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    いっちょぎ

    色々やらかす腐った大人。
    現在は休暇。に大ハマりして、リゼルさんを愛でつつジルリゼを愛して精ゔんを可愛がっております。

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    いっちょぎ

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    ジルイレ!
    学パロのイメージで、甘いちゃらぶいちゃなジルイレです。
    珍しくゔんちゃんの一人称。一人称勉強中です。
    甘くて甘くて身悶えするかと思いますが、甘いお話が大丈夫な方はお付き合い下さいねー!

    日常の風景の話 久し振りに何の予定もない休日の午前。
     俺は両手一杯に荷物を抱えながら、危なっかしい足取りで近くの商店街を歩いていた。
    「……ったく! 何で折角の休みに買い物なんかしなきゃならねぇんだ……ッ!」
     共働きの両親にはなるべく負担をかけない。日曜日も祝日も関係なく、シフトで出勤が決まる両親の負担の軽減の為にも、朝食は基本的には自分で作るし、休みの日は昼食だって自分で作って食べる。弁当だけは母さんが作ってくれるけど、それでも購買で賄う事も多い。夕食も出来る限り俺が何とか作るようにしているし、後片付けは当番制だ。
     お陰で食事の腕前だけは自信がある。
     そんな中で、買い物も重要な手伝いの一つだ。たまに休日に特に用もなく出かける事になると、ついでにあれこれ頼まれる事がある。
     大食いの俺がいるのだ。買い物の大半は食料になるのだけれど、これがまたとんでもない量になる。
     今の状態がそうだ。
    「ほとんどが、俺、の分とは言え、一人で持てる量、じゃ、ねぇだろ……ッ!」
     気分転換に出かけようとしたら、これから出勤する母さんについでに買ってきてと手渡されたメモには、びっしりと買う物の名前が書かれていて、俺をうんざりさせた。
     とはいえ、大半は自分の分だ。仕方ねぇ。これも日常の風景だ。
    「取り敢えず、後は……」
     危なっかしい手付きでメモを覗き込んでいると、不意にものすごい勢いで俺の躯のすぐ脇を車が走り抜けた。こんな狭い商店街の道路をとんでもねぇスピードで走り抜ける車に、周りの人も慌てて道の端によけている。俺も咄嗟に道の端に飛びのいたけど、荷物の所為でバランス崩して二、三歩後ろへたたらを踏んでしまう。
    「うわわ……っ!」
     やべぇ、引っくり返っちまう。
     両手いっぱいに荷物を持っている今の状況じゃ、手をついて躯を支えるなんて出来っこない。カッコ悪く尻もちをつく自分を想像して、思わずぎゅ、と目を閉じた。
     ……が、来るはずの衝撃は俺を襲わず、代わりに誰かの腕が俺の背中を支えてくれた。
     ……この腕……。
     慣れた腕の感触に弾かれるように目を上げると、ニィサンが俺の顔を覗き込んでいた。
    「大丈夫か?」
    「……やっぱニィサンだ」
    「あ? やっぱ?」
     俺の言葉に首を傾げるニィサンに笑って、俺は躯を起こす。見るとニィサンの手には近くの本屋の名前の書かれた袋がある。どうやらニィサンも買い物に来ていたらしい。
    「ありがとニィサン。助かった」
     ふう、と大きく肩で息をして、両手の荷物を抱え直した。
    「凄い量だな」
    「そう! もう俺が暇だからって、好き勝手に買い物頼むんだもん! ヒデェよなァ」
     ぼやく俺に小さく苦笑して、ニィサンは俺の手から荷物の半分以上を持ってくれる。驚いたように顔を上げてニィサンを見上げる俺にニィサンは軽く笑うと、
    「もう買う物はねぇのか?」
    「え? あ、ちょっと待って」
     慌てて手にしているメモを覗き込んだ。ニィサンと俺が持っている荷物の中身を一つずつ確かめながら軽く頷く。
    「うん。これで全部みてぇッスね」
    「そうか。じゃ、行くぞ」
     すたすたと歩き出したニィサンの背に慌てて声をかける。
    「ニィサン買い物の途中なんだろ? いいんスか?」
     パタパタと小走りに追い付いて顔を見上げる俺を見下ろして、ニィサンは薄い笑みを浮かべた。
    「あんな風に危なっかしくされてると、心配で落ち着いて買い物など出来ねぇだろ?」
     一瞬虚を突かれたように足を止めた俺を置いて、ニィサンは再びすたすたと長い足に見合う歩調で行ってしまう。その後ろ姿をしばし呆然と見つめて、ぶつぶつと口の中で「ニィサン、俺の事、甘やかしすぎ!」などと呟いてみたけれど、結局満更でもないように口元に笑みを浮かべると、俺はニィサンを追いかけた。
    「仕方ねぇから、昼飯は俺が作ってご馳走してあげるッスよ!」
     俺の言葉に、ニィサンは後ろを振り返ると小さく笑って見せた。





