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    くこ。

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    くこ。

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    安の人物設定ベースは景(+萩)、という設定の。
    そしかい後、景生存、再会後景風です。
    (現時点)4部作の3つ目にして一番長いです。
    2023/04/15


    景の「死後」、景がかけがえのない降と風が意識的に無意識的に共依存していたり病んでいて。故に景生存だよ!ってなってもそう簡単には戻らなかったりするよね。そんな景風です。でもこのあと景は風は勿論降のこともよしよしするんだろうなって…

    #景風
    jingfeng

    いついつまでもあなたを「……豪華…すぎないか……?」
    「退院おめでとうございます!…ということで。いいじゃないですか」
     テーブルには、俺が作った料理が並ぶ。大皿も小皿も並べ品数、量と二人の一食分としては確かに多いだろうことは作った俺だって理解していた。帰宅後テーブルと俺を見てポカンとする最愛の人、風見さんの姿にいささか羞恥心が芽生えていたたまれなくなりそうだ。けれど仕方ないだろう。
    「だって、オレ。この日を楽しみにしていたんですよ」
     少し拗ねたようにいうと、風見さんの口がきゅっと結ばれて視線が落とされた。
    「うん。俺も、……楽しみにしてた。ありがとう、諸伏」
     あぁ、その桜色。今食べてしまわない俺のこと、褒めてもいいんですよ。
     
     なんて。そりゃあ、浮かれるものだ。

     あの組織が壊滅した。
     果てのない戦いに終止符がついた、というところだが潜入捜査官としてアジトに入るもNOCだとバレ自害を図るも寸でで匿われ表向きは死人となった。俺の生は誰にも、そう長年の幼馴染で親友の零(ゼロ)も上司で恋人の風見さんすら、知らされず壊滅までの月日を過ごした。そうして、すべてが終わった後のこのこ顔を出した俺を。みんな、歓迎してくれた。風見さんは満身創痍な身体でほろほろと涙を流し迎えてくれた。正直、俺のことなんて過去の人になっているのではないかとか、俺が死人ならそれが当然だとか。色々考えては不安になってはいたのだけれど。その姿に自分も安堵や喜びやぐちゃぐちゃに混ざり合った感情が溢れ、風見さんを抱きしめた。
     そして。
    「こんな仕事だぞ。……つくっているわけないだろ」
     俺と『死別』した後も、ずっと俺のことを想って新しい恋なんてしていないと言う風見さんに沸いた歓喜を、どう言い表わせばいいだろう。俺が死人なら。天だとかそういうところで風見さんを見守る存在となってしまっていたのなら、きっとこの欲は相応しくなくて俺のことなんて思い出にでもして新しい人生を生きて幸せになってくださいだとか。そういうことを願っていたのかもしれない。願わなければいけなかったに違いない。けれど現実には俺は生きていて、「待っていてくれて、ありがとございます」と嗚咽を漏らしたのだった。
     潜入捜査官としての任務にあたる際に住所も私財を棄て、『死別』後はなおのことこの身ひとつとなっていた俺は、復帰後再び表舞台の人として身分を作り。退院した風見さんの家に転がり込んだ。
    「この功労で相当もらっただろうに」
    「なら、落ち着いたら広い家に二人で越しましょう」
     嘆息をつく風見さんに提案すると苦笑され、どちらかというと肯定という返答に調子づく……のだったのだが。事後処理に追われたまにある休日もそれどころではなく二人揃って多忙の日々を過ごすことになり、ようやく今日、俺が早上がり風見さんも定時上がりからの明日からの二人揃っての連休をもぎ取った。持つべきものは理解ある職場だとはよくよく得心したものだった。
     風見さんより早く帰宅できる俺は以前来た時と不思議と変わっていないスーパーに寄るとこれでもかと食材を買い込み、冷蔵庫や棚を満たした後調理を始めた。まともに帰れる日すら少ない日々で料理なんて久しぶりだけれど。だからこそきちんとした食事を二人でしたかった。風見さんにはとにかく早く帰ってきてほしいと伝えたから時間は少ない。潜る前に風見さんが美味しいと言ってくれたもの、それ以外でもきっと好きそうなもの。思い描きながら手を動かした。だから。帰宅した風見さんの輝きは俺の心を満たすには十分なもので、部屋着に着替えるように促しながら口元がにやついてしまうのだ。

