マネージャー×俳優4(水麿) こんなにもやめてくれと思うこともない。水心子は会話が電話なのをいいことに口元を引きつらせた。
「……ええと、それは条件、ということでしょうか」
『条件なんて大仰なものではないのですが、お願い、ということで……』
断りたいが断りきれない、なにせこれは事務所の社長のツテの仕事だ。ソファの隣から黙って視線を送ってくる清麿をうまく見られない。
『では、よろしくお願いしますね!』
明るい声を最後にぷつっと通話は切れた。物言わなくなったスマートフォンを下ろして、はああっと息を吐き清麿の肩にもたれかかる。ほぼ同棲状態の清麿の部屋、テーブルにはコーヒーがミルクの渦を巻いている。
細い指がそっと頭を撫でてくれて、その感触に身を委ねながら清麿に向けて口を動かした。
2676