    「……ご馳走様でした」
     すっかり食べ終わって、両手を合わせるニィサンに俺は楽しげに笑いながら頷いた。
    「どういたしまして。美味かったッスか?」
    「美味かった」
     飾りっけも何もねぇ言葉。だけどそれだけちゃんと気持ちが込められてるのが解るから、俺は溢れる笑みを隠さずに、すっかり空になった皿を下げる。勢い良く水を出して洗い物を始めた俺の背中に、感心したようなニィサンの声がかけられた。
    「慣れたもんだな」
    「ニィサンは料理とかしねぇッスね?」
    「……男子厨房に入るべからずって訳じゃねぇが、あんまり作った事はねぇな」
    「ニィサンらしいッスね! 俺ン家は『働かざる者食うべからず』ッスからね」
     笑いながらニィサンを振り返らずに手を動かしてたら、不意に後ろから腹に腕を回して抱き締められて、慌てて後ろを振り返った。
    「びっ、ビックリした! 急に何スか……って、ちょっ……っ」
     そのまま耳の後ろに軽く口付けられて躯がビクリと強張った。楽しげな低い笑い声が耳元を掠める。カアッと躯の奥が熱くなってくるのを感じて慌てて腕から逃れようと身を捩る。
    「こっ、コラコラ! まだ俺、洗い物の途中……ん……ッ!」
     じわり、とニィサンの手が腹から胸に移動して、唇が首筋へと滑る。
    「み……っ、水! 水止めなきゃ……!」
     俺の手も濡れてるのに!
     ジタバタ身を捩っていたら、後ろから伸びてきた大きな手がキュ、と水を止めてしまった。ゆっくりとTシャツの裾から入り込む手を咄嗟に掴むと、耳朶に軽く歯を立てられる。背筋を走るもどかしい痺れに、膝が震えて堪らずニィサンの胸に背中を預けると、ニィサンの腕は易々と俺の躯を支えくれる。その安心感にホッとため息が零れた。
    「……そう言えば、昼前、何で俺がお前を支えたって解ったんだ?」
     耳元で低く囁かれるやたら色っぽい声に眉を寄せながらも、俺は小さく笑う。
    「こうやって俺の事支えてくれるの、ニィサンだけッスからね。すぐに解るッスよ」
     何があったって、ニィサンの声と腕だけは絶対に間違ったりしない。だって、俺が反応するのは、ニィサンだけだから。ニィサンの存在だけが、俺をここまで敏感にさせるんだから。
     ニィサンの小さな笑い声が耳を掠め、止まっていた手が再びゆっくりとTシャツをめくるように持ち上げていく。する、と直接肌に触れられて、それだけで体温が一気に上昇するような気がした
    「……ふっ、……ぅあ」
     ただ、いつもと違って縋り付くべきニィサンが後ろに居るから、どうにも心細い。胸元を乾いた手の平が我が物顔でゆっくりと滑る。首筋に押し当てられた唇は時折軽く歯を立て、俺の意識にイヤという程ニィサンの存在を感じさせた。ニィサンに躯を預けながらも、縋り付くものを探して流しのふちを指先が白くなる程握り締めていると、不意に肩を掴まれて躯を反転させられる。ホッと息をつく間もなく両頬をやんわりと挟まれて、覆い被さるように口付けられた。
    「……ん……」
     ゆるゆるとニィサンの背に腕を回して服の裾を握り締める。深く口付けながら薄く目を開くと、間近にニィサンの男っぽい整った顔。その後ろに見慣れたキッチンの風景。
     テーブルも、戸棚も、壁も天井も窓も何もかもいつも見ている日常の風景なのに。
     そんなあまりに日常に近い場所でニィサンに抱かれているなんて。
    「あ!」
     スルリと頭からTシャツを引き抜かれて躯が震える。
    「……信じらんね……」
    「何が?」
     ニィサンの前髪を乱暴に払って、俺は小さく笑う。そして、ゆっくりとニィサンの首に腕を回して縋り付いた。
    「……こんなトコでこんなコトするなんて……」
     今まで考えた事もなかった。
     でも。
    「嫌か?」
    「イヤならとっくにニィサンを殴ってるッスよ」
     からりと笑ってニィサンを見上げると、ニィサンも小さく口元に笑みを浮かべた。
     ニィサンが俺を求める限り、俺には場所なんか関係ねぇんだろうと思う。
     ニィサンの存在だけが、今の俺の全てだから。
     ゆっくりと寄せられる唇に、俺はやんわりと目を閉じた。





