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    秀二🐻‍❄️

    ヘキの墓場🪦
    現在はくるっぷメインのため、通常は更新していません

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    だらしないオタクなので、書きたいものを書きたいところまで書いて放置してばかりです。
    我が家の鯉月は須く転生標準搭載ですが、こちらも転生です。
    転生した月+ちよが前世の伴侶について恋バナしたり探すあれを書きたいです。
    もちろん遠い昔に月ちよ前提がありますが、現代では鯉月+ちよです。
    佐渡は思い入れのある土地なのでそのうち書き上げたいです。

    明日よ来たれ再びちよと出会った。物心ついた頃、ほぼ同時に明治の記憶を取り戻し驚いた。あの後どのような人生を歩んだか毎日のように語り合った。互いに記憶がなければまた違ったのかもしれないが、俺たちはそれぞれの伴侶への思いを未だ抱えていた。俺は鯉登さんへ、ちよは生涯を共にした夫へ。

    「俺たちだってこうして出会えたんだから、もしかしたら会えるかもしれない」
    「そうだといいね」

    時代と風習が変わり、国言葉もあまり使わなくなっていた。島も明治とは比べ物にならないほどに発展している。とはいえ都会と比べたら当然ドがつくほどの田舎だ。何せ電車すら走っていない。車やバイクががあればまだマシだが、そうでなければバスが主要な移動手段だ。

    「はじめちゃんは高校出たらどうする?」
    「あー……どうしようかな」
    「……もし探すなら東京?」
    「ちよはそうだろうな。俺はどこかな。鹿児島か北海道か東京か……」
    「日本って広いねぇ」
    「まったくだ」
    「佐渡くらい小さかったらすぐ見つかるのに」

    学校帰り、ふたりでガラガラのバスに揺られながら毎日毎日考えていた。ここらは佐渡の中でも特に若者が少なく……いや、人口密度自体が低いから帰りのバスはいつもほぼ貸切だ。バスの1番後ろのシートに腰掛け、海岸線を眺める。陽で海面がきらきらと輝いている。昔もあのように輝いていたものかもしれないが、いつも薄暗く渦巻いていて一度も輝いて見えたことはなかった。

    「……ふふ」
    「ん?」
    「はじめちゃんが昔、佐渡の形を見てこれが日本列島だって勘違いしてたこと思い出して」
    「……形が少し似てるだろ」
    「確かにねぇ。あと金北山のこと富士山だって思ってたよね。ふふふ……いとしげ」
    「昔の話だろ。あの時は思い出してもなかったんだし」

    今世はごく普通の家庭に生まれた。ちよとも出会えた。それなりに勉学に励んではいるが特に上昇志向はなく、たいした理由もなく自宅から一番近い学校に通学している。ちよは俺より勉強熱心だったから、島の中心部にある一番偏差値の高い学校に通うものとばかり思っていたが意外にも同じ学校になった。

    「勉強も大事だけど、それよりあの人のことが気になって」
    「色々考えてるんだな」
    「うん……親不孝かな?」
    「そんなことないだろ」
    「あと、こうやってはじめちゃんとお喋りしたいし。あっちの学校行くとなかなか会えなくなるでしょ」
    「まぁな。お前そんなこと考えてたのか」

    俺の家とちよの家は近所にある。もう数分歩いていけばちよの家に着くというところで、いつものようにバスを降りた。ちょうどいいところに停留所がないから、いつも運転手に声をかけて適当なところで降ろしてもらう。あちらも俺たちが乗り込んできた時点でそのつもりでバスを走らせている。毎日毎日ふたりで同じように下校しているから俺たちにとっても運転手にとっても馴染みの行動になっている。

    「鯉登さん、会ってみたいなぁ」
    「……もし見つかったらな」
    「見つかるよ」

    ちよの言葉は確信めいていた。
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