無人島「無人島に持っていきたいもの?急にどうしたんだ」
リビングで見もしないニュースをテレビから垂れ流しぼんやりとタブレットを見つめていた大内に、学校から帰ってきたばかりの結花がランドセルを下ろしながら近づき尋ねた質問に、きょとりと目を丸くしながら聞き返す
「学校で、クラスメイトが話してた」
なるほど、そう言えば子供がタラレバ話が好きだよなと思い頷くと少し考え
「いくつまで大丈夫なんだ?」
と聞けば意外にも真面目に答えてくれる姿勢の大内に結花は嬉しそうに……無表情のまま隣へと座り見上げて指を三本立てた
「みっつまで」
それもよくある話でタラレバの中でもポピュラーな部類だろう、予想通りの答えにふむと頷けば結花の方を見て
「ナイフ、水質チェッカー、太陽光充電可能の手回しライトの3つだな」
なんとも面白みもなく大人気のない答えを伝えれば、それを興味深そうに聞いていた結花はウンウンと頷いていた
「クラスの子と答えが違う。皆、ゲームとかお菓子とか言ってた」
なんとも子供らしい答えを聞けば、次は大内が成程と頷いた
「確かに、糖分は必須だな」
可愛らしい内容を微笑ましく思う訳ではなく、まさかの同意に我関せずといった様子で1人がけソファに腰掛け本を読んでいた入縄が会話に割り込んできた
「無人島でまで甘いものを持っていく気ですかぁ?」
その様子は呆れたようにため息をついていて2人を見つめれば、今度呆れたような目線を送るのは大内で
「じゃあ、お前は何を持っていくんだよ?」
入縄の方へと目線やれば口元へと指を持っていき考える素振りをするが、いつものなにか含んだような笑み浮かべて
「なんだと思いますぅ?」
と逆に聞き返してきた。
予想通りと言えば予想通りのそれに大内は呆れつつ頭を抱えると、すぐ隣の結花が真面目な顔をして手を上げる
「直ぐに帰れる用のボート」
確かにらしいと言えばらしいが、元々の質問を覆すような答えに思わずツッコミを入れたくなるが、その前に入縄の口が開きニコニコとよく読めない笑みを浮かべたまま
「それいいですね、もし可能でしたらそれにしましょう」
等と言っている。そんなことありなのかァ?と大内が肩を落としていると
「まあ、お話はこれくらいにして…お嬢サンはそろそろ宿題のお時間では?」
と話を強制的に終わらせてしまう。
まあ、長々とするようなものでは無いし宿題の方が大事だと同意し結花が自室へと向かうのを見送れば、本へと意識を戻しているであろう入縄を見るが意外にも此方を見つめたままで大内は少し驚くが、そんな事も気にせず
「先程の質問……連れていく人なら1人で決まっているのですけどねぇ?」
そう入縄は伝えると子供が悪戯をするかのように楽しげに笑い大内の反応を伺えば、気まずそうに目尻赤らめて目を逸らし口元を隠しながら
「ま、まあ…俺も、連れてくなら………いや、お前直ぐに体力無くなりそうだしサバイバル向いてなさそうだな」
甘い空気になりそうになったものの、この男は妙なところでリアリストで直ぐに真顔になってしまった。
そんな大内にそれはそれでイメージ通りだったのであろう、驚きはしないものの至極つまらなそうに唇尖らせわざとらしい子供のような拗ねた様子を見せる入縄は
「失礼ですねぇ…それに、ワタクシは薫サンを連れて行くなんて一言も言っていませんがァ?」
と文句を言いつつも嘘か誠か分かりずらい言い回しをしてふいっと横を向いてしまえば、確かにそうかと大内は頷くものの納得は出来ておらず少し不機嫌そうに眉間に皺を寄せ
「確かにそうだが…俺を連れて行った方がいいだろ、そこら辺のやつよりは頼りになると思うが?」
何処から来るのか自信を込めて聞けば、いつもの事ながら呆れたように入縄がため息を着く
「その自信はどこからくるんですかぁ?」
そう質問を質問で返しても大内は全くブレずに
「そりゃあ、実力があるからな」
としか返さない。2度目の溜息をつきながらも出会いからの月日を考えれば同意するところもあり反論は出来ないものの、それを素直に伝える気は無いらしく適当に「ハイハイ」と受け流して、大内を見るがいつも通りの会話なのもあり此方も適当に流している。
会話も終了して互いに先程までしていたことへと意識をやるが、大内が入縄の方を見ずにポツリと
「まあ、もし…楝が無人島にでも遭難したら…今度は俺が見つけてやるよ」
小声で呟くが、それは入縄の耳に届いたかは定かではない。