    「……でもやっぱ! 絶対もうあんなトコじゃしねぇッスからね!」
     ズキズキする腰に低くうめきながら、テーブルにぐったり突っ伏した俺の代わりに、流しに立って洗い物をしているニィサンの背中を睨み付けた。
     そうでなくても俺の負担がデカイのに! 立ったままなんて! 立ったままなんて!!
    「……だから、代わりに洗い物してるじゃねぇか」
     これからしばらくどんな顔でここに座れば良いんだ。思わずガックリと頭を抱えて。
     不意に込み上げる笑いのまま、俺は小さく噴き出した。
    「何だ?」
     不思議そうに振り返ってきたニィサンに笑って首を振る。
    「何でもねぇッスよ」
     訳も解らず首を傾げるニィサンに笑顔を見せると、しばし沈黙してからニィサンも小さく苦笑した。




     見慣れた日常の風景も。
     ニィサンと居ると違うものに見えてくる。

     


     そして、きっと、それがこれからの俺の日常の風景だ。
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    sheera_sot

    DOODLE頭が煮えるほどあつい火曜日、閉店間際のスーパーで永遠の向こうにあるものに気がついたことの話をしてください。
    #shindanmaker #さみしいなにかをかく
    https://shindanmaker.com/595943
    こちらで書いたものです。バンユキだけど万理しか出てこない。
    バニラアイスが溶けるまで 見切り品の野菜の棚から少しくたびれた小松菜を手に取る。煮浸しでなら食べられそうだし、野菜しか食べない線の細いあいつには丁度いいおかずになる。自分用に半額シールの貼られた唐揚げもカゴに入れてレジに並ぶ前、冷凍ケースのアイスクリームがいやにおいしそうに見えた。
     スーパーを出れば日も暮れているというのに茹だるような暑さが待っている。部屋まで歩いて十分、少し溶けてしまうかもしれないけれど買って帰ればきっと千も喜ぶし。バニラアイスを一つだけカゴに増やして、列に並ぶ。
     俺の一つ前にはワイシャツの男がいて、エネルギーバーと栄養ドリンクだけを持っていた。カバンも持っていないから、多分中抜けして食べ物だけ調達しにきたという感じだ。お仕事お疲れ様です、なんて思いながらちらりと様子を伺う。限界まで緩められたネクタイに少しくたびれを感じるけれど、その目はなんだか生き生きしていた。こうやって打ち込める仕事をその人はしているのだろう。なんだか、羨ましい。
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