君の言うとおりある日、父が仕事場でもらったと真っ白い箱を持って帰ってきた。
中を開けていいぞと言われ、兄弟を代表して遊斗がその役を引き受けた。
丸い形のシールを剥しそっと開いた中には甘い世界があった。
いちごのショートケーキ、ザッハトルテ、ベリータルト、マスカットのオムレット。
開いた箱の中身を皆で覗き込みそれぞれが目を輝かせる。
ケーキは母が作るホットケーキをよく食べるが、市販のケーキとなるとなかなか食べる機会がないもので誰かがツバを飲み込んだ音がよく聞こえた。
その中でも人一倍目を輝かせて見つめるのは末っ子の遊矢。
そんな姿を遊斗は微笑ましく見つめる。
「遊矢、どれがいい?」
「え!オレ?」
名前を呼ばれ勢いよく顔を上げた遊矢は驚きに目を丸くする。
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