Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    ytd524

    @ytd524

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 30

    ytd524

    ☆quiet follow

    五伏版ワンドロワンライ延長戦
    第12回お題「ゲーム」

    ※20歳×7歳でスマ○ラやる話(出会って一年少しぐらい経ってるイメージ)
    ※2hくらいかかってますすみません

    ブラウン管テレビを両手で手持ちしてる先生が書きたくて過去お題お借りしました。
    ワンライにもなってない状態ですみません…!

     五条さんはいつだって、唐突に物事を始める。

     学校帰りに待ち伏せされたかと思ったら『今から任務行くよ!』と連れ去られたり。
     突然家まで押し掛けられたかと思ったら『チョー美味しいって有名なピザ食べ行こ!』と連れ去られたり。
     京都から東京まで真っ直ぐ帰るかと思ったら『あ、辻利行きたくなった。宇治行こ!』と連れ去られたり。

     だからまぁつまり、その人が毎度繰り出してくる突拍子のない行動にはだいぶ耐性がついていたと思うのだが、さすがにこれは予想していなかった。
     両手で分厚いテレビを抱えながら家まで乗り込んでくる、この行動までは。

    「恵! ゲームしよ!」
    「帰ってください」
    「却下! お邪魔しまーす!」
    「あっ、おい!」

     閉めようとしたドアは随分と長い御御足によってこじ開けられ、大変器用に体を家の中まで滑り込ませてきた。両手が塞がった状態でよくそんな身のこなしができるなと思う。しかもただ塞がっているだけじゃない。テレビだ。この人は今、なんかでっかいテレビを抱えている状態なのだ。家にある壊れかけの電子レンジの一回り、いや二回りくらいでっかいそれは、きっと俺に手渡された瞬間落ちてしまう。重すぎて。そんなものを軽々抱えながらやってきたその人は、迷うことなく真っ直ぐ廊下を進んでいくと、部屋の窓際、隅っこにそれをぽいと直置きした。

    「いやぁ、本家帰って久々に自分の部屋覗いたら見つけてさぁ。懐かしくて持って帰ってきちゃったんだよね」
    「え、手持ちで?」
    「ん? 手持ちで」

     さらっと言われた言葉に思わず反応をすると、これまたさも当然のように返答される。いや、本家ってすぐ近所とかじゃないだろ? 嘘だろおい、ここ埼玉だぞ?

    「あ、恵〜。その袋の中にロクヨン入ってるから出しといて」
    「……ろくよん?」
    「あれ、知らない? あー、そっか。今の若い子はプレステにウィーか」
    「いや、どれも知りませんけど……うわ、これもごっつい」

     どこか虚無感に襲われながら紙袋の中を漁ると、これまたでかい機械が顔を出した。てかこれもそこそこ重さがあるじゃねぇか。何やってんだこの人。
     明らかに古そうな見た目をしているそれらに苦言しか出てこない頭は、だがもう持ち帰ってきてしまったものは仕方ないだろうという、当たり前の前提によって思考を止められる。
     そう、もうどうしようもない。だったら、さっさとこの人を満足させてそのまま粗大ゴミに出してもらうしか道はない。
     そんなことを俺が思っているとは知りもしないだろう、侵入者はあれよという間にテレビとゲーム機の接続を済ませると、長方形の形をした何かをゲーム機に差込み、あぐらをかいた。

    「ほら、恵もこっち来て座って」
    「え、俺もやるんですか」
    「え! 当たり前でしょ なんのために僕が新幹線にテレビ持ち込んだと思ってんの」
    「いや、それは俺が知りたいんですけど」
    「考えもせずに答えを求めようとするなよ! 仕方ないなぁ。スケルトンのコントローラは恵に使わせてやるから」
    「意味がわからねぇ……」

     言いながら放り投げられたそれは、ちょうど両手で持ってちょうど良い形をしていた。わからないけど、多分これでゲームを操作したりするのだろう。ボタンとかあるし。
     そう思いながら渋々空けられたスペースに腰を下ろすと、テレビ画面上にカラフルなロゴが踊り、賑やかな音が鳴り出した。

    「えっ、な、なに」
    「スマブラ」
    「すま?」
    「え、知らないの? てか恵、もしかしてゲーム自体知らない?」
    「や、そりゃあ。学校でやらないし」
    「うわぁ、うわぁ。何それめっちゃ貴重じゃん。貴重な小学生じゃん」

     そう言うと五条さんはカチャカチャとコントローラ? をいじり出し、画面を次へ次へと進めていく。気がつくとテレビ上にはたくさんのキャラクターが表示され「好きなやつ選びなよ」とだけ指示されてしまった。

