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    かべうちのかべ

    @mahokabeuchiaka

    まほやくのかべうち。壁打ちの結果であがった物を細々と載せる。
    学パロと両片想いが好き。

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    かべうちのかべ

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    ペーパーラリー用サンプル。フォ学パロ(全文です)
    印刷物にはささやかな挿絵がついていました。
    印刷してくださった方。ありがとうございました!!

    ##学パロ
    ##ブラネロ

    『ロマンチックとはほど遠い』    「祭り行くぞ」
    「は?」
     ドアを開けるなりそう言って、腕を引き、有無も言わせず連れだそうとするブラッドに、思考が追いつかないなりにどうにか理由を問いただそうと制止をかけた。
    「いやいや、待てって、何で?」
    「何でって、なんとなく?祭りがあってっから」
    「今から行くのか?」
    「おう。お前そのままでも出れるじゃん」
    「いや、寝間着だし」
    「甚兵衛だろ。寝間着かどうかなんてよその奴に分かりゃしねぇよ」
    「それは……そうだけど」
    「ほら、いくぞ」
     いつも唐突だが、今日は一段と楽しそうにしている。気持ちは既に祭りに向かっているのだろう。全く、こちらの意見などいつも聞いていないのだから……。
    「……はぁ。分かった。財布と携帯取ってくるから待ってろ」
    「おう」
     ブラッドから離れよう、真面目になろうとしても、こうしてコイツの誘いを断り切れない自分のなんと甘いことか……。それでも、楽しそうなコイツがいるだけで、許してしまうのだ。
    「乗れ」
    「バイクかよ」
    「そのが気持ちいいだろ」
     そう言って、愛車を撫でる。言われるままに後ろに乗ると、大きな音を立てて発進した。祭りの会場まではそう遠くないため、程なくして駐輪場へ到着する。

    「よっしゃ。なんか食おうぜ」
    「おぉ」
    「あ、焼き鳥食いてぇ」
     屋台を見るなり行く先々で食べ物を買う。焼き鳥、イカ焼き、焼きそば、人形焼き、はし巻き、等々、相変わらずよく食べる。見てるだけで満腹になるようだ。自分の料理じゃないのが少しだけ、なんとなく嫌だけれど、お祭りはこの雰囲気込みのものだからしかたがない。たまに食えよと渡されるのもさっきから何も買わないからだろう。
    「あー。食った。しばらく食えねぇ」
     やっと満足したのか、少し開けた川縁で寝転ぶ。
    「食ってすぐ横になったら牛になるぞ」
    「心配すんな。俺様は牛になったとしてもかっこいいからな」
    「なんだよ。それ」
     馬鹿らしい会話をして、二人して笑った。なんだか久しぶりにこんなに笑ったきがする。高校に入って大きなチームになる前から、幼なじみだからということ以前に、コイツといて楽しかったから一緒にいたのだ。それを今まですっかり忘れていたきがする。
    「やっと笑ったな」
    「え?」
    「最近えらい難しい顔ばっかしてやがったろ?」
    「……」
    「お前は笑ってろよ」
    「ブラッド……」
    「別に俺はお前が好きなようにしたらいいと思ってる」
    「そっか……」
    「おぅ」
     そう言った瞬間に、向こう岸から花火が上がりだした。大きな音と共に夜空に大輪の花が咲き誇る。間を置かず打ち上がるそれに紛れるように、小さく、告げた。
    「……ありがとな」
     伝わってなくてもそれで良かった。伝えるつもりもなかったから。
    そのまま花火に目を向ける。久しぶりにこんなに近くで見たかもしれない。前に来たときもこの場所で、隣にいたのもブラッドだった。懐かしく思いながら見上げていると、寝転がっていたブラッドが起き上がる気配がした。
     と、思えば急に頭を抱き込まれる。
    「好きだぜ」
    耳元に静かに声が届くと、そのまま頬に柔らかく暖かなものが触れる。
     一瞬理解が追いつかず、時も音も何もかもがなくなった。口づけられたのだと気づいてから、とっさに頬を押さえてブラッドをにらみつける。そういえばリップ音もしたような気がする。
    「な、お、まえ!」
    「ふ。誰も見てねぇよ」
    イタズラが成功した後のような楽しそうな顔に言われるまま、回りを見回せば、確かに回りは皆花火に夢中で、上しか見上げていない。むしろ濃厚なキスをしているカップルすらいた。が、そういう問題ではない。顔に集まる熱に、これから帰るまでどういう顔をしていいのか分からないのだ。嫌じゃなかった自分がなによりも困る。冗談で済ますには悪ふざけが過ぎるし、こういう冗談をいう奴ではないと思っているから混乱するのだ。その証明かのように手が絡んでくる。
    「花火終わったら、答えくれよ」
    「~~っ!」
     言葉にならない声と共に、恐らく真っ赤だろう顔で思い切りにらんでやった。どうせ分かっているのだろう。この手がふりほどかれないことも、答えがどうかなんてことも。そういうところがいつもずるい。いっそのこと「好きではない」とでも言ってやろうかと思ったが、そう言ったところですぐにボロを出してしまいそうな自分に情けなさを感じる。
     そうこうしているうちに音楽が終わりに近づいていた。ひときわ大きなしだれ柳を最後に、一瞬の静寂の後、ぱちぱちと拍手が湧き起こる。三千発とか言われていた花火は全て咲ききって、返答の猶予と一緒に夜空に消え去ってしまった。どこか遠いことのように感じながら、繋がれた手を見つめるが、時間は待ってくれない。
    「で、どうよ」
    「……花火、全然見れなかったじゃねぇか。馬鹿」
    「はぁ?」
    「お前のことでいっぱいになって何も考えられなかったって言ってんだよ」
    「はは。いいじゃねぇか。花火からお前が奪えたなら成功だな」
    「もっと……、考えて告白しろよな」
    「ロマンチストなお前にあわせてやったんだよ」
    「なっ。まぁ、確かに……。そうかも」
    「満足だろ」
     そう言われて、少し考える。確かに、昔来ていた祭りに参加し、久しぶりに笑って、告白されて、受け入れて、そこそこ満足だが、一つだけ足りていない。多分俺にとって一番重要だ。今日はまだ、俺の作った飯をまだブラッドは食べてない。
    「満足じゃねぇ……。買い物して帰るぞ」
    「は?」
    「俺が美味い焼きそばつくってやる」
    「お、マジか! ネロの焼きそば!」
    「食えるだろ?」
    「おぅ、当たり前よ」
     ニヤリと笑ったその顔は、美味い飯を食べた時と同じで、どうしてかこの顔が大好きなのだ。早く帰ってもう一度その顔が見たくなる。

