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    mio_free1357

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    mio_free1357

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    書き直し中の奏薫の小説

    do neither harm nor good

    毒にも薬にもならないぼくらは-プロローグ-

    「ははっ……ぐっ…」
     ひどく掠れた声が出る。
     身体中が痛くて、腕、足や腹。いたる所から血が出ている。痛みと出血で身体を動かすのが難しい。
     "うらぎりものの、末路っ…てね"
     そんなことを思って、うまく動かせなくなっていく足を引き摺りながら、ただある場所を目指して歩いている。夜闇の道端のライトだけが金髪の青年をうつして、光って。俺の足音と、呼吸音だけが辺りに響く。
     
     "どうせ死ぬなら海で死にたい"
     
     いつか思ったこの気持ちを叶えるために俺は砂浜を歩いている。海は好きだ。落ち着けるから。波の音が聞こえてきて、心が静かに、穏やかに、時が進んでいくような気がするから。
     とうの昔に忘れた幼い頃の感情や思い出に、唯一浸れる場所だったから。もういないたった一人の誰かに会える場所だから。
     いつから悪敵なんて呼ばれるようになったかは覚えていない。俺は、ただ必死だった。生き抜く為に、生きる為に悪と呼ばれるものになるしかなかった。たとえ目の前で誰かが傷つこうと、手を差し伸べたかったとしても、俺は求められたスコルピオになるしか無かった。
     その結果がこれだ。
     仲間、いや元仲間に裏切られた。自身を傷つけられ、唯一の仲間すらも傷つけられた。
     徐々に足にも力が入らなくなってきた。折れた足を無理やり動かしているから痛みも酷くて。首元から流れる血すらも何も冷たく感じて、後もう少しなのに、後もう少しで海に

     俺も帰れる

     ごめん。スペード君。俺、もう疲れたからさ。少し休んでも…いい…かな?
     喉を掻っ切られて声が出せなくて、心の中でそう話す。もちろん誰かの返事があるわけじゃ無い。ただ波の音だけがあたりに響いて。その音すらどんどん遠くなっていく。ぐらりと身体が揺らいで、そのまま柔らかい砂浜の上に崩れ落ちた。手足に力が入らなくなって。最後がこれか…これはこれでいいかなぁ…。
     スコルピオ!と、そう元気に名前を呼んでくれるあの子は逃げれただろうか?せめて、あの子だけでも助かってくれればと、そう思う。俺のせいで巻き込んでしまった。まだ何も知らない子なのに。これからを生きるはずだったのに。俺と同じ利用された子。
     彼の手枷を俺の力で溶かしきった時、彼は酷く泣きそうに俺の名前を呼んだ。俺はもうその時話せなくて、ただニコリと笑い彼を外に追い出そうとした。助けを連れてくると泣きそうな顔をして、俺を連れていくと言う彼にダメだと口パクで伝えて、でも、それでも、とただをこねる彼が俺を連れ出した。けど、アイツらに見つかった時に俺は無理やり彼だけを逃がした。俺はその場に残って力を奮って、無理やりだったけどそれでも、スペードくんを守れたのならせめてもの救いだ。
     少しだけ地面から顔を上げると、夜空が馬鹿みたいに綺麗で、最後に見れた景色がこれならいいかもしれない、そんな風に思って、自然と笑みがこぼれた。
     ああ…俺は結局何の為に、生きていたんだろう。自問自答は止まらない。けどもういいか、もういい。きっと答えは見つからない。だって俺はもう、世界から

     消えるのだから


    -怪我人と流星隊-
     
     磯…の香りがする。海のそばで感じる匂い。落ち着く。体が上がっていく様な感覚。
     ああそっか俺、どうなったんだっけ?海のそばまで行ったはずで……そう、波の音を聴いたはず。砂の上に体が落ちて。あれ?それにしてはやけにふかふか…?あれ?これ砂じゃない…?意識が浮上してそして目をゆっくりと開くと、俺の顔を覗き込んでいた黄緑色の目と目があった
    「あっ。ちあき〜めをさましましたよ〜」
     本当か!とかという声も聞こえたが姿は見えない。近くには居ない様だ

