【キミの一番美しい秘密を教えて】 ***
風が中庭の木の葉を揺らしている。さっき終わった授業の教科書とノートを携えたままリドルは流れる雲を見上げていた。
「見っけた」
「……フロイド」
声のした方を見ると両手をポケットに突っ込んだフロイドが立ち尽くしていた。キミもさっきまで授業があったはずだろう。教科書の類はどうして持っていないんだ、という小言が口から出かけたが、今言うのはそれではないことを理解していた。
「……この間はあんがと」
「無事だったようで何よりだよ」
あの後、先に目を覚ましたのはボクだった。だがフロイドも無事に目を覚まし、他の生徒と同じように出来上がった魔法薬を飲んで復帰したとアズールから聞いた。また、あの空間での記憶は精神の奥底のやり取りでしかないため現実のフロイドは何も覚えていない、ということも聞いた。つまりあの幻想的な世界を記憶しているのはボクだけということらしい。少し優越感を感じるような、もったいないような気持ちだった。
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