    「え」
    「僕マリオにしよ〜っと」
    「え、これ選んだらどうなるんですか?」
    「あ、そこからか。これねぇ、対戦ゲームなの。僕の選んだキャラと恵の選んだキャラで戦って、先に相手を倒した方が勝ち」
    「たおす」
    「そこの赤いボタンとスティック使ってキャラクター動かせるんだよ……あー、やった方が早い! はい、第一印象!」
    「えっ? あ、じゃあこの、いぬ?」
    「フォックスだから狐ね! オッケーやろう」
    「えっ、うわ、わっ」

     横からコントローラを操作されたかと思うと、画面上にフォックスというキャラクターの全身がバンッと表示された。かと思うと、画面はすぐにまた別のものに切り替わって、なんだからカラフルな、ポップな場所が表示された。そこに表示される、五条さんが選んだキャラクターとフォックス。急かされるようなカウントダウン。そして表示される『GO!』の文字に、とうとう俺の頭は真っ白になった。

    「ほらほら、スティックぐりぐりして青ボタン! んで僕が攻撃してきたら緑ボタンでジャンプして逃げて!」
    「えっ? は? いや、はぁ」
    「あー、ほらほら! この%が貯まると死ぬから」
    「いや、待っ、いやいやいや」
    「あ、落ちた。これ落ちたら%関係なく死ぬから」
    「はぁ」
    「はぁーい、僕の勝ち!」

     あっさりとつけられた勝敗に、俺はただ呆然としながら画面を見るしかできなかった。なんだ今の。何もわからないままいつの間にか負けてた。訓練だと言って付けてもらってる稽古以上にわけがわからないまま終わった。
     いや。

    「せめてやり方教えてからにしろよ」
    「うわ、びっくりした」
    「いいですか、次はアンタ、何も動かさないでください」
    「えー、何それつまんない」
    「何も、動かさないで、ください!」

     そう言って再び先ほどの画面(バトルステージというらしい)まで進めさせた後、棒立ちしたままの赤帽子を放置して、俺は自分のキャラクターを動かすことに専念した。スティックを動かした方にキャラクターが移動して、青で攻撃、緑でジャンプ。あとなんか、続けてボタンを押したら変な動きをする。
     そんでなんだっけ、%が貯まると死ぬ? とりあえず赤帽子に攻撃を与えると、なるほど、確かに画面上で五条さんが話の%が着実に上昇していった。そして地面のないところに落とすと%関係なく勝てる。そうして切り替わった画面で俺の選んだ犬……いや、キツネがポーズを決めているのを認め、よし、と一つ頷いた。

    「いいです。やりましょう」
    「お、自信ついた? 僕結構強いよ?」
    「やり方がわかれば大丈夫です」
    「言うねぇ! よし、やろやろ」

     五条さんの操作によって再び画面はバトルステージに切り替わる。カウントダウンからGOの合図に向け、俺はフォックスを赤帽子に向けて直進させた。だが赤帽子はひらりとその身を翻し、一段上の場所へと移動してしまう。

    「正面突破じゃ芸がないよ〜。ほらほら、僕の動き予測して裏をかいてみなよ」
    「っわ! くそっ、ならこっち、あ、あっ!」
    「はいダメダメ! ほらほら、だいぶ攻撃受けちゃってるよ」
    「っちくしょ、あっ!」
    「ほら、油断するから落ちちゃう」
    「〜〜っ、もう一回!」
    「はいはーい」

     まるでいつもの稽古が画面上で繰り広げられているようだった。どれだけ俺が攻撃をしてもひらりと躱され、なのにしっかりと向こうからの攻撃は当たってくる。赤帽子の%はいつだって15か20くらいまでしか貯まらないまま、俺のキャラクターが死んでゲームセット。
     いや、当たり前だ。だって五条さんは自分で言ったじゃないか。結構強いって。でも、もしこれが訓練をなぞっているのであれば、攻め方でまだマシになるはず……。
     そう考えながらコントローラを動かしている間、気がつくと五条さんもまた無言で俺の相手をするようになった。タイミングは掴めるようになったけれど自分の思い通りにキャラクターが動かなくてやきもきする。今、この瞬間でこっちにいれば、このタイミングであっちの方向にジャンプできていれば。そうして何度目かの対戦が終わったタイミングで、突然隣からクックッと笑い声が聞こえてきた。

    「……なんすか」
    「いやぁ、ほんと真面目だよね、恵って」
    「アンタが言ったんでしょ、裏をかけって」
    「裏をかくなんてゲームのプロだよ。素人は慣れるだけでいいの」
    「自分で言ったくせして……」
    「僕さぁ、これ二人プレイするの初めてなんだよね」
    「はぁ?」

     喋りながら切り替わったバトルステージは、先ほどまでとは違う別の場所になっていた。薄暗い森みたいな場所。いや待て、突然変えられたらまた戦い方考え直さなきゃいけねぇだろ。

