死後49日、あなただけと一日目
ピピピピ…ピピピピ……
目覚まし時計がなって目が覚める。今日は午後から仕事があるが、早めに起きたい気分で7時にセットした。昨日夜遅くまで起きていた訳でもないから睡眠時間がきっちりと取れているし目覚めはよかった。いい気分だと柄にもなくシャーっとカーテンを空けて朝日を浴びる。とても気持ちのいい朝である。
あることに気づくまでは───
「おはよ、めいちゃん」
家にいるはずのない声。しかし愛してやまないその声が突然背後から聞こえて驚いて振り向くとそこには、
半透明になった、幽霊みたいな自らの愛する恋人であるGeroがそこにいた。
「っ!?え、え……!?Geroさん!?どうしたんですか!?」
彼が自分の部屋にいた事にも、彼が半透明でいることにもとにかく一瞬で頭がパンクしてしまって疑問を吐き出すことが出来なかった。その様子にGeroはそんな驚くことか?と可笑しそうに笑うが次の瞬間には哀愁の漂う静かな笑みを顔に浮かべてめいちゃん、と呼びかけた。
「は、はい、なんですか?」
「なんも説明できへんくてごめんな。俺がここにいる理由も、俺の体がこうなってる理由も、後で言うから、今はなんも聞かんで、俺ん家来てくれへん?あ、先の言うとくけど残念ながらというか幸いというか、今ここにいる俺はめいちゃんの幻覚じゃあらへんよ」
冗談を含めた声で、しかし悲しそうな表情は変えないで言う彼。瞬間背筋が凍ってしまいそうなくらいの冷たい嫌な予感がめいちゃんを襲う。状況から推測できることに気づいておながらも考えることを頑なに放棄して、急ぎ気味に支度を済ませる。はやくGeroさんに抱きつきたかった。一刻でも早く安全を確認したかった。
そうやって不安に表情を揺らしながら支度をする目を見て、Geroは瞳を静かに揺らした。愛おしくて堪らぬ恋人に、これから酷く辛い現実を突きつけなければいけないのだ。めいちゃんの悲しむ顔は見たくない。それでもこうでもしないと気づかれないかもしれないと思ったのだ。