Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    はるしき

    倉庫。
    反射的にあげてるので誤字脱字は順次訂正。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 81

    はるしき

    ☆quiet follow

    ゾロカク練習。仲良し。

    ##カク受け

    「ロロノア、ロロノア」
     ちょいちょい、とカクは一人酒を飲んでいるゾロに向かって手招きをする。
     ぐ、と一息で酒を飲み込んだゾロは空になった瓶を口から離すと腰を上げ、カクに手招きされるまま近づく。
    「なんだ」
    「うちのからカステラをもろうたぞ。政府御用達の美味いやつじゃ」
    「カステラ?」
     ふっふ、と目を細め口元を歪めた笑みを浮かべながら、カクは所持していた白い箱を得意げに開ける。
     鼻腔を擽る芳醇な蜂蜜の香りを纏う、茶色の焼き色が美しいと黄金色の菓子が二つそこにはあった。その甘い香りに一瞬眉を顰めたゾロだったが、いそいそとフォークを刺すカクの所作をなんとなしに見守る。
     この年上の男は、ゾロより子供らしく笑い、子供のように戯れてくることがある。
     一度刃を交えた間柄ではあるが、どこでここまで懐かれるようになったのか、ゾロには皆目見当が付かない。
     いまだに戸惑うことはあるが、大分慣れてきていた。
     カクはいそいそと用意していたフォークで柔らかいカステラを器用に切り分け、焼き目が美しいひとかけらにフォークを突き刺し。
    「ほれ、あーん」
     ゾロの口元に突きつける。
     輝かんばかりの笑顔が、眩しい。
     ゾロはなんとリアクションを返したら良いか一瞬戸惑うような表情を見せたが、一分たりとも譲る様子を見せないカクの手の先にあるフォークに齧り付いた。
     口の中いっぱいに広がる甘みと、柔らかい食感。数度咀嚼をした後、ゴクリと喉を鳴らし嚥下する。
    「甘ェ」
    「美味かろう?」
    「酒には合わねェだろ」
    「ブランデーやウイスキー辺りなら合うと思うがのぉ」
     予想通り、甘い菓子ではあった。食べられないほどのものではないが、数切れが限度だろう。眉間に皺を寄せたまま答えたゾロに、きょとりと目を丸くしながらカクはゾロに問う。ゾロは答えなかった。
    「これは珍しいバナナ味のカステラでの、おぬしに食わせてやりたかったのじゃ」
     いそいそと箱の中から別のカステラを取り出したカクの手から、ゾロはフォークをひったくる。
    「お前が食え、好物だろ」
     そのゾロの言葉に、カクはパチパチと瞬きをする。
    「なんじゃ、わしの好物をしっとったのか」
    「どっかで聞いた覚えがあった」
    「わしは言うた覚えは無いぞ」
     多分、と、消え入りそうなほど小さくカクは首を傾げながら呟く。
     どこで聞いたかも、ゾロ自身も忘れていた。ただ、目の前の男は確かバナナとカステラが好物だったと記憶していた。外れてはいないようだった。
     言ったかもしれない、と自信なさげに呻くカクを尻目に、ゾロはバナナ味だというカステラを些か乱暴に切る。カクが先程切り分けたカステラより大きい一切れにフォークを深く突き刺したゾロは、先程己にカクがしたように、カステラを唇に押しつける。
    「おら、食え」
     意趣返しだと言わんばかりのゾロの行動を少し意外に思ったカクは、ゾロの目とカステラを交互に見やり。
    「しょうのないやつじゃの」
     あ、と口を開け、カステラを口に入れる。
     数度噛んでいる間にカクの表情はみるみるうちに和らぎ、口元には自然と笑みが浮かぶ。
    「ん、ふふ。美味いのお」
    「お前が持ってきたやつだろ」
    「おぬしに食わせるために持ってきたんじゃ。おぬしも食え」
    「いらねぇよ」
    「わしが手づから食わせてやると言うとるのにか?」
     再びフォークを奪い返したカクがカステラを一刺し、小さな欠片をゾロの開いた口に突っ込む。
     ガチリとフォークを噛んだゾロは苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべながら、再びカステラを咀嚼した。
    「わはは、形無しじゃな」
    「うるせェな、食い終わったら酒飲むぞ」
    「付き合わせてしもうたからの、いくらでも飲ませてやるわい」
     くつくつと喉を鳴らして機嫌良く笑うカクは再びカステラをフォークで突き刺し、ゾロの口元に突きつけるように運ぶ。
     まだまだ食べ終わらないその甘い菓子をいかにカクに食べさせるか。
     思索を巡らせたゾロだったが、唇にぐいと押しつけられたカステラに勝つことが出来ず、ただ大人しく口を開けるほか無かった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💯💖💯
    Let's send reactions!
    Replies from the creator