     というか。この特徴的な話し方、水色の髪に黄緑の瞳。
     この人、もしかして流星ブルー?
     は?流星ブルー?!って事はここ…

     気がついた時にはもう体を動かしていた。反射のようなもので。ここにいちゃいけない、ただそれを思って動いたのに、動いた瞬間身体中の至る所から激しい痛みがした
    「っ……うっ…」
     痛みのせいで体を支えきれずに、そのまま床に倒れ込みそうになったのをそばに居た流星ブルーが咄嗟に支えてくれたお陰で床に倒れずには済んだ。ただ、支えられた所や動いたせいで激しく痛む体に呼吸が荒くなる
    「っ……あっ、はぁ……ぐっ……」
    「ばかなんですか?!あなた、おおけがしてるんですよ?!いきなりうごくなんて、なにをしてるんですか!」
    「ひゅぅっ……っ……いっ……ひゅっ……」
     俺が返事を返さずに、痛みを逃すために体を抱えると、流星ブルーは俺をベッドにもう一回寝かしてくれた。
    「おおごえをだしてしまってごめんなさい…。きずにひびきますよね」
    「あっ……っうあ…」
     返事を返したいが返せない。何故か声が上手く出なくて、酷く痛む。
    「むりにはなさなくて"だいじょうぶ"ですよ。あなたくびにおおけがを"おっている"のです。
     みどり…、ああ、あなたをみてくれたこなんですけど。そのこがいうには『喉が深く傷つけられてるから、能力を全開まで使ったとしても話せるようになるまでにはかなり時間が掛かる』そうです…だからむりにはなさなくていいですよ。からだもいたいでしょうから」
     そうか。俺首切られてたな…上手く話せないのはそのせいか。
    「あっう…お…をどう…て…た…けひゅうっ…」
     酷くかすれた音が辺りに響く。するとブルーは少しばかり口元を緩めて笑うと
    「どうしてたすけたですか?こまってるひとがいたら、ほっとけないんですよ。ぼくたちは"ヒーロー"なので」
     ヒーロー。憧れたヒーロー。俺はなれなかったけど。この人はそうなのか
    「奏汰!怪我人の様子はどうだ?」
     声がした方に目を向けると、やっぱりそうだ。見た事のあるやつがいる。いつも俺に歯向かってきてた"流星レッド"だ
    「ちあき!めはさまして…あっ、やっぱり"こえ"はみどりがいっていたようにうまくだせないようです。あと、ねつがあります。からだがとてもあついので…」
    「うむ…熱か…」
     そう言ってレッドが俺に触れようとしてきたが反射的に俺は手を弾く。かわいた音が聞こえて、自分で出した音に少しばかり体がビクッとした。
    「はっうっ…っぁ…さ、るな…」
    「そう警戒するな…何もしないから。ただ熱を測らせて欲しい」
     レッドがもう一度触れようとしてくるがまた手を弾く。その度に強く体が痛む。あまりの痛さに呼吸もままならなくなりそうだ
    「さ…ひゅっ…る、な……っう……いっ…」
     痛みが強くて、目から涙がこぼれる
     流星レッドは俺をじっと見て、少し考えるような素振りをした後、伸ばした手を下げた。そして俺の方を向いた。
    「わかった。触らないから。これでいいか?スコルピオ」
    「っ…[#「」は縦中横]」
     スコルピオと呼ばれ体に力が入る。バレてる。どうする?逃げるか?体がこんな状態で逃げた所で何になる、動けもしないのに…どうやって?
     いや…もういい。どうせ生き残った所で何にもならない。俺にはもう帰る場所すら無いんだから。そう思うと体にこもっていた力が抜けて
    「っ……はっ…お、をつ、まえる?」
     流星レッドの顔を見ながら、力のない掠れた声で言う。
    「いや、今は…捕まえる気は無い。何があったかは知らないが…そんなボロボロになっているお前を警務に突き出すのは気が引ける。怪我人を苦しめる趣味は無いからな…」
     レッドはそう言った。
     本気?俺悪党だよ?どうして捕まえないの?レッドの言葉に動揺して、きっと酷い顔をしている。見せられないと思って、レッドに向けていた顔を反対側に向けた
    「それよりも、お前は今は休め。怪我も酷いし…熱もある。話はお前の体調が楽になってきたら聞くから」
     痛みに隠れていて分かりにくいが寒気を感じる。そうか…これは熱か。今のままだと能力だって上手く使えない。どちらにしても足が動かない。ははっ…これはどうにもならないな…。
    「奏汰すまないがスコルピオを見ていて貰えるか?高峯を呼んでくる」
    「はぁ〜い。わかりました♪というわけなので、すこるぴおさんはなにもきにせずにゆっくりやすんでください〜。ぼくたちはなにもしませんから〜」
     俺はふたりが話しているのを聞いていたが
    「ば…かじゃ…の。つ、まえ、ばい…、に」
     そう、二人に聞こえるか聞こえないか分からないぐらいのかすれた声で呟いた。すると後ろから、はぁ…とため息が聞こえて、レッドが何かをブルーに伝えた後に
    「奏汰。頼んだぞ」
     とそう言って、扉を閉める音が聞こえた。ブルーはレッドが出ていった後、ベッドのそばで

     だいじょうぶですよ。ここにはあなたをきずつけるひとはいませんから。もうだいじょうぶですから。

     大丈夫、大丈夫です。と何度もブルーは俺に言っていて。なんでだろうか、落ち着く。不思議な声だ。どうしてこの人はこんな優しげに、俺に。わからない、どうして。


    -再開と決断-(本だけの本編書き下ろし話)

