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    綾崎寝台

    @kopa382

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    綾崎寝台

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    年末ドナジル、間に合った…。

    炬燵でぐだぐだに溶けてるジルさんが見たい。

    炬燵と初笑い「………、何、してんだ」
    「ああ、来ましたか。
    …あ、そこからは靴脱いで上がってください。アナタの靴汚いんで」
    「ジルちゃんはいつも一言多いってんだよォ!」


    年末の寒い風の吹く夜、ドナテロが呼ばれたのはジルが素体の居住スペースにしている部屋だった。

    元々は生活感のない部屋であったが、ドナテロが訪れるようになり物が少しずつ増えていった。ジルは邪魔だと文句をつけつつもそれらを捨てたりすることなく部屋に置いていた。
    しかし、今日は部屋の真ん中に新しい家具が鎮座していた。そしてジルはそれに半ばとりこまれるようにハマっていた。

    「…なんだ、これ?ローテーブル?」
    「テーブルの一種ではありますが、これは格段に堕落の成分を含んでいますよ」
    「え、堕落…?なんだそれ、こわっ…」

    炬燵。
    そう名称されるこの家具は、ジルが旧人類のデータにあった冬向けの家具を再現したものだ。

    新システムのデカダンスにおいて、新しい物は好まれ、日々目新しい事象について開発が進んでいる。
    しかしながら、サイボーグは総じて新しく作り出すのは苦手な上に、アイデアにも限界がある。その為に、旧人類のデータを掘り起こしてヒントを得ているのだ。

    そのうちの一つとして、東洋に伝わる暖房付き机の『炬燵』というものを、ジルは再現してみたのだ。
    本仕事の片手間に作ってみたものなのだが、これがなかなか心地よく、部屋の空調とは別の暖かみから逃れる事が出来なくなってしまったのだ。

    「…で、そのコタツ?から離れたくないから俺を雑用として呼んだ…とか言わないよな?」
    「アナタにしては珍しく正解です。
     理解したらさっさと紅茶でも淹れてきてください。あと、お菓子も用意して下さい。更に言うならそのへんのゴミまとめて捨てて下さい」
    「…ジルちゃん?やる気とか賢さとかイロイロなもん下がってねぇ?
     え?コタツってそういう意味の堕落のデバフかかんの…???」

    ドナテロが困惑する程度にはジルは炬燵にはまっていた。動きたくない、温もりに浸っていたいとむずかるジルは、普段の合理主義な彼女からは想像できない程ダラけていた。

    何時もかけている眼鏡は炬燵の端に置かれ、炬燵の周りにはお菓子の包み紙が落ちていた。その一部は離れたくずかごの周りに散っている。…投げたのだろうか?
    普段ならドナテロがやってジルに怒られるような所業のはずなのに、今日は立場が逆であった。

    ドナテロは戸惑いながら簡単にゴミを捨てると、湯を沸かして茶を用意した。
    二人分の紅茶とキッチンを漁って見つけた菓子を持ってリビングに戻ると、ジルがモニターを付けてニュースと街の様子を見ていた。

    「…持ってきたぞ」
    「良い仕事です。そこに置いといて下さい。………今年ももう終わりですねぇ」
    「あー、そうだな…はえー
     お、ぬくいな!」
    「時間は誰にも平等に一定の早さですよ…ってアナタ、冷たい足を当てないでもらえます?不愉快です」
    「ジルちゃんが占拠し過ぎなんだよ!ちょっとは場所寄越せよ!」
    「イヤです。これは私のコタツです」
    「ケチケチすんなよ!」

    ドナテロが炬燵の布団に足を入れると、…なるほど、とても暖かい。寒々しい外を歩いてきた素体に染みるような温もりだった。ジルの細くて冷えやすい素体が抜け出せないのに納得がいった。

    それはそれとして、小間使いのように茶を用意させた自分に、その温もりをわけないのは頂けない。足先で彼女をつつくと、蹴り返された。割と容赦のない蹴りだった。

    くだらないやりとりをしながら、小突き合いをしていると、モニターから騒がしい声が響いてきた。画面の向こうでは新年を祝うタンカーとサイボーグが楽しげに挨拶をしている。

    「…あ、年、明けたのか」
    「おや、いつの間に」
    「あけましておめでとう、ジルちゃん」
    「はい、あけましておめでとうございます。昨年は死ぬ程お世話しました」
    「だからよォ!いつも一言多いんだってばよ!!!
     今年も頼むぜ?突っ走ってくからよ」
    「…ハァ、今年も馬鹿の御守りですか…仕方ありませんね…
    ドナテロ、これからもよろしくおねがいしますね」



    小さな炬燵に向かい合って座る二人。
    ガハハと豪快に笑う男と、口元だけで笑う女。

    神様に願うまでもなく、新しい年もきっとこうして笑いあえるだろう。





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