穹ホタ/ラストワルツ あたしたちは与えられた台本の中で生きる役者でしかない。
そう言ったら君は笑うのかな。
でもね、あたしはわからない。
自分の人生を自分の足で歩くということがどんなことかわからない。
それはいつだって自分の手のひらの中にはなかった。一度として。
戦う為だけに生み出されて死んでいく。死んでも代わりはたくさんいる。たくさんのあたしが生み出されて、戦って、死んで。あたしという命に意味も価値もない。あるのはただ、戦うという目的だけ。たくさんの同じ顔をしたあたしたちを識別する番号と目的だけしか持つことを許されない生。
だから知らなかったの、ずっと。
あたしは『あたし』しかいないことも、戦って死ぬ以外にいくつだって命の数だけ生き方はあるんだってことも。
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