――ずっと、会っていない。
店に来ない日がこんなに続くのは久しぶりのことだ。元々、取り立ててお互い連絡を取りあうようなことはしないから、皮肉げな声もしばらく聴いてない。
常連、と言っていい頻度で店へ通い詰める薫が、数日顔を見せないことはよくある。けれど、もう一カ月だ。こんなに長い間足を運ばないことはほとんどなかった。例えば内地で個展を開くとか、そういった何か特別な時でもなければ考えられない。その程度には、胃袋を掴んでいると自負している。
そういった事柄があれば、しばらく会えないことを告げる代わりにさりげなく会話に織り交ぜられるはずで、それさえないことが気になった。
――もし、今日も来なければ。
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