つやめきに託して/那須熊「ホワイトデーに贈るものって、それぞれ意味があるらしいですよ」
賑わう催事場、ライトブルーで彩られたそれを横目で見ながら、小夜子は言った。
今日は3月14日、遠征選抜試験説明会の翌日。あたしと小夜子は、第1試験の持ち物を買い揃えに近場のショッピングセンターに来ていた。人の多いところだからダメ元で誘った小夜子が、苦虫を噛み潰したみたいな顔で「行きます、人に慣れるためにも……」って言った時はどうなることやらと思ったけれど、やっぱり一人より二人の方が、ずっと楽しい。小夜子も、今のところは大丈夫そうだ。
それはさておき。小夜子の話はちょっと気になる。
「意味って? どういうこと?」
「贈るものによって、相手に伝えたいメッセージが変わる、みたいな話です。たしかキャンディだと好意、クッキーだと友達、マシュマロだと告白のお断り、みたいな」
まぁ相手が意味を知ってるかどうかも分からないからあんまりアテになりませんけどね〜、と付け加える小夜子の声を聞きながら、あたしは今朝の贈り物のことを思い出す。
忙しくてしばらく会えないだろうから郵送にするわね、と事前に言われていたそれは、しっかりした彼女らしく日付指定で朝一番に投函されていて、銀の線できれいな花があしらわれた透明な箱と緑のリボンは、あたしの心を弾ませた。そしてその中には、真ん中につやつやの飴を宿したクッキー。桃色や黄緑や黄色、優しくてポップな色合いが目にも楽しくて、手に取って光に透かしてみたり。ステンドグラスクッキーと呼ぶことは、同封されていた説明書きで知った。それは、その意味はもしかして。
「ね、ねぇ……、キャンディ入りのクッキーって、どう思う……?」
そう尋ねるとこちらを見る小夜子、じーっとあたしを見たあと、瞳にからかいの色が浮かぶ。少しにやっと笑ったあと、正面に向き直ってしらっとした顔。
「熊谷先輩、もう分かってるくせに」
「なっ……別に具体的なものの話はしてないってば!」
小夜子に抗議をしながら、熱くなる頬をそっと押さえた。
ステンドグラスクッキー。さくさくと香ばしい口当たりの真ん中、つやめくキャンディのお味はいかに。