    ロマンチックとはほど遠い、でも、俺とブラッドを繋ぐ何よりも強いもの。
    これからもきっと、関係が変わってもずっと、続いて欲しいと、唯一願うもの。  


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    かべうちのかべ

    MENU『冬から春へ』
    の書き下ろし2作の冒頭部分抜粋しました。( )内の計は全文の長さ。サンプルはその三分の一くらい。

    『お気に入りは』←オエちゃんとネの出会いと、その数ヶ月後。(計3200字くらい)
    『宴の夜に』←ブ様とおシャイがお話するところ。(計1600字くらい)
    頒布先→ https://mahokabeuchiaka.booth.pm/items/3914349(BOOTH店舗)
    『冬から春へ』書き下ろし文サンプル『お気に入りは』

     ブラッドリーの城の近くの森で動物たちから面白い噂を聞いた。
    『俺たちの言葉がわかるやつがいる』
    『ちょっと聞かないなまりのあることばを話す』
    『近くにいると穏やかな気持ちになる』
    『食べたことのないような、甘くておいしいものをくれる』 等々。
     
     最近何もなくて退屈だし、オーエン以外で動物と話せる存在はそう多くない。それになにより、『甘くておいしいもの』が気になった。オーエンは甘いものに目がないのだ。
     巻き起こる吹雪の中を歩いているとは思えないほどに悠々と進み、しばらく行けば視界が開ける。ブラッドリーの治める領域の中へとたどり着いたのだ。今は昼前で太陽が真上に上り、先ほどとは打って変ってかなりの晴天になっている。そのおかげか、遠くの街の煙突の煙まできれいに見えているが、そちらには目もくれず、その北側へと広がる森へと歩を進めた。
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    かべうちのかべ

    DONE再掲
    ・初めて激オコしたネ君と何が悪かったか分かってないブの話

    第1回ブラネロ冬春ワンドロライ、4回目のお題:喧嘩 より。
    2021.8.30にTwitter掲載済。
    『らしくない』「……」
    「ネロ?なんだそんな恐い顔して」
    「これ……、どうした?」
    「お、それな。美味かったぜ!」
    「……食ったのか?」
    「おう」
    「昨日、これだけは食うなって、言っといたよな?」
    「そう……だったか?まぁ、でもこんな美味そうなもん我慢できねぇし、また作ればいいだろ?」
     悪びれもせずにそう言って笑うブラッドリーとは反対に、ネロは感情を落としたように無表情だ。何度か耐えるように呼吸を繰り返していたが、どうにも収まらない怒りがあふれ出す。
    唇をかみしめ、顔をゆがめてブラッドリーをにらみつけるとキッチンから荒々しく駆けだした。感情にまかせた言葉を吐き捨てて。
    「てめぇは……野菜でも食ってろ!」
    「は? おい、ネロ!」

     涙こそ出てはいないが、明らかに傷ついた表情で去って行ったネロに困惑するブラッドリーは、何がなんだかさっぱりと分かっていなかった。そのまま呆然と扉を見つめ考え込むが、何度思い返してみてもいつものつまみ食いとなにも変わらない行動だったと思う。
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