鯨にでもなった気分だ。40代の方が近くなった大男が強い酒を舐めるのを見ただけで、罪悪感だか痛みだかに緑と金の瞳がゆらりと滲むように揺れたから。これは俺のものだと、がばりと大口を開けてまるごと呑み込みたくなった。強く孤独に生きてきた人が見せるやわらかな揺らぎを、ひと欠片もこぼさず呑み込んで腹に収めて、まだまだイケるなと腹の中の空洞を感じた。デカくなってよかった。境界線を探るような戸惑いも、泊めてもらった翌朝の寝癖が跳ねて少しぼんやりした瞬きも、俺が突然デカくなったことに気づいて硬い鉱物みたいに輝く目をまんまるくしているのも、そっくりまるごと呑み込んだ。
再会するたびにこの世の幸福をぜんぶぎゅっと包んだ荷物が届いたみたいに笑いかけられるのには、うっかり喉を詰まらせそうになるけれど、それもまた頭からがぶがぶと呑み下した。呑めば呑むほど夢中になって、腹の中の空洞がわんわんと切なく存在を訴えた。
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