灰色の男⑧目が覚めて真っ先に認識したのは、白い部屋に消毒液とか、薬品の匂いだった。
重い身体を起こしてヘカテは呆然と周りを見渡した。
ベットの脇にロイドがあちこち傷の治療痕が痛々しい様子で椅子の上でこくりこくりと寝こけていた。
慌てて起きようと身体を起こすも、腹に走る激痛に軽く悲鳴をあげ、ベットに倒れ込む。
「起きたか。」
短くそっけない声がした。セリカがむぅとした顔付きでヘカテを見ていた。
「セリカちゃん!?」
「ロイドが起きるぞ。」
その言葉にに思わず手で口を抑える。セリカはその様子に呆れたようにふんと鼻を鳴らした。
「あの傷で生きてるなんてバケモンだよってディーゼルが言ってた」
「むう」
「ディーゼル様は?」
「さぁ、残り仕事とか。」
「仕事...」
「ディーゼルがお前を助けたのは仕事だからに決まったんだろ。エルツに頼まれたんだ」
「なるほど」とヘカテは長い人差し指で顎を掻く。
セリカは依然拗ねた様な口調で、窓の方へ視線を向ける。
「今、外中人形だらけで街中大パニックだ」
その言葉にヘカテは無理に身体を起して窓の外を確かめた。目で確かめて、
街の喧騒がより一層確かなものになる。
大量の機械人形が街中を覆っていた。
それはまるで、カマキリの子供の羽化のシーンによく似ていた。人形ほ肢体が重ね重ねに街の路を塞いで、ゾロゾロな長い手足を絡ませている姿があった。
その光景に、見慣れた街が侵食されていく様にヘカテはただ、息を呑んだ。