居酒屋にて 喧噪と煙が充満した居酒屋のカウンターで隣り合って座るだなんて色気のない会合はかれこれ何度目だろう。
そんなことを思いながら宮原は某有名メーカーのロゴ入りジョッキに注がれたハイボールをぐぐっと呷る。
月に一度か二度くらいの頻度で呼び出されては、とりとめのない会話をこなして帰るだけ。それが同性の友人同士であるならばよくあることで済むけれど、これの相手は友人と呼んでいいかもわからない異性の幼なじみだ。
無言でしゅわっと弾ける刺激と独特の苦みを孕んだそれをスポーツドリンクか何かのようにごくごくと胃袋に送りつけて、串に刺さったままの鶏皮を口から迎え入れる。
「……おいし」
思わず声が出た。
それは周囲の仕事帰りらしいサラリーマンの喧噪にかき消されただろうけれど、隣の男には聞こえたらしい。鶏皮が一本持って行かれてしまった。
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