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    はるしき

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    はるしき

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    とある街で会ったゾロカク

    ##カク受け

    「あいつらどこに行きやがったんだ……?」
     ゾロは一人、賑やかな街の中心で舌打ちをした。
     長い航海の途中、たまたま立ち寄った街で買い物をすると船員達皆で船を出た。ここまでは良かった。
     皆で行動をしていたはずだったが、雑踏の中、いつの間にか仲間達の姿が見えなくなりゾロは一人往来の中心で渋い顔をしながら周囲を見回していた。 
    「くそ、港はどこだ」
     気の強い航海士が、長くこの街には滞在しない、買い出しが終われば直ぐに出ると話していたことを思い出し、ゾロの中に少しだけ焦りが芽生える。
     置いて行かれることはないが、何を言われるか分かった物じゃない。
     来た道を戻れば良い。ゾロは左へと向き店と店の間の路地に入ろうとする。
    「ロロノア」
     背後から突然名前を呼ばれ、ゾロは反射的に振り返る。仲間の声でも、呼び方でもない。
     キャップを目深に被った、長鼻の男が雑踏の中に一人立ち、ゾロを真っ直ぐ見つめていた。
     よく見覚えがあった。忘れもしない。エニエス・ロビーでの戦いで刃を交えた、麒麟の男。
    「テメェ、」
     生きていたのかと吠え、刀の柄に手を掛けようとした本能の一瞬。瞬きをする間もなく、その長鼻の男はゾロの口を手で押さえる。
     並外れた身体能力は、2年前と変わりないようだ。
    「待て待て、今のおぬしとこんなところで戦う気は無いわい」
     片手でゾロの口を封じ、もう片手で自らの唇の前に指を立て静かにしろというジェスチャーをした男は珍しくその目に焦りを帯びている。
     平和な港町を戦場に変える気は無いらしい。
     口を塞がれた不快感を覚えたゾロは後ずさり、男を正面から睨む。
    「まだロビンのことを追ってやがるのか」
    「ニコ・ロビンか……」
     ふむ、と男は腕を組み、やや下に目線を向け首を傾げる。
     考え込むようなその仕草に、ゾロは警戒を解くこと無くただ睨み続ける。刀にはいつでも手を掛けられる。
    「否定はせんが、肯定もせん。じゃが、今のわしは明確にそれは否定する」
    「あ?何訳分かんねェこと言ってやがる」
     ゆるゆると首を横に振った男の答えに、ゾロは眉間に皺を寄せ訝しむ。
     男は腕を組んだまま、何かを探るように周囲を見回す。時計に目を向けると、少し考えるように瞬きをした。
    「テメェに構ってる暇は」
     無い、と言いかけたゾロの腕を、男は一瞬の隙を突いて掴む。
    「よし、ロロノア。少し付き合え」
    「あ?」
    「こっちに美味い酒を売っとる店がある、わしの奢りじゃ」
    「待て、テメェ何考えてやがる、引っ張るな!」
     ぐ、と男に腕を掴まれたゾロは引っ張られないように足にきつく力を込めたが、ずり、と僅かに引きずられてしまう。なんて力だ、とゾロは内心で舌を巻いた。男の細い腕から想像が付かないほどの力が与えられ、ゾロは危うく足を取られ転びそうになった。
    「喜べ、今日のわしは機嫌が良い」
    「俺の機嫌は最悪だ!」
    「仕方ないのぉ、後で手合わせしてやるから機嫌を直せ」
    「……ロビンが目的じゃねぇなら、テメェの目的はなんだ」
     目的。その言葉が出ると男は丸い目を数度瞬かせ、ふむと唸った後。
    「暇なんじゃ」
    「あ……暇……?」
     歯を見せ笑いながら、答える。
     暇。男の口から出たその言葉に、張り詰めていた自らの緊張が一瞬で解けてしまった。
     男は鼻歌でも歌い出しそうな程機嫌がよく見える。敵意もなく、警戒心もない。まるで初めてメリー号で出会った時のように。隙は無いがどこか無防備に見えた。
     エニエス・ロビーで刃を交えた姿が本当なのか、今目の前で緩みきっているこの姿が本当なのか。
     ゾロは混乱していた。
    「ロロノア、甘い物は好きか?鈴カステラというて一口で食べやすいカステラがこの先の出店で売っておるんじゃ。これがまた絶品での」
    「いらねぇ」
    「ふむ、甘い物より酒の方が好みか?ならば一等美味い酒を奢ってやろう、ちょっと待っておれ」
    「なっ……!」
     ひらりと軽やかに身を翻し、男はゾロの元からあっという間に離れ一人酒屋へと入っていく。
    「なんなんだあいつは……」
     一人残されたゾロは力なく呟く。このまま逃げるか。それも釈然としない。ゾロは腕を組み憮然とした表情の侭、男が消えた酒屋を睨んだ。
    「なんじゃその顔は」
     酒屋から出てきた男はゾロの表情に眉を顰め数度瞬きをした後、手にしていた酒瓶を投げて渡す。
     落とすわけにもいかず受け取るほか無かったゾロは片腕で酒瓶を取ると、胡乱げな目を男に向ける。
    「さすがのわしでも未開封の瓶に何も仕込めん、案ずるな」