    「「いただきます」」
     
     ふたり揃って席について、手を合わせて。
     頬張る姿に頬が緩み、指摘され自分も箸に手をつける。うん、美味しくできた。一応味見もしているし我ながら当然なんだけど、正面には風見さん。その時より断然美味しいと感じる。食事とはその内容もさることながらどんな状況で食べるかも重要だという。そんなことも感慨深く心にしみいってしまう。
    「相変わらず、諸伏は料理が上手いな」
    「ありがとうございます」
     褒められるのは何度だって嬉しい。好きな人からなおさらだ。
    「はぁあ。どれも美味しくて食べすぎてしまいそうだ」
    「いいじゃないですか、食べすぎても。明日は休みですし」
     空になっていた風見さんの茶碗を勝手に取り、量を伺いながらよそう。きらきらと輝く白ご飯。おかずをなんとも豪勢に用意した分、これは本来の味のみだ。手渡すと「悪い」というように眉が下げられ大したことないと微笑む。
    「むしろ、風見さんは細いんですしきちんと食べないと。大丈夫です、運動は欠かしてないですしすぐ消費されますよ」
    「……なんか、お前が言うと不純に聞こえるんだが……」
    「っは。そんなつもり、なかったんですよ…?」
    「揃って連休取ったのに、か?」
    「もう!風見さんってば。そんなのもちろん…というか、っ。風見さんも、そのつもりなんですね」
     風見さんは薄く頬を染め上げて。目を細める。
     嬉しい。期待に応えますからね。
     ついでに自分の分もよそおうと茶碗を手に取った。
    「っん! これもうまい! 前にも作ってくれたよな」
     え。
     小鉢を手に弾む声にしゃもじを持つ手が止まり、風見さんの目を見てしまう。
    「それ、前に風見さんに作りましたっけ……?」
     たあいもないマリネ。付け合わせのひとつ。そりゃあ俺の記憶違いかもしれない。けれど、ちょっと自信のあるそれをいつかこの次の機会と思っていたらその機会もなく別れてしまったのだと果てのない闇の中で思っていたもののひとつだ。会えない間またその日が来たらと叶うかすら不明瞭な中、幾年も夢想した。そのひとつだ。
    「え? 諸伏、作ってくれただろう。あぁでもその時はセロリが入ってたんだよな」
     セロリ。
     むすりと口を結んだ風見さんは「これは入っていないから嬉しい」と緩め続けてくれるのに、さっきまでのように心が躍らない。口の中が乾く。
    「入れるわけないです。風見さんが嫌いなものは最初にちゃんと聞きましたもん」
     一度たりといれたことはない。別にひどく多いわけでもなかったし、せっかく作ったものがアレルギーや嫌いな食材が入っているからと食べてもらえなかったなんてそんなナンセンスなことはしたくない。
     ただの勘違い。そんなことはよくあることだ。
     そう思うのに、なんだろう。嫌な予感がする。
     炊飯器は閉めしゃもじはしゃもじ受けによそった茶碗も自分の席において。唇を尖らせいかにもな可愛い後輩を装って言う。こんな仕草、未だ有効だろうか。ぎこちなくなんぞ、なっていないか。
    「そう……、でも……半年前……… ぇ」
     以前、俺がさりげなくだったり単刀直入に聞いた時のことを思いだしてくれたのか。どうにか風見さんとの仲を少しでも深めようと得意なスキルはこれでもかと活用したあの遠い日々。懐かしくて、でもその気持ちは今でも変わらない。

