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    ※🖤くんしか出てきません
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    Pleasure boat-Synodic month 1話「To rebirth」A面「お前、もう要らねぇ」

    その一言が聞こえた直後に目を覚ます。

    "また''あの夢だ。

    あの日の夢を見たのはこれで5回目。

    見慣れてしまったはずなのに、夢から覚めた時にはいつも冷や汗をかいていて。

    受け入れた現実のはずなのに、いつも胸の奥に痛みを感じる。

    焦ることも悲しむことも、もう無いのに。

    俺はもう追放されたんだ。

    全て終わったのだ。

    「...。」

    元より歌唱力が優れていた訳でもなかった俺がなぜヴォーカルを任されていたのか、今となっては分からずじまいで。

    結局、後味の悪い夢を見続けている。

    Rebirthはもう新しいヴォーカルを見つけたのだろうか。

    それとも既存メンバーが務めているのだろうか。

    「アイツ、元気にしてるかな...。」

    未練がましいことに、以前所属していたバンドのことばかり考えてしまう。

    出来るのなら、全て無かったことにしてしまいたい。

    歌が、声が、誰にも届かなくなった、俺はどうすればいいんだ。

    いるなら助けてくれよ神様。

    なんて、都合の良い偶像に頼ってしまいたくなる。

    二度寝する気にもなれず、ベッドから起き上がった。

    リビングは静まり返り、俺の足音だけが響いた。

    ソファに座り込んで、時計に視線を移す。

    時刻は丁度午前5時。

    学校へ行く時間にはまだ早い。

    スマホの電池は52%。

    そうか、昨日も寝落ちしたのか。

    充電しようと、スマホを手に取ったその時液晶に文字が浮かび上がった。

    「不在...着信...」

    画面ロックを解けば、通知が雪崩込んできた。

    電話、SMS、DM、LIME...。

    一体誰が

    心当たりも無く、ただ興味本位で着信履歴を見た。

    俺は固まった。

    今ここで、氷漬けにされたかの如く。

    その電話番号には見覚えがあった。

    Rebirthのメンバーのものだ。

    メッセージも、全てメンバーから送られたものだった。

    本当は恐ろしかった。

    でも、興味がはるかに勝っていた。

    メールを開き、一番先に飛び込んできた文字に俺は目を疑った。

    『件名: ごめん
    あの時は言いすぎた。
    直接謝りたいんだ。
    頼む学校来てくれないか』

    「なんで」

    その一言が脳を埋め尽くすばかり。

    あの日以来、俺は学校に行っていない。

    学校に行けば、Rebirthのメンバーに会ってしまうのだ。

    こっちは合わせる顔がないのに。

    会いたくないはずなのに。

    気づけば体は動き出していた。

    この身一つで、家を飛び出した。

    体が心を追い越して行く。

    校門の前に佇む4人組と目が合った。

    すぐに逸らしてしまいたくなったが、グッと抑え込んで。

    一歩一歩、足の震えを感じながらメンバーに近づいていく。

    ギター担当
    『ごめんなさい、あんな言い方しか出来なくて。』

    あんな言い方どういうことだろうか。

    全く理解出来なかった。

    ドラム担当
    『全部キミの為を思ってたんだけど...』

    手いじりをしながら、物を言うくせは相変わらずのようだ。

    ベース担当
    『玄はこんなアマチュアバンドにいるべき人間じゃないって思った。玄の歌声を初めて聴いた時に。』

    急な展開に話を整理できず、思わず首を傾げた。

    キーボード担当
    『俺らの実力じゃ玄の歌声を生かせない。そう思った。でもお前俺らのこと大好きじゃんか』

    俺の歌声が...今まで生きて来た中で、家族にすらそんなことを言われたことは無かった。

    メンバーがそんなことを思っていたなんて知る由もない。

    ギター
    『だからいっそあなたに嫌われてしまえと思ったんです。』

    その後も、メンバーの告白は続いた。

    要約すると、メンバーは俺の歌声に才能を見出したがハッキリと言えず俺に嫌われることで俺をバンドから外れるように、そしてもっと実力のあるバンドに移籍させようとしたらしい。

    ドラム担当
    『ぼくらのこと嫌いになってくれた?』

    メンバー全員の視線が一斉に俺に集まる。

    答えは決まっている。

    「嫌いになんてならないけど。」

    そう小さく呟くとメンバーの目が大きく開かれ、数秒後には目の前が見えなくなっていた。

    苦しいほどに、強く抱きしめられた。

    頬に涙をつたらせるメンバーの背後から登る朝日の眩しさに勝る光を俺は見ることができるのだろうか。

    明けない夜はないという言葉はどうやら本当らしい。
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