    「得体の知れねぇ奴から渡された酒なんざ飲む訳ねぇだろ」
     ゾロの言葉を受けた男は、きょとりと目を丸めたが、みるみるうちに表情をまた和らげる。
    「わはは、それはわしも同意見じゃ」
     嫌そうに顔をしかめながら酒瓶を男に突き返そうと腕を伸ばすゾロの手に自らの手を重ね、男は心底楽しそうに笑いながら押し返す。
     これもまた、ゾロに勝るとも劣らない力だった。このまま押し合いを続けていても意味が無い、と、ゾロは諦めた。
     男はゾロの腕の力が緩んだことを察すると手を離し、くるりと踵を返しゾロに背を向け、ちらりと肩越しにゾロを見た後に歩き出す。
     着いてこいと言う意味だろう。先程手合わせを、と口走っていた。ゾロの中の血と闘争心が僅かに疼く。
    「相変わらず愉快な麒麟になってんのか」
    「おぬし、まだそれを言うか。麒麟の何が悪い」
    「悪くはねェよ、愉快なだけで」
     男はたまに肩越しにゾロを見やりながら、唇を尖らせる。
    「まったく、ここが戦場じゃったらとっくに嵐脚を打っておったわ」
    「戦場にしてやってもいいんだぜ?」
     ゾロの言葉、腕から、刃のような冷たい殺気が漏れる。
     少し前を歩く男はその殺気を背に受けながら、僅かに空を仰ぎ喉の奥で笑う。
    「それはやめておけ。おぬしの仲間に迷惑がかかろう」
     男のその言葉に、ゾロはぐっと言葉を詰まらせる。
     何を言われるか、分かったものじゃない。
    「ふむ……時間切れじゃな」
    「っ!」
     街を抜けた頃、男はぽつりと呟く。チリ、と僅かに地面の砂利が跳ねる。
     ゾロが身構えた瞬間、男は地面を蹴り屋根の上へと飛び上がる。
     特殊な技を使っていない、男自身の身体能力での跳躍だった。
    「こんな事を海賊であるおぬしに言うのも可笑しく、わしの立場からは到底許されぬ話じゃが」
     屋根の上に立った男はふと表情を緩め。
    「息災でな、ロロノア」
     に、と歯を見せて笑ったその姿は到底敵には見えないほど、敵意の欠片も無くあどけなかった。
     帽子の鍔に指を掛けた男は口元を僅かに緩めたまま、屋根を蹴り歩いてきた方向へと屋根伝いに跳び、姿を消した。
    「なんなんだあいつは……何が目的だったんだ……」
     一人残されたゾロは、男が消えた方向へ目を向けたまま呆然と呟く。
     慣れた潮風が鼻腔を擽る。風の吹く先に目を向けると、港に見えた。見覚えがある。ゾロは一人、歩みを進める。
    「あ……港はここだったのか?」
     少し歩いた時、己が乗船するサニー号が見えてきた。
     日差しを受けて輝くサニー号の甲板に、いくつかの影が見える。
    「あー!ゾロが帰ってきた!」
     コロコロと転がるような声がゾロの鼓膜を刺激する。
     チョッパーが身を乗り出しながらゾロを指し、嬉しそうに声を弾ませていた。
    「もう出航の時間よどこ行ってたの!」
     ナミは腰に両手を当て呆れたようにゾロを叱る。
     ゾロは返す言葉もなく、ただ気まずそうに口をまごつかせることしか出来なかった。
    「でも一人で戻ってこれたの、すげぇじゃねぇか」
     フランキーの揶揄うような言葉に、ゾロははたと気がつく。
     まさか、あの男は。
     少し先を歩き時折肩越しにゾロを見ながら歩いていた男とは。
     己を仲間の待つ船まで導いたというのか。
     ゾロは反射的に、来た道を振り返る。当然、あの男はもういない。いるはずがない。
    「なんだそりゃ、随分上等な酒じゃねぇか。買ったのか?」
     サンジが紫煙をくゆらせながら、ゾロの腕の中にある酒瓶を指さす。
    「あー……」
     さて、何と答えるべきか。
     ゾロは酒の瓶を片手に抱えたまま、空いている手で頭を掻き、宙に視線を彷徨わせた。
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    親知らずが痛い皋のためにうどんを柔らかめに茹でる昏見
    #お題ガチャ #男ふたりの色んなシーン https://odaibako.net/gacha/1739?share=tw
     いつも通り昏見は皋宅に忍び込んだ。
     そしていつも以上にむっすりした表情の皋にどうしたのか、と聞いて、返答が返ってきたとき、昏見は泣きそうになってしまった。
    「おひゃしらつがいはい」
     信じがたい滑舌である。
     あの皋所縁が!
     奥歯に物が挟まったような言い方って実際にあるとこんなにフニャフニャなんですね録音して逆タイムカプセルに詰め込んでイケイケだったころの所縁くんに聞かせてあげたいですきっと泣いて喜びますよ、と返してあげると、皋は不機嫌そうな顔をしたけれど何も言わなかった。
    『おひゃしらつがいはい』
     昏見の最新式・皋翻訳機だからこそ意味が分かる。つまり、
    「親知らずが痛い」
     ということである。
    「うーん、親知らずって懐かしいですね。私も昔は毎日屋根の上に投げてましたよ。痛いって事は変な生え方をしているんじゃないですか? はい、あーん」
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