爆発級のトキメキです!!「はぁ?吸血鬼、君のトキメキと連動するメトロームって何だよ」
「いや、私が聞きたいくらいなんだけど…うーん、ツクモ吸血鬼の一種らしい」
高等吸血鬼であるドラルクと退治人であるロナルドはソファーに座りながら、目の前の段ボールに収まっていた茶色のメトロノームを胡散臭げに見つめた。
依頼人からバレンタインにロナルド様にプレゼントと贈り付けられた中に混じっていた匿名配送の怪しい箱を開けてみれば、厄介ごとの始まりだ。
説明書が付いていて、気になるあの子に持たせて脈アリか確認しちゃお!と少女漫画みたいなデカい目の女の子が吹き出しでコメントしていた。
名前通り、手に持った人間の心拍数と連動するらしい。
いや、何それダサいスマートヴァッチか?
それにしても、このちょっと微妙に古い感じ。
レトロクソゲーム系と同じ味わいを感じて、思わず、クソゲーマイスタードラルクはホッコリした。
そもそも、これ以外のバレンタインのチョコとか怪しいモノはメビヤツチェックにより大半が殲滅ビームを喰らっている。
ちょっと血の香りがするチョコとか不衛生の極みで、いくらいい血だろうが、高等吸血鬼であるドラドラちゃんですら食べる気にならないから。
何も分かってない五歳児ゴリルド君は俺のおやつに何すんだー!!??とドラミング暴力を振るってきたが、ドラルクは一応、この退治人の健康管理しているので、絶対に食べさる気はない。私の方が若造の好みを把握してるし、私の方が大体、美味しいおやつ作れるし。
チョコ系スイーツとか大体作れちゃうから、本当。偉大なる古き血の高等吸血鬼にかかれば、市販のよりもロナルド君の味覚に合わせた物が作れるから。
大人っぽい酒入りのチョコよりも生チョコとかの方がちょっと反応良いとかはロナ戦には書いてないからね、みんな、知らないよね、あー、残念残念、さようなら。
それにダイエットになったら、唐揚げの個数減らすし、毎日のおやつ抜きだよと宣言すれば、ロナルド君も素直に引き下がった。
ジョンのダイエットを見てるからな、五歳児は。
一応、厳しいメビヤツチェックを潜り抜けた市販の奴もカロリー計算もあるし、サテツ君に譲る。
めちゃくちゃ嬉しそうな顔していたから、良いことしちゃったな、私。
慈悲深過ぎて逆に畏怖くない??ドラドラちゃん、流石過ぎる。崇め奉れよ、若造。
それにしても、気になるあの子との脈をね。
ほーーーーーーーん。
なるほど。
なるほど…。
チラッと横を見れば、真剣な顔をしてメトロノームを見つめるロナルドが居た。
まつ毛めちゃくちゃ長いな、この五歳児。
「よし……ちょっと持ってみなよ、ロナルド君」
「はぁ?殺す」
「突然の無慈悲な拳!?!?躊躇いが無さ過ぎて風圧に乗る殺意にスナァ!!!!」
ノータイムで振るわれた拳の風圧によりドラルクは死んだ。
躊躇いもない殺戮にドラルクは肉体言語が第一母国語かと目を剥く。
ロナルドはどうやら、怒りのあまり顔を真っ赤にして、ちょっと瞳が潤んでいた。
いや、本当に何で!?
ちょっっっっと、まぁ、ドラルクはロナルドに対して下心があるような、ないような感じで生きてるけど!?!?むっつりとか言うな、紳士的なんだよ、私は。
でも、いきなり殺す????
いや、べ、別にロナルド君の心拍数をチェックして、脈アリかどうかなんて調べるつもり無いですけどね??
…ちょっと漏れたのか?下心が。
野生の勘は侮れないからなと思いつつ、ドラルクは口を開いた。
「VRCに送るにも、先ずはツクモ吸血鬼なのかを調べるべきだろ?ここは退治人である君が確かめるのが一番だ」
そして、私へのトキメキを教えろ。
それによって、何時ごろ夜景が綺麗なレストランを押さえるか決めるから。
ロナルドはぐぬぬと言う顔をしたが、次の瞬間には何やら思い付いたのか、ニヤリと挑発的に笑った。
何その顔可愛いな、若造。
「お前はクソ雑魚砂だけど、デスリセットがあるだろ。もし、こいつが危ない奴だったら、俺が退治しなきゃダメだから、お前が試せ」
「はぁあ?か弱いドラドラちゃんがどうなっても良い訳?強い退治人の癖にビビってるの?いざとなったら、握り潰せば良いだろ、シンヨコウホウホストリートの住民なんだから」
「あーーー??珍しい吸血鬼だったら、殺したらダメだろうが、お前みたいに生き返らないんだからよ。…もし、断るなら、とりあえず、百回殺す」
「ヴァーーー!?!?結局、肉体言語が第一母国語じゃないか!?絶対嫌だから!お断り!!」
「殺して、砂山に刺すぞ、てめぇ!!!」
「ぎゃあーーー!!!近寄るな!!馬鹿!!!おやつ抜きにするからな!!!!」
「ズルいぞ、ドラ公!!!!!!」
「可愛い顔しても、ダメったらダメ!!!」
「か、可愛い顔ってなんだよ…!!俺はカッコいいんだよ!!!」
騒ぎながら、バタバタと二人して暴れ回る。
そして、運悪く段ボールにぶち当たった。
転がり落ちるメトロノームに二人ともつい、手が伸びたのは言うまでもない。
壊れたら、何とは言わないが困る。大変困るのである。
そして、二人の指先がメトロノームに触れた瞬間、メトロノームが爆発した。
そう、目の前で爆発したのである。
突然の爆破に二人のポカンと口も開く。
ちなみに驚き過ぎて、ドラルクは逆に死ねなかった。
いや、爆発だよ!?爆発????メトロノームって爆発するんだっけ??
「え?」
「は?」
パーーーーーンッ!!!!!と言うか、バーーーーーンッ!!!と破裂したそれに咄嗟に自分の左胸を二人は抑えた。
良かった、心臓は動いている。
確かにめちゃくちゃ、高鳴っているが、爆発はしていない。
つまり、これは触れた人間のトキメキがメトロノームの上限を超えたと言う話。
そして、それに触れたのはドラルクとロナルドの二人だったりする。
お互いに恐る恐る目を合わせた。
互いの顔は真っ赤に染まっている。
とりあえず、紳士としてドラルクがまず、口を開くべきだろう。
伊達に二百歳超えてないので。
「……指輪のサイズ教えて貰っても?」
「………今時は一緒に買いに行くんだよ、馬鹿」
「ちなみに明日は?」
「今、空けた」
ロナルドのその言葉に思わず、ドラルクは噴き出して、ロナルドもプッと笑い出してしまう。
カンニングによる答え合わせを企む二人らしく、大変、結構なスピード感だ。
「シルバーはやめようね、プラチナにしよ」
「俺アレやりたい、指輪の裏側に名前入れる奴」
「あー、いいね。私もそれ賛成」
ネットを開いて、指輪のデザインを二人揃って眺め出す。
だって、明日はどうやら、事務所を閉めて、永遠を誓う輪っか探しに二人は出るのである。