ねえさんに相談しよ「禁煙してるんで」
お裾分けのタバコを差し出す女を手で制して、成田狂児は微笑んだ。
「え?」
「今タバコ辞めてんねん。だから気ぃ遣わんでええよ」
「あ、そうなの」
古いご贔屓さんなので今更取り繕うこともない関係ではあるが、知り合ってから十数年、禁煙なんて初めての事だった。スナックのママという仕事柄タバコライターはもはや営業マンにとっての名刺、会計士にとっての電卓のようなもので、相手にあわせて控えるような遠慮は見せず手元の煙草をくわえて火をつけた。自分の店だし、カラオケ練習で騒がしい他の連中に場所を提供しているし、これぐらい許されるだろう。
「…できたん?」
ぼそっと尋ねると、不思議そうな顔でこちらを見た。
「なにが?」
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