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    秀二🐻‍❄️

    ヘキの墓場🪦
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    『にせもの』

    「どうか私のために死んでください」

     月島は私に縋りささめく。夜を煮詰めた粘っこい匂いがする声音だった。

    「お前が望むなら、それも悪くないかもしれん」
    「嬉しいです」

     早く、早く!早く、私と共にいきましょう。
     
     月島は痛いほどに私を抱きしめる。触れた場所はじわりと熱い。人の形を保っていた月島だったが、徐々に輪郭が崩れていく。溶ろけた月島が全身にまとわりつき意識が遠くなっていく。

    「早く、早く、早く」

     月島の中に溺れてしまう。耳や口にやつが入り込もうとしてきた瞬間、真後ろから声がした。

    「やめてください」

     月島の声だ。

    「そんな贋物が私のはずないでしょう。ついに呆けたんですか」
    「まさか」

     口の周りにまとわりつく月島を振り払う。

    「しかし、お前の姿と声音で迫れると弱い」
    「それが私だと」

     この月島はほぼ粘液となっている。甘い誘い声ももう聞こえない。海水のような匂いだけが残り漂っている。

    「ふざけないでください。そんなふざけたこと、到底許しがたい。ひどいです。貴方をころしてしまいたい」

     甘く冷たい声音。

    「早く、早く、早くころしたい」
    「お前だって贋物だろうが」
    「私は私ですよ」
    「馬鹿め。月島はもっとむぜで、それでいて恐ろしいんだ。お前らなどに真似できるものか。消えてくれ」

     貴方の望みではないのですか。
     幻は消えた。

     


    『うまれかわる』

     世界一有名なハンバーガーチェーン店。鯉登も月島もここであまりものを食べることはなかったが、休憩に訪れることがある。なにせ店舗数が多い。そしてお馴染みのロゴは目につきやすいのだ。

    「最近ふと思うんだが」
    「なんですか」

     鯉登は雑然としたファストフードの店内に似つかわしくない仕草でコーヒーを口にする。一口飲んだ彼は月島に話しかけた。

    「私たちは、昔どこかであったことがあるんじゃないか」
    「ナンパですか?」
    「今更してどうする」

     確かに、と月島は珍しく破顔した。笑い声が漏れる口元を抑え月島が応える。

    「前世があったとして、私たちが共に過ごしていたとしても、生まれ変わりはしないです」
    「どうしてそう言える」

     熱さも冷たさもない声音だった。

    「ことわりを曲げた者は、生まれ変わることができないからですよ」

     鯉登はいまだに生まれ変わりを信じている。
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