【レイチュリ】明日の僕もどうか愛していて 1 明日にはきっと僕は君のことを忘れている。
ああ、早く。早く終わればいいのに。
今日もまた閉め忘れたカーテンから差した陽の光で目を覚ます。朝の透明なきんいろの光の中で瞼を開くのは孤独を確かめることによく似ている。そこにあるのは自分ひとりだけの体温で、ひかりの中にいてもそれに自分の輪郭が溶けることはない。
アベンチュリンは枕元に置かれた端末に手をのばす。
液晶に表示された今日の日付を確認する。僕の記憶が確かなら、三日飛んでいる。
「僕は今回も死ねなかったのか」
ぽつりと零した言葉も朝の光の中に落ちて溶けてどこかへ行ってしまう。
ベッドから抜け出して、ひた、と床に裸足の足を着ける。痛みはない。洗面所で鏡を見れば記憶の中と寸分変わらぬ姿かたちのままの自分がいる。平均的な男性より幾分小柄で痩身のからだ、窓から差していた光に似たきんいろの髪、そこから覗くピンクと水色のまるい瞳、首元には奴隷の証である焼印。鏡で自分の体を隈なく確認してみたけれどひとつとして傷痕はなく、だから今回も僕は前回の自分がどう死んだのかがわからない。何度死んでもどうしてか、死んだときのことは思い出せないのだ。
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