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    ぬこです。

    龍如にハマったダメ人間。
    マジで何でも許せる方向け。

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    ぬこです。

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    春の日に麒麟が眠るとき。

    #峯大#大峯

    「おっ、大吾ちゃん。ちょうどええとこに来たわ。」


    その日、通いなれた東城会本部の長い廊下を歩いていた大吾は、必然開いた応接室のドアから突然顔をのぞかせた真島に、びく、と肩を跳ねさせた。


    「…真島さん?ここで何してるんです?」
    「ヒヒ、ええから、ええから。こっち来いや、早よ。」


    いたずらっぽい笑みで手招きする真島を警戒しつつも、その勢いに負けてゆっくりと部屋に入ると、背後でゆっくりと真島が扉を閉める。


    「なんなんですか、真島さん。」
    「シーっ、静かにし。子供が寝とる。」
    「…子供?」


    いつもの声量で問いかけた疑問を窘められ、思わず小声になる大吾に真島は無言で、部屋の奥に設置された対談用のソファーを指差す。
    どうやらそこを見てみろという事らしいと理解して、怪訝そうにソファーを覗き込んだ大吾が思わず声を上げた。



    「…峯?」



    黒い三人掛けのソファーにその身を横たえて、長いまつ毛を伏せたまま静かに眠るその男は、大吾の唯一無二の兄弟分であり、朝からその姿を探していた峯、その人だった。

    その傍らにある机の上には、整理された書類の山と、山のような吸い殻の入った灰皿、それから缶コーヒーの空き缶数本が、何故かきっちりと揃えられて並んでいて、大吾はそういえば…と、昨日の深夜に峯が米国から帰国した旨を伝えるメールが届いていたことを思い出す。

    突貫作業の果てに、窓から差し込む春の日差しに負けたのだろうか…。薄い瞼をひたりと閉じたまま動く気配のない彼に、大吾が物珍しいやら、苦労を掛けて申し訳ないやらと自分の感情を決めかねていると、いつの間にか隣に忍び寄っていた真島が大吾の耳元でそっと囁く。


    「なんか疲れとるみたいやったし、毛布でもかけたろ思たんやけどな、この坊ン、なんか俺がこれ以上近づいたら目ぇ覚ましよるような気がして近づけへんかってん。」
    「…そう、ですか。」
    「…さすが、大吾ちゃんは親父やな。気持ちよさそうに寝とるわ。」


    ほんなら後は頼んだで、と毛布を手渡していつになく静かに気を払って部屋から去っていく真島を見送って、大吾は、眠る峯の顔を改めて見つめる。
    いつも几帳面に整えられているオールバックが僅かに乱れて、自分の腕を枕にして眠るその端正な横顔に掛かる前髪のせいなのか、いつもより少し幼く見えるその目元に、濃い疲労の影を見つけると、大吾はそっと傍らに歩み寄り、丁寧に、その体に毛布を掛けていく。

    寒くないように、怖い夢から、守るように。
    頬に当たって邪魔になりそうになる毛布をそっとよけてやりながら、肩口までを覆い尽くして、どうかゆっくりと眠ってくれ、と願うように。
    白い毛布に包まれて、静かに肩を上下させて小さく寝息を立てる峯は、何故か庇護の必要な子供に見えた。


    「大丈夫だ、峯。俺がそばにいてやるからな。」


    自然と口から洩れた言葉は、間違いなく大吾自身の本心だ。
    心なしか僅かに緩んだように見える峯の向かい側に、ゆっくりと腰を下ろした大吾は、親が子を守るように、その背中で峯の頬に当たる春の日差しを遮る。


    このまま、ここにいよう。
    峯が目を覚ますまで。



    「おやすみ。」


    自分からこんな声音が出るなんて、と自分で驚きながら、大吾はゆっくりと目を閉じる。
    やがて、こくり、とひとつ舟をこいだその背中に、正午の太陽が降り注いだ。











    「俺はずっと、お前の傍にいるって言っただろ?」

    横たわる体に、白い布をかけてやりながら、安心しきったような顔で眠る頬を撫でる。
    寒くないように、怖い夢から、守るように。
    頬に当たって邪魔になりそうになる布をそっとよけてやりながら、肩口までを覆い尽くして、どうかゆっくりと眠ってくれ、と願うように。


    「俺はお前の親父だから。安心して、寝ていいぞ。」


    白い布に包まれて、静かにそこに横たわる峯は、何故か庇護の必要な子供に見えた。


    「みね」


    あの日の太陽はもう上らない。



    「おやすみ。」


    自分からこんな声音が出るなんて、と自分で驚きながら、大吾はゆっくりと目を閉じる。
    温度のない時間が、ただ淡々と過ぎていく。
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    ぬこです。

    DONEハン趙。
    えっちなお兄さんは好きですか。①
    イルミネーションが煌めく華やかな横浜の繁華街を、スーツの美青年が駆け抜ける。
    整った顔立ちにめいっぱい期待を浮かべて、桃色の頬をして走る彼の瞳は、街のイルミネーションを反射してキラキラと光って。
    一目で大切な誰かと待ち合わせなのだ、とわかるその様子は、まるでドラマのワンシーンのようで、誰もが思わず振り返る。
    そんなこともお構い無しに、額に汗を浮かべて急ぐ彼が、足早に雑踏を抜けた先。
    観覧車がゆらゆらと水面に揺れる横浜港の夜景を背中に、こちらに向かって手を振る男がいた。


    「ハンくーん、こっちこっち。」


    のんびりとした甘い声が、青年の名前を呼ぶ。
    すると、ハンと呼ばれた青年は、その頬を得意気に綻ばせて、抱きつかんばかりの勢いで名前を呼んだ彼に向かってまた駆ける。


    「趙さん!」
    「はぁい、お疲れ様。」
    「...遅れて、すみま、せん!」
    「大丈夫だよ。俺も今来たトコだし。」


    側によった彼が息も整わないうちに謝罪するのを、趙は優しく受け流す。
    さりげなく背中を撫でる手に、ハンの肩が僅かに跳ねたのも、趙は気づいて見ない振りをした。


    「スーツ、似合ってるね」
    「ありがとうございま 2680

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