悲しいかもしれないロマ普のお話珍しい容姿を持った子供がいた。光を受けてキラキラと輝く銀色の髪にガーネットのような紅の瞳を持つ子供だ。
ある人はそれを神の使いだと言い、ある人は奇跡だと言い、
またある人は悪魔だと攻撃した。老人のそれのような廃れた灰色の髪だと言った。血の色をした残酷な目だと言った。
その少年は不幸にもその少数の人々に罵られ、殴られ、ついには命を落とすこととなってしまった――
「……ケ・バッレ」
いつものように寝坊してしまったロヴィーノはそう独りごちた。朝からヴェーヴェーと騒ぐような弟とは離れて今は1人で暮らしているロヴィーノはあれほどうざったかった弟にもあの頃はだいぶ助けられていたんだなと今更になって思う。それはそうとしてまずは会社に遅れないように早々と支度をする。もはや余裕のある朝など久しくなってしまった。多少遅刻には寛容な会社ではあるがそう何回も許してくれるほど甘くは無いのだ。最近は何か言われることこそないものの、周囲の視線は段々ときつくなっているのだ。今日こそは遅刻しねえ…いや出来ねえ!と思いながら数年ぶりに本気を出して走った。住んでいるところからそう遠くないからと出勤手段に歩きを選択してしまったのでロヴィーノ少しだけ後悔した。
「くそっ…こんなことなら車買っとけばよかったっ」
昨日の時点で上司の顔がものすごく怖かったので今日こそは怒られる!と若干涙目になりながら走っていると、いつもポツンとある公園に銀髪の中学生くらいの少年がブランコの柵の所に1人で座っているのが見えた。必死に走っていたのでただの見間違いかもしれなかったのだが、ロヴィーノの脳裏には妙に焼き付いて離れない光景となった。
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なんとか無事に会社に着き、叱られるのを防いだロヴィーノは、ほっとしながら仕事に取り掛かる。学生だった頃が懐かしい。仕事というものの面倒くささを舐めていた。デスクに向かってなかなか進まない仕事にため息をつくとふとあの公園の少年のことを思い出す。随分と寂しそうで妙に気になった。さすがに居ないだろうけど仕事終わりにまた見てみるか、と思いロヴィーノは再び進まない仕事に取り掛かった。
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「お疲れ様でーす」
「お疲れ様ー」
やっと終わったぞ…と思いながらロヴィーノは帰路につく。朝見た少年はまだいるのだろうか?さすがにいねえよなと思いながらも何故か直感はまだあそこにいるぞと囁きかけてくる。妙な感覚に引き寄せられながらロヴィーノはいつもゆっくりと進む道を急いだ。