    「なぁ、奏汰。お前はどうしてスコルピオにあんなことを言ったんだ?」
    「しにたいならころしてあげます…のことですか?」
    「ああ…あれはちょっと、いやかなりドキッとしたぞ…お前がまた…」
     続きは言えなかった。奏汰は泣き疲れて車椅子に座って眠るスコルピオの頭を撫でながら、ゆっくりと答えた
    「ん〜。かけ…ですね」
    「賭けか?」
    「はい〜すこるぴおさんはやさしいですから、きっとああいえば、ぼくにそんなことをさせたくないって、しぬことを"あきらめる"のじゃないかとおもったんです」
     死ぬのを諦める。奏汰からそんな言葉が聞けるとは思いもしなかった。流星隊に南雲達が入るまで、奏汰は何度も自身を手にかけようとした。そんな奏汰が、他の人に死んで欲しくない、そう願っている。
    「…ははっ…そうか…奏汰。お前はそこまでしてでもスコルピオを守りたかった、ただそれだけなんだろう?」
    「まあ…それはそうなんですが…」
    「何か心配事があるのか?」
     奏汰はスコルピオの車椅子を押しながら、空を見上げて
    「うーん…ぼくは…ちあきに"いかされた"ことに"かんしゃ"してます。いまとてもたのしいですし、たいせつなものが"たくさん"できました。けど、すこるぴおさんがそうなるとはかぎりません。だからすこし、しんぱいです。ぼくの"えご"で、すこるぴおさんをいかしてしまったから…」
     奏汰。お前もそんな風に考えるようになったのか。随分人間らしくなった、本当に嬉しい。だって、誰よりも生きることそのものを諦めてたお前が…誰かを生かそうとしている。お前を、助けてよかった。そんなことを思うと、つい笑ってしまった。
    「ん〜…それこそお前の杞憂だと思うぞ。スコルピオには少なくとも一彩くんがいるし、お前もいる。お前だけじゃない。流星隊だって。だから大丈夫だろう。それでももし不安に思うなら、お前が居場所になってやればいい」
    「ぼくが…すこるぴおさんの…」
    「それに奏汰、お前は自分のしていることをエゴと言ったな?それは俺がお前にした『生きろ』という言葉も行動も同じエゴだという事になる。それでも同じように言えるのか?」
     俺がそう言うと奏汰は目を見開いた
    「ちあき…ぼくはそんなつもり…」
    「ああ、少し意地悪だったな」
     奏汰は俯く。そんな奏汰の頭を俺は撫でる
    「お前も…成長したなぁ…。あのな、奏汰。誰しもがみな、自分のエゴで生きているんだ。俺も、お前も、スコルピオも」
     奏汰の少し癖のある髪を千秋は両手でわしゃわしゃと撫でる
    「お前がスコルピオを助けたい、そう思ったようにスコルピオだってスペードをスペードの意志を無視してでも命懸けで生かした。俺もお前を助けたいと思って流星隊を作った。みんなそうなんだ。自分のエゴで生きてる。だからそう怖がるな。スコルピオが助けて貰った意味を分かるまで、お前がそばに居てやればいい。そうやって自分のエゴを押し通せ。押し通して何かあった時に初めて悔やめばいい。奏汰!今はまだ後悔するような時期でもないぞ!」
     奏汰は俺を見て、いつものように笑って
    「ふふっ…ちあきがそういうならそうなのかもしれませんね。ちあきも…なやんだのですか?」
    「ああ!悩みばっかりだぞ!今でもな!それでも俺はお前を相棒に選んだという事を一度だって後悔したことは無い。初めに言っただろう?俺はお前がいいと。その言葉だけは何があっても変わらない。俺はお前がいいんだ」
     千秋は奏汰の手を持って、いつもと同じ変わらない笑顔で奏汰を見る
    「うふふっ。ちあき…ありがとう。ぼくもちあきにたすけてもらって、とてもかんしゃしています」
    「俺もだ。俺も、俺こそお前に沢山助けて貰ってる。
     奏汰。お前と共にこれからも歩みたい」
    「はい。これからもよろしくおねがいしますね、ちあき。ぼくのヒーロー、たったひとりのぼくの
     "あいぼう"」
    「もちろんだ!奏汰!」
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    Yuama23

    DONEファウネロ。東オンリーでネップリ登録していた短編です。
    距離 それは、お互いへの好意や信頼が募り、関係性がゆるやかに形を変え始めたときのこと。ネロの部屋でのいつも通りの晩酌中、グラスが数杯空になった頃合。常ならば眠気が来る前に部屋に戻るファウストが、今日は珍しくうとうとと船を漕いでいた。

     眠そうに目を擦ったファウストが、恐らく無意識だろう、ツマミの乗っていた皿を押し退けてテーブルにスペースを作る。そこに両腕を置いて頭を乗せて、しばらくもぞもぞと位置を調整して。やがて満足気にふんと小さく鼻を鳴らして、そのまますうすうと寝息を立てて眠り始めた。
    「……お疲れ様、ファウスト」
     今日は依頼された異変解決のため、朝からあちこちを駆けずり回っていた。
     向かった先は東の国だったが、異変に関わっていた呪いを沈めるために必要な媒介が、西の国でしか流通していないものだった。だから東の国から中央を通って西の国まで箒を飛ばして、さらに西の中心街にある賑やかな通りの出店を端から端まで覗く羽目になっている。それからまた東に戻って解呪を行ったのだから、異変の性質上主軸となったファウストは疲れて当然といえる。
    1906