ホワイトデー3月14日、ホワイトデーの朝に大内が目覚めると端末を手に取り取り敢えず日付と時間を確認すれば、もうこんな時期かと思いつつも大きな欠伸をしてベッドから身体を起こしクローゼットへと移動すると、適当にラフなトレーナーと細身のジーンズを手に取り着替え洗面台へと向かいいつも通りの髪型にセットしてと…いつも通りの身支度を整えれば台所へと用意しておいた大きな紙袋を取りに行った。
「おはようございます、早いですねぇ」
紙袋の中身を確認していると後から声を掛けられ振り返ろうとするが、それよりも先に声の主は大内の肩へと手をやり密着しながら紙袋を覗き込み何時もの読めない笑顔を浮かべ
「そういえば、今日はホワイトデーでしたね」
こちらから触るのは嫌がる癖に自分からのパーソナルスペースは狭い相手にため息つきつつも、熱いのかすぐに離された手を横目で確認してから1歩前へと移動してから振り返り恋人である入縄を見つめて
「言っておくが、この中にはお前の分はねーぞ」
「わかってますよォ…ワタクシお渡ししてませんし」
大内の言葉は予想の範囲内だったらしく即答すればもう一度入縄は紙袋を見つめて苦い笑みを浮かべ
「ただ、薫サンは沢山チョコレートを頂いたんだなと見ていただけです」
入縄の見つめる先の紙袋は少し大きめのサイズ感で覗いた時に見えた物はお菓子を詰め合わせたような、どこからどう見ても義理と分かる物だが量として見れば10個は超えていた。
女好きで元とはいえ遊んでいた大内のことだから予想の範囲内だったが気分のいいものではなく嫌味を言ってやろうかともう一度口を開こうとするが
「ああ、貰いはしたが……結花とか学校の先生やら仕事先のやつだけで色気あるやつはひとつもねーけどな」
苦笑混じりに意外な言葉を吐く大内は肩を落としつつも何処か楽しげな様子を見せる
「俺がチョコ好きだからって面白がって渡してきやがって、お返しが大変だった」
文句を言う大内を驚いたように見つめる入縄に気づけば首を緩く傾げて不思議そうにしつつも、入縄の目の前で軽く手を振りつつ
「どうした?」
と聞く大内にやっと我に返ったように入縄が見つめ返すが、大きな勘違いをしていた事に気づけば目尻を若干赤らめさせて口元を隠すように指を持っていくと
「女性からは貰えなかったんですかぁ」
気恥しさを誤魔化すようにからかうような口調でたずねつつも、それを聞いて呆れたような表情になる大内を見つめていた。これも予想外だ
「断ったんだよ。お前が居るのにそんな不義理なこと出来ねーだろ、気持ちをくれる子にもお前にも失礼だろ。本命を受け取るのも渡すのも愛してるやつだけだ」
成程、確かにバレンタインやホワイトデーは人と人との気持ちを繋ぐような催しとして有名なのでこういう考え方もあるのか…妙に納得しつつ大内の気持ちが聞けた所で入縄の胸へと何かを押し付けられた
「という事で、本命」
それだけ言えば大内は逃げるように入縄の横をすり抜けて過ぎ去り、入縄は一拍置いてから胸板に押し付けられたソレを確認した。
紺色の包装紙と黄色のリボンで綺麗に放送されたそれには付箋が貼っておりそこには『いつもありがとう、愛してる』と大内の字で書かれていた。これをどんな顔で渡されたのか一瞬だった為確認出来なかったと気づいた頃にはバタバタと慌ただしい音と数分置いた後に玄関の扉が開く音が聞こえる。
照れ隠しにサッサと渡して逃げたのだなと容易に想像出来る様子に大内の顔がどれだけ赤らんでいるのかが想像出来る……
そんな事を思いついた時には入縄もあとを追いかけるように玄関へと向かった
ホワイトデーは
269年2月14日、兵士の自由結婚禁止政策に背き結婚しようとした男女を救うためにウァレンティヌス司祭が処刑されたが、その1ヶ月後の3月14日、その2人が改めて永遠の愛を誓い合ったとされた愛の日(諸説あり)
※プレゼントの中身は紺色の無地に小さく金糸で「R」と刺繍されたハンカチです。