     そんな風見さんの目が大きく見開かれた。カタン、箸が滑り落ちる音が不自然に響く。
     そう。
     半年前。

     俺は。あなたの傍にはいなかった。


    「零(ゼロ)、ですかね? 降谷零。あいつに料理教えたのオレなんですよ。あいつね、さすがですよねなんでも吸収が早くて、オレの作る味覚えちゃったんですよ」
     零に作るならセロリを入れた。だって零はセロリが好きだから。それを美味いといったあいつはそのまますっかり覚えたのだ。
     そんな幼馴染の連絡係に恋人がなった。立場上親しくなれる人も多く作れない中、公私交えた話もすることもあるだろう。
     だから。幼馴染が恋人になんとはなしに料理を振る舞った、そういうこともあってもおかしくないのだ。自身とそして風見さんを納得させようと俺は、意識してにこやかに、くるくる言葉を紡いだ。
    「オレの作るものとすごく似てるから風見さんも勘違いしちゃったんですよね! っ、風見さん!!?」
     風見さんは手を口に入れ奥の奥まで入れようとする。
     えずこうとしている。
     気づいた俺は駆け寄って跪いた。
     けれど、風見さんはそこまで到達させる前に、ぱたり。腕を落とした。かたかたと震え、焦点が定まらない。
    「ち、が……! っ、今食べた物を吐きたいわけじゃない……ちがうんだ……」
    「はい、大丈夫です」
    「もろふし、が、作って、くれたもの……」
     震える手を取り、視線の高さを合わせる。
     なんで、こんなに風見さんは動揺しているのか。挙動のおかしさに背中に汗が滲むが、俺まで取り乱してはいけない。そう思うから、努めて優しく声をかける。
    「もろふし、っ。ちがうから。おれは、ずっと。もろふしが、好きで……」
    「ありがとうございます。嬉しい。俺も、ずっと風見さんが好きです」
     呼吸が浅い。そして激しい。そんな過呼吸で絶え絶えになる中で必死に伝えてくれる。
     何が、風見さんをこんなに切迫させている?
    「っ! 〜っ、」
    「苦しいですよね。大丈夫です」
     宥めて、頬から首へと撫でる。
     昔。俺も似たような発作に襲われることがよくあった。不安や恐怖、緊張といった強い精神的なストレスが引き起こすそれは、一般的に15分から30分ほどで治まるというが。動悸、胸の痛み、頭痛やめまい、意識障害、さらには、唇や手足のしびれ、筋肉の痙攣や硬直などが起こることもありそれにより当人がパニックを起こすとさらに悪化する。
    「ねぇ、風見さん。俺のこと見て、」
    「……、」
    「息を吐いてください。ゆっくり。吐いて、吐いて吐いて」
     そんなとき周囲の人ができることは安心させること。目線を合わせたまま少し腰を落とし、椅子にかけた風見さんが前屈みになるように促し語りかける。
    「吸って、吐いて、吐いて、吐いて、」
     背中、腰と手は下り、繰り返し、繰り返し促すうちに段々と風見さんの呼吸が落ち着き、目に生気が戻ってくる。
    「…良かったです」
    「ありがとう…」
     少し掠れたささめくような声に微笑んでそのまま少し、強く腰を引くと風見さんは目を丸くして、そうしてむず痒いとでもいうように口元を緩ませた。
    「ね、」
     伸ばされた腕が俺の頭を抱いて、脚を崩し下りてくる人を迎える。
    「裕也さん、」
    「ぅん、」
     首に頬を寄せてくる可愛い人に一声。小首を傾げる少し痩せたその広い額に唇をひとつ。
    「眼鏡、外していい?」
    「外して」
     願望は要望に変えられ慎重に外したそれをテーブルに置くと、ことさら体温が近くなった。
     今いつもより垂れた目元。
     すっと通った鼻筋。
     そして、小さくて薄い唇。
     その一つひとつにキスをして、そのまま幾度も下りてきたそこを啄んでいると後頭部が撫でられ腕の力を感じる。吐息をもらすように開かれた口に招かれるままに舌を忍び入れると歓迎しているとばかりに舌裏を撫でるように絡められその慎ましくも健気な人を執拗に愛していく。舌をなぞり上顎を擽って溢れる唾液が二人分、混ざり合っていく。
    「っあ…」
     離れる際を伝い繋ぐ糸は惜しむ心を表すように長い。
     風見さんの喉がこくりと動き二人分の愛を嚥下する様にごくりと喉が鳴る。先程まで青白くまでなっていた肌が上気して、風見さんが望んで、そうしたのが俺だということがたまらなく心地よい。
    「ねぇ、風見さん。今日はこのまま…しません?」
    「は…ご飯は…」
    「大丈夫です。どれも冷めても温めて直しても美味しいですよ」
     腕に閉じ込めたままなんてことないように提案する。
     否。いや、それそのものは正しい。
     本当は俺だって、出来立てを心ゆくまで食べてもらうつもりで作っていた。

     けれど。
     頭の中のどこかが未だ警報を鳴らし続け、この人を一刻も早く俺のものにするのが先だと下す。あなたの諸伏景光(恋人)は諸伏景光(俺)なのだと、目の前にいる唯一無二の俺なのだと。あなたの身の内を巣食う何かから救わなければと、ただただ思う。

    「それにこの状況、あんまりにも据え膳です」
    「まぁ…それは…お互い様、だな…」
    「でしょう!」
     そんな焦燥感なんておくびにもださず甘えて強請って、逡巡しつつも頷かれた応えに破顔する。

     腰を抱いて寝室に連れ込んで。
     溶かして溶けて。
     あなたの熱にとろめかされる俺の熱さをその身に刻んで呼び起こして。
     求めて求められて。
     愛していく。

    「、景光…好き…」
     俺がいない間に何があったかなんてわからない。
     でもそれを問うて暴くのは今じゃなくていいし、そも。この人に問わずに突き止めていくことはできるはずだ。
     離れていた間もずっと俺だけを想っていたと真心をくれる人をもう二度と、悲しませることのないように。心に誓う。
    「っ! 俺も! 大好きです…!」





     あなたを幸せにするのは俺がいい。


    染め上げて恋情 恋焦がれて発情
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