嫌い(大入り袋)休日の昼…特に用事もなくリビングで適当なニュース番組を流しながら大内がタブレットを操作しSNSを見ていると、ふとあるタグを見掛けた

「恋人に嫌いと言われた時の反応…？」

小さく読み上げると何気なくそれをタップしてみれば意外とやっている人物は多いらしく文章や動画が溢れている、暇つぶしにと流し読みしていると泣いている者や驚いている者すぐにドッキリだと気づく者など多種にあり、少し興味が湧くと自分の恋人はどんな反応をするのだろうと多少興味が湧いた。
悲しんだり泣いたりはフリはするだろうが自分の前では本心からそのような態度を出さないだろうな…と考え、他のパターンなども考えたがどれもしっくり来ない…

意外とあいつの事何も分かってねーんだな

そんな事を考えていれば後から妄想の中の人物が声をかけてきた

「薫サン？何をされているんですかぁ？」

独特な間延びした声と共に足音が近づいてくると、見ていた文章を見られぬようにと電源を落とし振り返ればラフな服装だがコートを羽織った入縄がこちらに向かって歩いており、先程まで出掛けていたのだなと容易に想像つく
そうだ…思いつかないのであれば試しに言ってみれば良いのでは？等とよからぬ事を考えてしまい笑いそうな顔を抑えながら真剣な目付きで入縄を見つめると、その表情に気づいていないのか入縄は羽織っていたコートを脱いで大内の座るソファへと少し感覚を開けて座りチラリと面白みのなさそうなニュースを見る

「ダメですよぉ、見る気のないテレビをつけながらタブレットを見ていたら」

そう言いながらも消すつもりが無いのか、また大内の方を見る。ここまで数分がたったが大内は口を開くことが出来ないでいた。
ただ一言『嫌い』という言葉を伝えるだけなのにそれが出てこない、それに行き着くための言葉すら出ない。焦っていると入縄が距離を積めるように大内の顔をのぞき込む

「どうかされました？先程から黙り込んで」

大内の考えなど知るはずもない入縄は不思議そうに見つめるが、大内はそれどころではなく目線を伏せると大きくため息をついたと同時に入縄に抱きつき腕に力を込める。
黙っていたかと思うと急に抱きついてくる大内にわけも分からない入縄は眉間にシワを寄せるものの、普段とは違う様子に多少の心配もあるのか話すまで待とうと大内の後頭部を撫でれば、すりっと入縄の側頭部へと大内の頬が擦り寄ってきた。
入縄の温もりを感じながらまた内心ため息をついた…分かってしまったのだ

愛しすぎて安易に傷付く言葉を言いたくないし、口が裂けてでも『嫌い』なんて嘘をつきたくないと

まあ……本人に言うのは気恥しいので、内心のみに留めて今は甘えるのみにしておこう…

そう考え、少し入縄へと体重を寄越したのだった