    「僕んちに来れるような友達もいないし、そもそもそんなに暇な時間もなかったしね」
    「いやアンタ、喋るか戦うかどっちかにしろって、うわ、地面が動くなよっ!」
    「これもクラスで流行ってるの聞いて、わがまま言って買ってもらったんだけどさぁ。一人モードっていつもコンピュータ相手だから、結構動きも単調で、二、三日で飽きちゃったんだよね」
    「うわ、わ、降りれねぇ……っ、は、ちょ、うわっ!」
    「でもさぁ、テレビって無機物だから、サングラスのない目で見続けるの、一番楽だったんだよね。それなのに画面は動くし、動かせるし」

     聴き慣れたゲームセット、という声が響き、またもや画面は赤帽子の勝利画面で止まる。

    「楽しかったなぁ」

     そう呟く声には、ちっとも楽しそうな色が乗っていなかった。それがひどく苛立たしくて、俺は初めて、自分で青ボタンを押して次画面へと進めた。「え?」という声を無視して、勝手にステージを切り替える。初見上等、いっそもう右下の?マークでいい。迷うことなくボタンを押し、勝手にカウントダウンを開始させる。今度はなんだこれ、ビル街か。気を抜いたらすぐに落っこちそうなステージだ。

    「え?」
    「いちいちめんどくさいんですよ、アンタ。あと話が長ぇ」
    「え、ひどくない?」
    「さっきのも一言にまとめてくれていいです」
    「いや、無理でしょ」
    「無理じゃないでしょ」
    「いや──」

    「俺と二人プレイできて楽しい、でいいじゃないですか」

     俺の言葉を聞いて、赤帽子は突然ぴたりと動きを止める。今だ! と背後に回って青ボタンを連打すると、なんかまた変な動きの攻撃になって、赤帽子はステージの外にひゅんと落ちていった。「あ」という声と共にドカンという爆発音。ゲームセットだ。

    「俺の勝ちです」
    「は、はぁ 待ってよ、今の反則だろ」
    「何言ってんですか。どう見たってフェアプレイでしょ」
    「ゲーム外で動揺させんのは反則技だっつーの!」
    「そんなの知りませんよ。アンタが言ったんでしょ、『裏をかけ』って」
    「〜〜、このクソガキ!」

     そう叫ぶと、五条さんは自身のプレイキャラを別のものへと変えた。そして再び対戦が始まると、五条さんは先ほどまで見向きもしなかったタルを壊し始める。え、そのタル壊せんのか。しかも中からは変なものが出てきて、それを拾った五条さんはまた特殊な、よくわからない攻撃を繰り出し始めた。しかもその攻撃一回で相当%が貯まる。いや、いや!

    「なんですかこれ! 聞いてませんけど!」
    「はぁ〜? 気づかなかった恵くんがバカなんじゃない〜?」
    「相手が知らない技で仕掛けてくる方が反則だろ!」
    「知らねーーよ! はいおしまい!」
    「あっ! っくそ、もう一回!」
    「臨むところだっつーの!」

     教える気がさらさらないセコさに腹を立てながら、俺は自分のプレイキャラを赤帽子に変更した。だいぶ親指が痛くなってきたが、そんなこと知ったこっちゃない。絶対勝つ、連勝する!
     そうして俺は再びなり始めたカウントダウンに合わせ、青ボタンを連打した。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    ytd524

    DONE※ほんのり未来軸
    ※起伏のないほのぼのストーリー

    伏から別れ切り出されて一度別れた五伏が一年後に再結成しかけてるお話。
    akiyuki様が描かれた漫画の世界線をイメージしたトリビュート的な作品です。
    (https://twitter.com/ak1yuk1/status/1411631616271650817)

    改めまして、akiyukiさん、お誕生日おめでとうございます!
    飛ばない風船 僕にとって恵は風船みたいな存在だった。
     僕が空気を吹き込んで、ふわふわと浮き始めたそれの紐を指先に、手首にと巻きつける。
     そうして空に飛んでいこうとするそれを地上へと繋ぎ止めながら、僕は悠々自適にこの世界を歩き回るのだ。
     その紐がどれだけ長くなろうとも、木に引っ掛かろうとも構わない。
     ただ、僕がこの紐の先を手放しさえしなければいいのだと。
     そんなことを考えながら、僕はこうしてずっと、空の青に映える緑色を真っ直ぐ見上げ続けていたのだった。



    「あっ」

     少女の声が耳に届くと同時に、彼の体はぴょん、と地面から浮かび上がっていた。小さな手を離れ飛んでいってしまいそうなそれから伸びる紐を難なく掴むと、そのまま少女の元へと歩み寄っていく。そうして目の前にしゃがみ込み、紐の先を少女の手首へとちょうちょ結びにした。
    3152

    recommended works