ある雨の日Ⅰ「……うっとうしい雨だな」
ぼんやりと窓の外を眺めていたディアドラがぽつりと呟いた。ソファに沈めた身体が余計に重い。
先ほど昼食を済ませたところだが、雨は今朝から降り続いている。
彼女の向かいでは、ラディアスが本に視線を落としていた。アナベルに借りたらしい。表情を微塵も変えずに黙々と読み進めている。
『私は雨の日は好きよ。なんだか、本を読みたくなるじゃない?』
ふと姉の言葉を思い出した。いつだったか、明日どこかへ出掛けようと約束した翌日がちょうど雨模様で、ディアドラはとてもがっかりしたことを覚えている。結局その日は家で過ごしたのだが、アナベルが物語の読み聞かせをしてくれたのだ。
子供じゃないのだから、と初めディアドラは断ったが、
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