13.照らしてよ、ペリドット宇髄に自分の気持ちを打ち明けてから俺は元の生活に戻った。自宅で寝起きし、毎日仕事へ出かける。誰もがしているような当たり前の生活が何十年ぶりに自分にも戻ってきたような気分だった。――彼もどこかで新しくそういう生活をしていればいいのにと願うばかりだ。
あれから宇髄の弟は一度も自宅には戻っていないようだった。連絡を入れたトークアプリの既読は付くものの、返事が返ってくることはない。もしものことがあってはいけないからと、一度だけ宇髄と彼の部屋を訪ねた。来訪をインターホンで知らせても応答が無いのは予想出来ていたため、何度か鳴らした後宇髄が元々知っていた玄関のロックの暗証番号で部屋の中へ入ってみた。やはり彼が戻って来ていたような様子はなく、この部屋だけがあれから時を止めたようにそこに在った。彼が変わりなく、何事もなくいてくれることを祈るしか自分たちには出来なかった。
5599