【ファイモス】Messiah「救世主」と君に呼ばれる度にいつも胸の奥がすこしだけくるしかった。
「救世主、」
肩越しに振り返った君の黄金色の瞳と視線が合う。
はくはくと心臓は煩いのに背中はひどくつめたい。息がうまくできない。剣を握る手も震えたままで、
「救世主、何を躊躇している」
ふる、と首を横に振る。
「できない、僕には、」
できない、と絞り出すようにして繰り返した声はひどく頼りなくて、
だって、
「……君を殺せなんて」
「救世主、時間がない」
ここに至るまでに彼は何度死んで、そしてまた戦う為に何度息を吹き返して立ち上がったのだろう。
けれどそれももうおしまいだ。
彼の体はゆっくりと暗黒に飲まれて違うものへと形を変えようとしている。
1221