【読切ドラロナ】tocană specială とある静かな満月の夜。ドラルク城にて。
「今日は君が好きな赤身肉が手に入ったから、私の得意料理であるシチューをこしらえてみたよ」
さあスプーンを持ちたまえ。
おかわりはいっぱいあるから、おなかいっぱいになるまで食べるといい。ただ、今日の肉は、かなり脂肪分が少なくてね。よくよく煮込んだのだけれど、硬かったらすまない。あとクセの強い香りがするから、いつもより香辛料を効かせてみたのだよ。
「どうかな? 退治人くんのお口に合うといいのだけれど」
そう言いながら、シチューの入った皿を満面の笑みを浮かべながら俺の前にサーブした痩躯の吸血鬼は、さあ召し上がれと促す。
俺は無言で皿を見下ろしつつ、机の端に置いたスマホが、さっきからずっとひっきりなしに通知音を鳴らし続けていることに気づき、視線を向けた。
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