朧とする中でもしっかりとトールに掴まり、肩に齧り付きながらも時折口を離し喘ぎ声 1774

    amei_ns

    DOODLE呂布に死んで欲しくないってしたトールと対応に追われた呂布の雷飛「貴様は、天でも、退屈したら死ぬのか?」
    「まさか。ここにはトール、お前がいるではないか。それだけで、我の日々は退屈からは程遠い」
     トールは眉間に皺を寄せたままその言葉を受けた。呂布の言葉に懐疑的なのはそれだけでわかった。面倒だな、と思いながら呂布は頭を掻いた。なにかの拍子に生前の呂布について見てしまったトールは、呂布が目の前から消えることを恐るようになった。なるべく目の届く範囲にいてほしい、と友に願われた呂布はしかたなしにそれに付き合っていたが、陳宮が近況を送ってくる頻度が高くなり、また赤兎馬の様子も気になっていた。そのため、この状況を打破しなくてはならないな、と思っていたところだった。
     喋るのはあまり得意ではない。全てを解決してきたのは武、であったから。言葉などは不要だった。武以外のことは陳宮やほかの配下に任せてきたこともあり、不得意であった。いくら頭を悩ませたところで武器を取る、以外の答えが見当たらない。顔を曇らせる友に、慰めの一言すらでてこない。体を動かすのは自由であった。軽い手合わせなら何度もした。呂布はどうすればいいのかと考える。…………。ちっともわからなかった。
     呂 1238

    amei_ns

    DOODLE神トールと悩む呂布の雷飛 鉄の手套をしていないトールの握力は凶器である。通常時のミョルニルですら握り壊してしまう可能性のあるそれは、紛れもなく殺戮兵器の域に達している。しかし、最近のトールは呂布と素手で触れ合いたいがため、呂布の前では鉄の手套を外すことが多くなっていた。――今回はそれがあだとなった。
     ミシッ、と軋む音がしたと思ったときには、すでに遅く。トールに掴まれた呂布の腕は粉砕されていた。咄嗟のことだったので、トールも力加減を間違えていた。何が起こったのか理解するよりも先に、握り壊された呂布の腕の折れた骨が刺さった血管から、鮮血が溢れ出てトールの手を、落ちた血が床を、汚した。トールが手を離せば、血はどんどんと溢れて、落ちる。呂布には当然痛みはあったが、うめき声一つあげることなく、半ば引きちぎれた腕を完全に引きちぎり、邪魔になった腕を放り投げると、傷を残った手で押さえた。少しでも血の流出を抑えるためだ。
    「布はないか」
     呂布の声で唖然としていたトールはハッとして自らの着ていたものの一部を破り、呂布に渡した。呂布はそれを片腕で器用に流血している箇所に巻きつけ、止血をする。それはどちらかといえばこれ以上床を 1906