うちがわの赤/那須熊無理をするのは得意だった。
正しく言うなら、無理をしていないふりをするのは得意だった。自分にも、周りにも。
今はもうそんなことはしないけれど、ままならぬ体に納得ができていなかった幼い頃、たまの外遊びではしゃぎすぎては体調を崩してしまうのが常だった。心配する母の言葉を振り切って、大丈夫、まだ大丈夫、私は元気だからって言い聞かせて。騙し騙し。けれど楽しい時間の終わりはいつも、喘鳴の音が連れてきた。
無理をしていないふりをするのは得意だった。
けれど、もう。
「ほら、無理しないで休んで」
穏やかだけれど有無を言わせぬ説得力のある声に、そうねと肯定を返して私は体を横たえる。
あなたの手によってかけられた毛布が、少しずつ私をあたためる。覗きこむ深い緑、私より私のことを知っている瞳。
私の我慢は、あなたの優しさで暴かれてしまった。
いつかこの胸の奥の焔にも、あなたは気付いてしまうだろうか。