スノームーン'23やっと一日の作業が終わった。
椅子に座ったまま背伸びをして時計を見ると時刻は午後8時を回っていた。
いそいそと隠していた指輪を付けてから誰にも見つからなさそうで、なおかつ月がよく見える場所へ向かう。
実際、いるかどうかわからない。
祈るような気持ちで、その場所へ降りた。
「ブルース」
青白い月明かりに照らされた赤いメットに、黄色いマフラー。その姿は妙に儚げで、今すぐにでも腕の中に存在を感じたい思いに駆られる。
「よくわかったな、メタル」
振り向いた手に持つE缶からは白い湯気がでている。俺が来るまでずっと温め続けていたのだろう。
「来なかったらどうするつもりだ?」
前もって連絡してくれたら、待たせずに済んだのに。
「べつに……ほら」
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