家路 東の空から徐々に迫り来る夕闇の気配に、騎士は顔を上げ、東の空を仰ぎ見た。
そんな騎士の様子に、姫も立ち止まり、彼に倣って空を見上げる。空には数多の鳥たちが群れをなし、飛んでいくのが見えた。
「鳥たちが巣へ戻って行く……。
もう、そんな時間なのですね」
傾きかけた西陽に目を細めながら、姫が小さく呟いた。
ハイラルに暮らす鳥は、地方によって色も姿もさまざまだが、多くの鳥が夜になるとねぐらに戻り、ハイラルの空から姿を消す。夕暮れ時はムクドリ、夜になればフクロウの鳴き声もわずかに聞こえるが、鳥が帰る頃が夕暮れ時で、その頃になれば広場で遊んでいる子どもたちも家に帰り、大人たちもめいめいが帰途に着く。鳥が空から姿を消し始める頃、それがハイラルの夜の始まりの目安だった。
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