灰色の男2空は雲翳で、街は薄暗く湿った空気を纏っていた。
ふと人の気配に見上げていた顔を下ろした。
そこには小さな少女がぱちぱちと大きな目で男を見上げていた。
「おじさんもしかして雨男?」
「どちらでも良い」
男は短く返す。そっけない返事だったが相変わらず少女は好奇な瞳を男に向けていた。
「じゃあ、お願いしたら雨を降らせられる?」
「そんな力はない」
「そっか」
短く残念そうに少女は両手を後ろに回し、いじけた様に地面を蹴った。
「雨を降らせたいのか?」
「うん、雨を降らせたかったの」
理由には興味がない。なにしろ出来もしない。男はそれ以降口を開かず、
そのまま少女を見ている。
「理由くらい聞いてよ!」
「すまない。興味がなかった。」
少女は頬を膨らませ地団駄を踏んだ。
「もー!そんなだと、奥さんに嫌われちゃうよ!」
少女は男の左手薬指にはめられたメッキの剥がれた指輪を指差した。
男の指がピクリと動く。男はそのまま眼球だけを左手に動かした。
その顔は依然無表情のままだ。男は少女の前に膝をつく。視線を合わせた。
「クリオネ教会はらどちらだろうか」
「ヘカテさんのお知り合い?家族とか?だからそんなに大きいの?」
男の身長はヘカテには及ばないが190近くある。
ヘカテの知り合いであるなら驚きはするだろうが大きい体躯は見慣れているのだろう。
関心はあれど畏怖の感情はなかった。
「初めて会う。」
「ふーん」
少女は少し顔を傾けて、思案した後
無垢な笑顔を向ける。
「いいよ。案内してあげる!」
少女に促されるまま、
男はなんとも自分に都合の良い展開に感謝し、少女の背を追いかけた。