赤ずきんちゃんは狼くんに食べられたい❤親の転勤により、御伽学院に通うことになった転校生・大神零。彼は狼族の出自を持ち、その狼のような優雅な姿勢と鋭い眼差しで、周囲を圧倒していた。一方、転校そうそうに、彼は半ば強制的に、ビッチと有名な噂の赤ずきんこと、赤井林檎と出会う。彼は、自由奔放な性格と美貌で、男子生徒たちから熱狂的な支持を受けていた。
しかし、零は彼の虚栄心と傍若無人な態度に対して、全く興味を示さなかった。彼は自分自身の目的を追求するために、周囲の噂話や人間関係には一切興味を持たなかった。
そのため、彼は周囲からは冷たく見られることもあったが、彼自身はそれを気にすることなく、淡々と学校生活を送っていた……。
「おい! 起きろよ!」
突然の大声と共に体を揺さぶられ、零はゆっくりと目を開ける。目の前には、一人の少年が立っていた。
(あれ? ここはどこだ?)
まだ眠気が残る頭を振りながら、零は周囲を確認する。どうやら自分は教室にいるらしい。だが、自分の席ではないようだ。
そして、机の上には教科書が置かれている。
(あぁ……授業中か)
教師の話を聞き流しながら、零は自分が眠りに落ちていたことに気づく。
ふと横を見ると、隣の席に座っている少年――赤井林檎の姿があった。彼は頬杖を突きながら、退屈そうな表情を浮かべている。
「やっと起きたか」
林檎は零が起き上がったことに安堵すると、小声で話しかけてきた。
「……なんですか?」
「いや、お前が起きるまで暇だったから、寝顔を観察してたんだ」
林檎の言葉を聞いて、零は少しだけ眉間にしわを寄せた。そんな彼の様子を見て、林檎は慌てて弁明する。
「別に変なことは考えてないぞ! ただ、お前って本当に男なのかなって思っただけだ」
「……どういう意味ですか?」
「だってお前、すっげぇ美人なんだもん」
「…………」
林檎の率直すぎる言葉を聞いた瞬間、零の顔つきが変わった。無言のまま立ち上がる彼を見て、林檎は慌てる。
「え!? なんだよ! 怒ったのか!?」
「違いますよ。トイレです」
「そっか……」
林檎がほっとしたように息をつくと、零は教室から出て行った。残された林檎は再び頬杖を突きながら、窓の外を見る。
「あいつも可愛い顔しているけど、中身はオオカミだよな……」
零が出ていった後の扉を見ながら、林檎はぽつりと呟いた。
その後、零は何事もなかったかのように教壇の前へと戻る。その様子を見て、林檎は胸を撫で下ろした。
彼が戻ってきたことを確認した教師は、黒板に文字を書き始める。その様子に気づいた生徒達は、視線を前に向けた。
「じゃあ、続きを始めるぞー。えっと、どこまでやったかな……」
教師の声を合図にして、再び授業が再開された。
その後も何事もないまま時間は進み、チャイムが鳴ると同時に授業は終了した。
「はい、今日はこれで終わりだ。みんなちゃんと復習しておくんだぞ~」
教師はそう言うと、教材を持って教室を出て行く。それを見た生徒たちは、一斉に立ち上がり、帰り支度を始めた。
そんな中、零は黙ったまま、鞄の中を整理し始めた。教科書をしまい、筆箱を取り出す