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    kemuri

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    冷たい荒野に薔薇が咲きました/フロリド

    つまらないツマラナイつまらない。
    授業も退屈だし、寮に戻ると怒られる。木の下で寝ていようかと思ったら雑魚共の喧嘩がうるさい。睨んだら勝手に散っていったけれど、興冷めしてすっかり寝る気も失せた。
    じっとしているのも耐えられなくてウロウロと構内を歩き回ろうとしたけれど、こちらに気付いては怯えて避ける他人が煩わしいし目障り。この不機嫌があからさまに出ているせいなことはわかっているが隠す気はちっともなかった。本当に全部が全部気に食わなくて苛立っていた。
    狭っ苦しい構内を一周してしまってまた外に出る。あちこちの馬鹿騒ぎのような声が癇に障る。それでも暗く狭い屋内にいるよりはマシ。そうして歩き続けて結局体育館の方まで来てしまった。ちょうど使用時間の合間なのか運良く誰もいなかった。
    「あーーーーツマンネ」
    このぐちゃぐちゃを声を出して発散したい。したけど全く何も発散できなかったが。次の授業まで人が来ないのだし、ここで寝てしまおうと壁にもたれかかって目を閉じた。
    ガサと音がする。潜っていた意識を浮上させると目の前に人がいて一瞬身構える。
    「起きたね」
    「あ……金魚ちゃんじゃん」
    身体をこわばらせたものの、目に入ったのは見慣れた同級生だった。
    「これからボク達はここで授業なんだけど……キミはまたサボりかい?いい加減におし。早く自分の授業に戻るんだ」
    「やだ」
    金魚ちゃんとはいえ気は乗らないし命令されるなんてもっと嫌だ。顔を背けて再び目を閉じる。
    「今気分乗らねーから、オレなんかに構ってないでさ、金魚ちゃんさっさと授業戻りなよ」
    「始まるまでまだ時間はある。それまでキミが動くのを見届けるよ」
    「……ウッザ」
    「何とでもお言い」
    目の前で仁王立ちする彼を見上げ睨みつける。その辺の雑魚とは違ってこれくらいじゃ怯みもしないところが金魚ちゃんだな、とぼんやり思う。
    「このままサボり続けるならジェイドにも連絡をするよ」
    「……別にジェイドに言ったってどうでもいいけどさあ……」
    言い合っていたらここでサボっているのも馬鹿らしくなってきた。移動する気になってきたものの、言われて動いたみたいになるのは嫌だ。
    「……じゃあ金魚ちゃんがぁ、オレをその気にさせてよ」
    「ふうん……その気ね……そう」
    手を口元に当てて考え込む風の彼はにわかにしゃがむとオレに顔を近づけた。お互いの呼吸が分かる距離。ぼっと身体が熱くなる。これはまさか、と思ってると金魚ちゃんはクククと喉を鳴らして笑っていた。
    「キス……すると思ったかい?お預けだよ。でもそうだね……今日キミのシフトが終わった頃にでも鏡舎に寄るよ。残り一日をちゃんと過ごしたらさせてあげる」
    「……今までいつでもやってたじゃん」
    「だからお預けなんだよ。いいだろう?たまには」
    ニヤリとした表情の金魚ちゃんは立ち上がった。ちょっとだけ頬が赤いのが見える。あんな風に言ってて自分でも恥ずかしくなってるじゃないか。言わないでおくけど。
    「……わかった。じゃ、夜に」
    自分も立ち上がって、そうすればいつものように金魚ちゃんよりも視線が上になる。つむじが可愛い。なんかいい気分になったおかげでイライラした気持ちがすっかりどこかに行ったみたいだ。
    「ああ、ほら早くお行き……うわ」
    「ちょっとだけ先にちょうだい~」
    覆いかぶさるように抱きしめる。運動着のごわついた布が邪魔のように思うがそれは今だけなので気にしない。ポカポカとした気分で、これが幸せなんだなあ、と頬がにやける気がした。
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